SNS等での不適切な投稿で本人が意図しない「炎上」が起こり、厳重注意を受ける人や職を失う人はあとを絶たない。未成年はもちろんだが、まっとうな判断力を期待される職業や年齢の人もだ。
TwitterやFacebookが生まれてからまだ10年やそこらであることを考えると、未成年も、いい大人も、意識してそれらを利用しない限りは、似たようなリテラシーレベルといえるのかもしれない。
 


インターネットの利用を「自分の個人的な利用に過ぎない」と思い込むリスク

炎上についてもいえることだが、なぜ全世界にオープンに繋がっているはずのインターネットにおいて、不適切な投稿をする人があとを絶たないのか。

それは、「自分の趣味嗜好に合った人・モノ・情報」が自分の閲覧するWebサイトやアプリに自動的に集められていることに気づかず、それと触れることが「世界とつながること」と勘違いしがちというのも一因ではないだろうか。

昨今のニュースサイトやSNSでは、自分がいいと思う人や情報をフォローすると、自分がおもしろいと思える情報が自動的に集まるようになっていることが多い。 (そのような作りにしたほうが、閲覧ページ数が多くなり、媒体としての価値が高まるからだ。)

その仕組みに気づいていないと、自分の意見を相対化することができず、「自分の意見は世界の主流」「多くの人は自分と同じように感じている」などと思い込みかねない。

その「自己認識している世界の狭さ」により、「自分のインターネットの利用」も、自分のプライベートなものに過ぎないと考えてしまい、自分のインターネット利用履歴を利用しようとする人がいるとは思いもしない、利用されたとしても自分自身には大きな影響はない、と感じているのではなかろうか。

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©photo-ac

5月15日発売の「ビッグイシュー日本」311号では「ダークウェブ-ネット社会の深い闇」について特集。まず自分がきちんと理解して周囲に伝えていきたい「ネット社会の裏側」について扱っている。高野聖玄さん(株式会社スプラウト代表)、津田大介さん(ジャーナリスト)、宮下紘さん(中央大学准教授)に話を聞いた。

表層、深層、闇の3層構造、闇ではあらゆる違法品が売られている/高野聖玄さん(株式会社スプラウト代表)

株式会社スプラウトの高野聖玄さんによると、現在のインターネットは表層、深層、闇の3層構造になっているという。

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ビッグイシュー日本311号より(実際の本誌はカラーです)

闇(ダークウェブ)は、通信を匿名化して利用されるため、匿名性・秘匿性の高さを背景にさまざまな違法品が販売されているという。
一般人の利用にもっとも関係のある違法なものが「個人情報」の売買だ。

ネットワークでつながっている以上、すべてのリスクと隣り合わせであることを自覚したうえでいろいろなサービスを利用すること。それがインターネットによって便利さを手に入れることの代償とも言えます。そのためにも、まずはダークウェブの世界をはじめ、現実で何が起きているのかをよく知ることが大事です。
と高野さん。
闇(ダークウェブ)で何が起こっているのかは、本誌特集で。

高野聖玄
1980年生まれ。株式会社スプラウト代表取締役社長。 オンラインメディア「THE ZERO/ONE」発行人。 経済系出版社でのインターネット事業の開発、会員制所奉仕「FACTA」の相関などを経て、12年に株式会社スプラウトを創業。


SNSユーザーの6割が、内容読まずにタイトルだけで拡散。倫理面の説得でなく、具体的な対策が必要/津田大介さん(ジャーナリスト)

2016年の米大統領選に影響を与えたことが話題となった「フェイクニュース」。
津田大介さんは、5年前に出版した著書の中で、インターネットの登場が市民の政治へのかかわり方を変えると予見していた。

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ビッグイシュー日本311号より(実際の本誌はカラーです)

昔から宗教や政治活動におけるプロパガンダは存在していたが、口コミやビラ配り、街頭演説などで広まったかつての情報とは、ネットの情報は「拡散する範囲も、量も、速さも、桁違いであることが問題」だという。

コロンビア大学とフランス国立研究所の共同研究によると、SNSユーザーの約6割は、実際の記事内容を読まずにタイトルだけで「いいね」やリツイートをし、情報を拡散しているという。より衝撃的なタイトルを突ければ、多くの人は興味をそそられ、内容の事実確認や情報発信元の信ぴょう性を確認することなく簡単にクリックしてしまう。

米大統領選の際、貧しい若者たちがトランプ陣営に有利になる偽ニュースを大量にねつ造していたが、「誰かを殺したわけではない」とハフィントン・ポストのインタビューで答えている。しかしその結果誕生した政権により、間接的に命を落とす人がいないとは限らない。
そのため、ヨーロッパではフェイクニュースに対する様々な対策が練られているという。

日本ではまだ対策は後手に回っているため、津田さんが日本で対応が可能な2つの対策を提唱。詳しくは本誌で。

津田大介
1973年生まれ。東京都出身。ジャーナリスト、メディア・アクティビスト。ポリ足す編集長。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。
主な著書に「未来を変える 情報の呼吸法 (中経の文庫)」「ウェブで政治を動かす! (朝日新書)」ほか。


ビッグデータによる監視社会の到来でプライバシーが丸裸に/宮下紘さん(中央大学准教授)

最後に「ビッグデータによる監視社会」について宮下紘さん(中央大学准教授)の話。

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ビッグイシュー日本311号より(実際の本誌はカラーです)

ネットスーパーがある女子高生の購入履歴から、家族も気づかなかった妊娠を予測したケースや、インターネットにつながった家電からどのような生活をしているのかといった個人情報を収集・蓄積されているケースを紹介。

本人の知らないところで複数の履歴データが結びつけられ、個人の人物像がプロファイルされている実情と、そこから生まれる「差別」ビジネスについても解説。

宮下紘
中央大学総合政策学部准教授(憲法、情報法)。内閣府個人情報保護推進室政策企画専門職、駿河台大学法学部准教授などを経て現職。著書に「プライバシー権の復権 (自由と尊厳の衝突)」「事例で学ぶプライバシー (Gleam Books)」など。


上記3つの「非人間化されたコミュニケーション」に共通する問題をどう捉えるべきか。ぜひ本誌311号でご確認ください。

ビッグイシュー311号ではそのほか

・スペシャル企画:ザ・ビートルズ
・「リレーインタビュー。私の分岐点」:フリーランサー 安藤美冬さん
・「人道支援は決して犯罪ではない」―NGO「ノーモア・デス」
・「身近な人に伝える聞き書き5年」深川薫さんへのインタビュー
など、盛りだくさんです。

ぜひ路上でお求めください。
ビッグイシュー日本版の販売場所はこちらです。
バックナンバー3冊以上でしたら通信販売も可能です。

▼関連本誌バックナンバー

289号「フェイスブック、有料コンテンツを優先的に表示、深いとみなした投稿を制御する!?」
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https://www.bigissue.jp/backnumber/bn289.html

上記本誌記事の読みどころ紹介はこちら→
「有料コンテンツを優先的に表示、不快とみなした投稿を制御する!? でも、フェイスブックをどう活用するかはあなたしだい」







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