
Photo:Jason Lock
「家庭の事情でホームレスになった」とコリンは振り返る。
「10代の頃から、断続的にホームレス状態でした。ホステルに泊まったり、路上で寝たり。『ビッグイシュー・ノース』の販売を始めたのは、2009年。その時も一時的なホームレス状態だったので、自分でお金を稼ぐために雑誌を売ってみようかと思ったんです」
――家族はいるのですか?
「います。2年ほど前、キリスト教救世軍が運営しているホームレス向けホステルに時々泊まっていたんです。
ある日ホステルに戻ると、バーミンガムからクリスマスカードが届いていました。手紙が添えてあって、その書き出しはこんなふうでした。
『あなたが、長い間音信不通になっている私の息子ではないかと思って、この手紙を書いています』。
手紙と一緒に写真があって、写っていたのは23年間会っていなかった僕の父親でした。父とはそれからしばらく一緒に暮らし、今も連絡は取り合っています」
――今の暮らしはどんなふうですか。
「それほど悪くありません。雑誌の販売をしているので、だいぶ助かっています。この仕事なら続けられるし、外へ出て、人と会うようになりました。自分の手でお金を稼ぎ、食べ物や服を買うこともできます。 今は部屋もあるんです。自分だけの部屋を持てるというのはいいものです。
やりたい時に、やりたいことができますから。
ドアを開けて中に入り、そのドアを閉めてしまえば、そこは自分だけの部屋なんです」
コリンの将来に向けた目標は、再び就職することだと言う。
「以前、厨房やケータリングの仕事をしたことがあるので、
いつかは、またそういう仕事に戻りたいと思っています」
また、現在販売している場所の様子も話してくれた。
「以前は『コーナーハウス』という場所で、もう何年も販売していました。
そこは、マンチェスターの独立系映画館兼ギャラリーでした。
ところが去年初め、コーナーハウスは閉鎖され、同じ道を少し行ったところに、
『ホーム』という新しい映画館ができたんです。
コーナーハウスがいまだに懐かしいし、閉鎖された時は雑誌の売り上げも落ち込みました。
でも今は、新しい映画館の近くで売ることができています。
そこのスタッフは素晴らしい人たちです。
新しい場所で仕事を始めた時、僕のところに来て、こう言ってくれました。
『ホームに来られて、よかったね』って」
今ではマンチェスターの街に欠かせない人物となったコリンに、今までに参加したプロジェクトのことを尋ねた。
「時々人が訪ねて来て、僕に、自分のやっている企画に参加してほしいと言うんです。
昨年は、マンチェスターの人々についての本を書いている人がやって来ました。
写真を撮って、僕がいつも笑顔で立っていることを、素晴らしいと言ってくれました。
その上、いつも僕を応援してくれていたコーナーハウスのスタッフに、
僕のことについてインタビューもしていきましたよ」
「それに、映画に出演するよう依頼されたこともあります。
『女神の中で最も残酷な女神』という映画で、僕はギャング団のボスの役を演じたんです。
完成した作品がホーム劇場で上映された時は、いろんな人がやって来て、『映画では本当に悪者に見えたよ。
本物のギャングみたいだった』と言われました。実際の僕の生活は、全然違うんですけどね」
(Christian Lisseman/ Big Issue North,Courtesy of INSP News Service www.INSP.ngo)
『ビッグイシュー・ノース』
●1冊の値段/2ポンド(約262円)で、そのうち1ポンドが販売者の収入に。
●販売回数/週刊
●販売場所/リバプール、マンチェスター、シェフィールドなどイングランド北部
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ビッグイシューについて

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。