2016年、電力会社が選べる時代へ。〝保護〟漬けの原発から撤退を

Genpatsu

(2014年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 249号より)

2016年、電力会社が選べる時代へ。〝保護〟漬けの原発から撤退を

 第4次エネルギー基本計画(エネ基)の閣議決定(2014年4月)は難航した。原子力推進を打ち出した計画なので、自民党内でもなかなか合意に達しなかったからだった。この計画はエネルギー基本法に基づいて経済産業省でつくり、閣議を経て国会へ報告する。国のエネルギーのあり方は、私たち一人ひとりに重要な影響を及ぼす内容であるにもかかわらず、国会で審議されることはない。

 第4次エネ基では、政権の公約通り、発電に占める原発の割合を「できる限り低減する」としつつ「重要なベース電源として引き続き活用する」。また、原発の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、燃料に使用する核燃料サイクルの推進も打ち出している。これらの方向を具体化するために、経産省の審議会に原子力小委員会が設置され審議中だ。

 ところで、電力の自由化を促進するために、2016年から一般消費者がどの電力会社とも契約できるようになる。従来の電力の地域独占体制が法的にはなくなる。さらに、電力各社の発電部門と送電部門を法的に分離する法案が来年度に提案される予定だ。再生可能エネルギーなど新規の発電会社が参入しやすい制度をつくることが狙いだ。

 自由化が進むと新たな原発を造ることが困難になる。建設費が1基4000億円程度と他電源に比べて圧倒的に高いからだ。そこで、原発を「引き続き活用する」ために、建設費を回収し利益が確実に得られるように政府の手厚い保護が必要だというのだ。さらに、六ヶ所再処理工場が経営破綻になる可能性が高いので、核燃料サイクルが継続できるように保護制度を設けるという。必要な費用は電気料金に上乗せされる。

 電力市場が自由化すると原発や核燃料サイクルが維持できなくなることがはっきりした。今や原発が自由化の弊害となっていると言っても過言ではない。原発にはすでにたくさんの保護策が講じられている。それでも立ち行かないというのだから、原発から撤退する方が賢明で健全だ。

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)

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