ビッグイシューオンライン編集部より。10月15日発売の297号から、毎号各地のビッグイシュー・ストリートペーパーの販売者を紹介している「今月の人」を転載します。

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コリンはマンチェスターで『ビッグイシュー・ノース』を販売して7年になる。現在は街の映画館前で販売しており、ビッグイシューのフェイスブックページに日々のできごとを書きつづっているので、名前が知られるようになった。地元で撮影された映画に出演したこともある。
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PhotoJason Lock

「家庭の事情でホームレスになった」とコリンは振り返る。


「10代の頃から、断続的にホームレス状態でした。ホステルに泊まったり、路上で寝たり。『ビッグイシュー・ノース』の販売を始めたのは、2009年。その時も一時的なホームレス状態だったので、自分でお金を稼ぐために雑誌を売ってみようかと思ったんです」


 

――家族はいるのですか?




「います。2年ほど前、キリスト教救世軍が運営しているホームレス向けホステルに時々泊まっていたんです。
ある日ホステルに戻ると、バーミンガムからクリスマスカードが届いていました。手紙が添えてあって、その書き出しはこんなふうでした。
『あなたが、長い間音信不通になっている私の息子ではないかと思って、この手紙を書いています』。
手紙と一緒に写真があって、写っていたのは23年間会っていなかった僕の父親でした。父とはそれからしばらく一緒に暮らし、今も連絡は取り合っています」
 

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――今の暮らしはどんなふうですか。

「それほど悪くありません。雑誌の販売をしているので、だいぶ助かっています。この仕事なら続けられるし、外へ出て、人と会うようになりました。

自分の手でお金を稼ぎ、食べ物や服を買うこともできます。 今は部屋もあるんです。自分だけの部屋を持てるというのはいいものです。

やりたい時に、やりたいことができますから。

ドアを開けて中に入り、そのドアを閉めてしまえば、そこは自分だけの部屋なんです」


コリンの将来に向けた目標は、再び就職することだと言う。

「以前、厨房やケータリングの仕事をしたことがあるので、

いつかは、またそういう仕事に戻りたいと思っています」

また、現在販売している場所の様子も話してくれた。
 

「以前は『コーナーハウス』という場所で、もう何年も販売していました。

そこは、マンチェスターの独立系映画館兼ギャラリーでした。

ところが去年初め、コーナーハウスは閉鎖され、同じ道を少し行ったところに、

『ホーム』という新しい映画館ができたんです。

コーナーハウスがいまだに懐かしいし、閉鎖された時は雑誌の売り上げも落ち込みました。

でも今は、新しい映画館の近くで売ることができています。

そこのスタッフは素晴らしい人たちです。

新しい場所で仕事を始めた時、僕のところに来て、こう言ってくれました。

『ホームに来られて、よかったね』って」

 

今ではマンチェスターの街に欠かせない人物となったコリンに、今までに参加したプロジェクトのことを尋ねた。

「時々人が訪ねて来て、僕に、自分のやっている企画に参加してほしいと言うんです。

昨年は、マンチェスターの人々についての本を書いている人がやって来ました。

写真を撮って、僕がいつも笑顔で立っていることを、素晴らしいと言ってくれました。

その上、いつも僕を応援してくれていたコーナーハウスのスタッフに、

僕のことについてインタビューもしていきましたよ」

 

「それに、映画に出演するよう依頼されたこともあります。

『女神の中で最も残酷な女神』という映画で、僕はギャング団のボスの役を演じたんです。

完成した作品がホーム劇場で上映された時は、いろんな人がやって来て、『映画では本当に悪者に見えたよ。

本物のギャングみたいだった』と言われました。実際の僕の生活は、全然違うんですけどね」

 

 (Christian Lisseman/ Big Issue North,Courtesy of INSP News Service www.INSP.ngo)


『ビッグイシュー・ノース』

●1冊の値段/2ポンド(約262円)で、そのうち1ポンドが販売者の収入に。

●販売回数/週刊

●販売場所/リバプール、マンチェスター、シェフィールドなどイングランド北部





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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。