<「今、本屋で図書館を考える」トークイベントレポート1を読む>
土田: 「帯ワングランプリ」「書店VS図書館」「伊丹本屋大賞」、どれもすごく面白いなと思ったんですけど、福嶋さん、今のお話聞かれていかがでしょうか。
福嶋:先ほど綾野さんがおっしゃったように「書店VS図書館」というのは、すごく興味深くて、ぜひそこに参加もしてみたかったと思います。改めましてジュンク堂書店難波店の福嶋と申します。よろしくお願いします。
私がここへやってまいりました一番の理由は、僕自身が図書館のかなりのヘビーユーザーだからなんです。
しかし、元浦安市立図書館長で、今、立命館大学文学部教授の常世田良 先生 は「浦安では図書館が充実すればするほど、そこで本を好きになった方が、本屋でも本を買っている。はっきりと数字に出ている」ということを随分前から主張されています。
私自身もそう思います。私は図書館でも本を借りるし、本屋でも本を買いますので、そういう方はおそらく多いんだろうと思います。今、例えば又吉直樹さんのベストセラー『火花 (文春文庫)』が図書館で借りられるかというと、これはなかなか100人とか多いと500人待ちです。そこまで待ってまで図書館でタダで読みたいという方は、本は買いに来ないのではないかと思いますので、「競合」というのはあまり実態とは沿わないんじゃないかということを思ってます。
実はこれは私も、経験があります。私も親しくさせていただいてます府立大学の酒井隆史さんの書かれた本で、『通天閣』という本があります。青土社『現代思想』に連載してあったのが単行本化されたものです。彼は大阪市立中央図書館あるいは中之島図書館に何回も通って、昔の大阪の古地図ですとか、図書館に行かないと見られない資料を見てその本を書いたと。そういう本を1冊つくる、というのが図書館という場所で起こったことです。
10年前にここで『ビッグイシュー』のバックナンバーフェアをしたときに、北海道の中島岳志さんという方も、『中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義』という本はジュンク堂大阪本店に通いつめて書きました、と「告白」をされました。そこでいろんな本を見ながら、実はその『中村屋のボース』の構想を練ったんだ、ということをおっしゃってた。本屋は本を売るだけじゃなくて、そういう本をつくる一つの工房にもなってるというのが、非常に誇りでもありましたし、それをおっしゃっていただいたのが、すごくうれしかったのを思い出します。
つまり本がたくさんある場所というのは、創作なり制作なりの場になり得るし、制作だけじゃなくて、今、館長さんがご紹介されたように交流の場所にもなる。交流というのは、本屋の理想です。本屋というのはいろんな商店の中で、最も入りやすくて、また最も何も買わなくても出ていきやすい、そういう場所だと思います。たくさんの方が来られて、たくさんの方が本をご覧になって、その中で気に入ったものがあれば買っていただける。まず本屋に来てもらわなければ始まらないということ。それは本当に図書館の、今の「公園のような」という気持ちとまったく一緒です。
本屋はもちろん本をたくさんそろえるということも大事なんですけど、お客さんがたくさんいる本屋にするのが大事なんだと思ってます。
最近、小さな書店さん、個人でやってる書店さんが増えてきました。20世紀の終わり頃の、本屋ガイドのムックなんかを読んでみると、ほとんどが大型店だったのが、2010年を越えてから、紹介される本屋さんというのは、むしろ本当に小さな、でもそこの店主さんが一所懸命セレクトしたショップ、こちらのほうの紹介のほうがずっと多くなっています。一番すごいところは、そこに集まってこられるお客さんを持ってらっしゃるということ。それをすごく僕は感じるので、今、図書館の「公園のように」、あるいはいろんな方がそこのイベントに関わっていくということ、それってすごく素敵だなと思いながら、今、お話を聞いておりました。
土田:ありがとうございます。本当にたくさんの交流から創造的なものが生まれてくる、というところで、図書館が潤えば本屋さんも潤う、豊かになっていくという、すごく面白い関係性が見えてきたと思うんですけど、それでは水越編集長のほうから特集の話など。
水越:私たち編集部にとっては、本屋さんと図書館というのは、とても重要で大事な存在です。最初2003年9月に雑誌『ビッグイシュー』を創刊した当時は、大阪市立中央図書館のそば、堀江に事務所がありました。ご存じの通り、たくさん蔵書がある立派な図書館で、毎日のように通って、創刊前は企画を考えていました。
図書館も本屋さんもそうですけど、本の背表紙が並んでます。目的の本があったとしても、その周辺に並んでいる本を見ることで、いろんなアイデア、ヒントをもらったりすることがあります。
図書館はすごく便利だし、使い方を知ってると得することがいっぱいある、というふうに思います。304号の図書館特集を組む前に、2005年4月1日、まだ創刊まもない25号で「図書館を使え」という特集をやりました。例えば図書館にはCDとかがいっぱいあって、音楽を楽しむこともできるし、それから個室もあって勉強するときこもることもできるよ、と。当時『メディア・リテラシー―世界の現場から 』(岩波新書)という本をお書きになった菅谷明子さんという方がニューヨーク公共図書館のことも本の中で触れられていて、とても感銘を受けたんですね。
本を貸したり、子どものためのワークショップをしたり、ということに加えてビジネス支援ということをやっておられました。ビジネスマンとか、起業したいという人のために、いろんな情報提供をして、サポートしていくということです。たとえばコピー機・複写機を考えた人は、ニューヨークの公共図書館で考えられた、ということでした。
図書館は19世紀半ばにできて100年以上も歴史があるんですけど、ここにこもって作家になった人もいらっしゃるし、例えば映画監督のオリバー・ストーンとか、ウッディ・アレンとかも、そこでいろんな資料を探しに来ていたとか、あと俳優さんでロビン・ウィリアムズとか、ダスティン・ホフマンは役づくりのために、いろいろビデオを見た、というようなことも話されました。すごいなと思って、発信しようとつくったのが、もう12年前になります。今回の特集は、12年後になんでこれをしたいかと思いましたら、ニューヨーク公共図書館にも勝るとも劣らない「ことば蔵」のような素敵な図書館が、実は日本で少しずつ生まれてきてるということに気がついたからです。
「にぎやか、問題解決―いいね!図書館」という特集なんですけど、五つの違うタイプの図書館を紹介しました。
一つ目が綾野館長のいらっしゃる伊丹市立図書館「ことば蔵」。ここは市民参加のイベントが年間200以上も開催されるということで、めちゃくちゃパワフルなんですが、実際にお伺いしたらそういうところもある反面、とても落ち着いた居心地のいい図書館でした。本当に素敵な図書館で。さっき紹介した菅谷さんの言葉で、「図書館はいろいろな人の才能を引き出して、それを社会に還元するための媒介」というふうにおっしゃってるんですけど、まさにそういうことをなさってるなと感じました。
次に鳥取県立図書館。ここもまるでニューヨーク図書館のように、市民が持ち込む課題解決や、起業の支援をなさっています。一つ事例をあげますと、商店とかガレージにシャッターがありますけれども、あのシャッターというのは風が吹くと壊れがちで、強風にはなかなか耐えにくいときもあるそうなんですが、それを防ぐためにシャッターガードという商品を開発された方がいらっしゃいます。その方は地元のベンチャーの方で、図書館の司書の方のサポートを得て、この商品の開発をされたということです。今、そのシャッターガードは、東京国際展示物のビッグサイトでも採用されているということです。これが二つ目です。
ビッグイシュー304号で紹介した鳥取図書館。(実際の誌面はカラーです)
長野県の小布施にある「まちとしょテラソ」というところは、人口が1万人の町で年間14万7000人ぐらいの方が来られるという、すごい図書館です。「人口1万人なのに?」と思うかもしれませんが、これは周辺の市町村からも来られるということです。おしゃべりが自由で、寝転がって本も読めるし、館長さんは公募で、朝9時から夜8時まで開けてます。お正月もやっておられます。 ここは本当に町の居場所になって、そこに隣の市から親子連れで来られた方がおっしゃるには、「こじんまりしてるし、寝転がれるので、子どもに本読んだりするのもいいんです」とおっしゃっていました。
ビッグイシュー304号で紹介したまちとしょテラソ。(実際の誌面はカラーです)
四つ目は、今度は大都会の武蔵野にある武蔵野プレイスというところです。ここは年間175万人も来られるということです。カフェがありまして、そこには本を持ち込んでお茶が飲める。5時からは、なんとお酒も飲んでもいい、というような、ちょっと遊べる図書館なんですけど、そこでまた感銘を受けたのは、20歳未満の若者たちだけが使える「スタジオラウンジ」というフリースペースがあって、そこには卓球台とか、サウンドスタジオがあって、若い人たちの居場所になっている、というようなことでした。
それから五つ目は東北の移動図書館で、3.11の地震の後、地域の図書館が壊れたり閉館だったりしたときに、被災地に自動車、図書館バスで仮設を回られたという事例を載せています。その五つの事例が載っていて、あとデンマークのすごくにぎやかな図書館も紹介させていただいてます。
もう一つ、2014年10月1日248号の国際記事に、サンフランシスコとバンクーバーの公共図書館の紹介をしています。2008年にサンフランシスコの図書館で、米国で初めてホームレス状態にある利用者と交流をするべく、フルタイム、常勤のソーシャルワーカーの方を雇用されたそうです。そこでは、元ホームレス状態の方を福祉ワーカーに育てて、その方と一緒に毎日図書館内を全部回って、お声掛けしたり、状況はどうなってますか?とヒアリングをしたりというようなことをされています。そのほか、バンクーバーの図書館では、住所がない方も利用できるようなカードを発行する仕組みがある、というような記事を載せてあります。
『ビッグイシュー』は雑誌をつくっている会社と別に、NPO法人ビッグイシュー基金という団体があります。そこで『路上脱出ガイド』という冊子をつくっています。これは路上にいらっしゃる方、あるいは不安定な状況にいらっしゃる方にお届けして、そういう状態から脱出していただくために、例えば食べ物がないとき、体調が悪いとき、仕事を探したいとき、生活保護申請したいとか、いろんな相談事を、どこに行けば相談できるかということを書いたものです。これを図書館にご協力いただきまして、今、大阪市内で24、大阪府内で三つ、西宮で一つ、関西では合計28の図書館に置かせていただいてます。東京都内では46カ所に置かせていただいて、大阪で4000部、東京で7000部ぐらい配布できたという実績がございます。
鳥取県立図書館の小林さんという司書の方がおっしゃるには、図書館はストックだ。書店はフローで、協働、協栄していかなければいけないと思う、というふうなコメントを出されているんですが、『ビッグイシュー』もそこに加わらせていただけたらうれしいなと思っています。
ビッグイシュー基金:
http://www.bigissue.or.jp/
路上脱出ガイド
http://www.bigissue.or.jp/guide/index.html
<トークイベント3に続く>
「図書館は「無料貸本屋」ではない!全国の「本気の図書館」を知ろう
福嶋聡(ふくしま あきら)さん 元ジュンク堂大阪本店店長(現在は難波店店長)。 著書に『希望の書店論』『紙の本は、滅びない』 『書店と民主主義: 言論のアリーナのために』など |
私がここへやってまいりました一番の理由は、僕自身が図書館のかなりのヘビーユーザーだからなんです。
「図書館のせいで本が売れない」ということはない
21世紀になった頃に、図書館は無料貸本屋であり、そのせいで本が売れないとターゲットにされた時期がありました。しかし、元浦安市立図書館長で、今、立命館大学文学部教授の常世田良 先生 は「浦安では図書館が充実すればするほど、そこで本を好きになった方が、本屋でも本を買っている。はっきりと数字に出ている」ということを随分前から主張されています。
私自身もそう思います。私は図書館でも本を借りるし、本屋でも本を買いますので、そういう方はおそらく多いんだろうと思います。今、例えば又吉直樹さんのベストセラー『火花 (文春文庫)』が図書館で借りられるかというと、これはなかなか100人とか多いと500人待ちです。そこまで待ってまで図書館でタダで読みたいという方は、本は買いに来ないのではないかと思いますので、「競合」というのはあまり実態とは沿わないんじゃないかということを思ってます。
本がたくさんある場所は「本を読む」だけではない、「本を作る工房」でもある
佐賀県の図書館に見学しに行ったときに、伊万里の図書館館長さんが、非常に胸を張っておっしゃったのが、「図書館というのは本をつくる場所でもある」ということでした。ここの図書館で本を読まれて、借りられて、本をつくった人もいるんだということを、非常に胸を張っておっしゃってました。実はこれは私も、経験があります。私も親しくさせていただいてます府立大学の酒井隆史さんの書かれた本で、『通天閣』という本があります。青土社『現代思想』に連載してあったのが単行本化されたものです。彼は大阪市立中央図書館あるいは中之島図書館に何回も通って、昔の大阪の古地図ですとか、図書館に行かないと見られない資料を見てその本を書いたと。そういう本を1冊つくる、というのが図書館という場所で起こったことです。
10年前にここで『ビッグイシュー』のバックナンバーフェアをしたときに、北海道の中島岳志さんという方も、『中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義』という本はジュンク堂大阪本店に通いつめて書きました、と「告白」をされました。そこでいろんな本を見ながら、実はその『中村屋のボース』の構想を練ったんだ、ということをおっしゃってた。本屋は本を売るだけじゃなくて、そういう本をつくる一つの工房にもなってるというのが、非常に誇りでもありましたし、それをおっしゃっていただいたのが、すごくうれしかったのを思い出します。
つまり本がたくさんある場所というのは、創作なり制作なりの場になり得るし、制作だけじゃなくて、今、館長さんがご紹介されたように交流の場所にもなる。交流というのは、本屋の理想です。本屋というのはいろんな商店の中で、最も入りやすくて、また最も何も買わなくても出ていきやすい、そういう場所だと思います。たくさんの方が来られて、たくさんの方が本をご覧になって、その中で気に入ったものがあれば買っていただける。まず本屋に来てもらわなければ始まらないということ。それは本当に図書館の、今の「公園のような」という気持ちとまったく一緒です。
本屋はもちろん本をたくさんそろえるということも大事なんですけど、お客さんがたくさんいる本屋にするのが大事なんだと思ってます。
最近、小さな書店さん、個人でやってる書店さんが増えてきました。20世紀の終わり頃の、本屋ガイドのムックなんかを読んでみると、ほとんどが大型店だったのが、2010年を越えてから、紹介される本屋さんというのは、むしろ本当に小さな、でもそこの店主さんが一所懸命セレクトしたショップ、こちらのほうの紹介のほうがずっと多くなっています。一番すごいところは、そこに集まってこられるお客さんを持ってらっしゃるということ。それをすごく僕は感じるので、今、図書館の「公園のように」、あるいはいろんな方がそこのイベントに関わっていくということ、それってすごく素敵だなと思いながら、今、お話を聞いておりました。
土田:ありがとうございます。本当にたくさんの交流から創造的なものが生まれてくる、というところで、図書館が潤えば本屋さんも潤う、豊かになっていくという、すごく面白い関係性が見えてきたと思うんですけど、それでは水越編集長のほうから特集の話など。
水越:私たち編集部にとっては、本屋さんと図書館というのは、とても重要で大事な存在です。最初2003年9月に雑誌『ビッグイシュー』を創刊した当時は、大阪市立中央図書館のそば、堀江に事務所がありました。ご存じの通り、たくさん蔵書がある立派な図書館で、毎日のように通って、創刊前は企画を考えていました。
水越洋子(みずこし ようこ) ビッグイシュー日本版編集長。NPO法人シチズンワークスの元事務局長。 ビッグイシュー日本の代表佐野章二と娘の未来と3人でビッグイシュー日本を2003年に立ち上げる。 |
図書館も本屋さんもそうですけど、本の背表紙が並んでます。目的の本があったとしても、その周辺に並んでいる本を見ることで、いろんなアイデア、ヒントをもらったりすることがあります。
図書館はすごく便利だし、使い方を知ってると得することがいっぱいある、というふうに思います。304号の図書館特集を組む前に、2005年4月1日、まだ創刊まもない25号で「図書館を使え」という特集をやりました。例えば図書館にはCDとかがいっぱいあって、音楽を楽しむこともできるし、それから個室もあって勉強するときこもることもできるよ、と。当時『メディア・リテラシー―世界の現場から 』(岩波新書)という本をお書きになった菅谷明子さんという方がニューヨーク公共図書館のことも本の中で触れられていて、とても感銘を受けたんですね。
本を貸したり、子どものためのワークショップをしたり、ということに加えてビジネス支援ということをやっておられました。ビジネスマンとか、起業したいという人のために、いろんな情報提供をして、サポートしていくということです。たとえばコピー機・複写機を考えた人は、ニューヨークの公共図書館で考えられた、ということでした。
図書館は19世紀半ばにできて100年以上も歴史があるんですけど、ここにこもって作家になった人もいらっしゃるし、例えば映画監督のオリバー・ストーンとか、ウッディ・アレンとかも、そこでいろんな資料を探しに来ていたとか、あと俳優さんでロビン・ウィリアムズとか、ダスティン・ホフマンは役づくりのために、いろいろビデオを見た、というようなことも話されました。すごいなと思って、発信しようとつくったのが、もう12年前になります。今回の特集は、12年後になんでこれをしたいかと思いましたら、ニューヨーク公共図書館にも勝るとも劣らない「ことば蔵」のような素敵な図書館が、実は日本で少しずつ生まれてきてるということに気がついたからです。
「にぎやか、問題解決―いいね!図書館」という特集なんですけど、五つの違うタイプの図書館を紹介しました。
一つ目が綾野館長のいらっしゃる伊丹市立図書館「ことば蔵」。ここは市民参加のイベントが年間200以上も開催されるということで、めちゃくちゃパワフルなんですが、実際にお伺いしたらそういうところもある反面、とても落ち着いた居心地のいい図書館でした。本当に素敵な図書館で。さっき紹介した菅谷さんの言葉で、「図書館はいろいろな人の才能を引き出して、それを社会に還元するための媒介」というふうにおっしゃってるんですけど、まさにそういうことをなさってるなと感じました。
次に鳥取県立図書館。ここもまるでニューヨーク図書館のように、市民が持ち込む課題解決や、起業の支援をなさっています。一つ事例をあげますと、商店とかガレージにシャッターがありますけれども、あのシャッターというのは風が吹くと壊れがちで、強風にはなかなか耐えにくいときもあるそうなんですが、それを防ぐためにシャッターガードという商品を開発された方がいらっしゃいます。その方は地元のベンチャーの方で、図書館の司書の方のサポートを得て、この商品の開発をされたということです。今、そのシャッターガードは、東京国際展示物のビッグサイトでも採用されているということです。これが二つ目です。
ビッグイシュー304号で紹介した鳥取図書館。(実際の誌面はカラーです)
長野県の小布施にある「まちとしょテラソ」というところは、人口が1万人の町で年間14万7000人ぐらいの方が来られるという、すごい図書館です。「人口1万人なのに?」と思うかもしれませんが、これは周辺の市町村からも来られるということです。おしゃべりが自由で、寝転がって本も読めるし、館長さんは公募で、朝9時から夜8時まで開けてます。お正月もやっておられます。 ここは本当に町の居場所になって、そこに隣の市から親子連れで来られた方がおっしゃるには、「こじんまりしてるし、寝転がれるので、子どもに本読んだりするのもいいんです」とおっしゃっていました。
ビッグイシュー304号で紹介したまちとしょテラソ。(実際の誌面はカラーです)
四つ目は、今度は大都会の武蔵野にある武蔵野プレイスというところです。ここは年間175万人も来られるということです。カフェがありまして、そこには本を持ち込んでお茶が飲める。5時からは、なんとお酒も飲んでもいい、というような、ちょっと遊べる図書館なんですけど、そこでまた感銘を受けたのは、20歳未満の若者たちだけが使える「スタジオラウンジ」というフリースペースがあって、そこには卓球台とか、サウンドスタジオがあって、若い人たちの居場所になっている、というようなことでした。
それから五つ目は東北の移動図書館で、3.11の地震の後、地域の図書館が壊れたり閉館だったりしたときに、被災地に自動車、図書館バスで仮設を回られたという事例を載せています。その五つの事例が載っていて、あとデンマークのすごくにぎやかな図書館も紹介させていただいてます。
もう一つ、2014年10月1日248号の国際記事に、サンフランシスコとバンクーバーの公共図書館の紹介をしています。2008年にサンフランシスコの図書館で、米国で初めてホームレス状態にある利用者と交流をするべく、フルタイム、常勤のソーシャルワーカーの方を雇用されたそうです。そこでは、元ホームレス状態の方を福祉ワーカーに育てて、その方と一緒に毎日図書館内を全部回って、お声掛けしたり、状況はどうなってますか?とヒアリングをしたりというようなことをされています。そのほか、バンクーバーの図書館では、住所がない方も利用できるようなカードを発行する仕組みがある、というような記事を載せてあります。
『ビッグイシュー』は雑誌をつくっている会社と別に、NPO法人ビッグイシュー基金という団体があります。そこで『路上脱出ガイド』という冊子をつくっています。これは路上にいらっしゃる方、あるいは不安定な状況にいらっしゃる方にお届けして、そういう状態から脱出していただくために、例えば食べ物がないとき、体調が悪いとき、仕事を探したいとき、生活保護申請したいとか、いろんな相談事を、どこに行けば相談できるかということを書いたものです。これを図書館にご協力いただきまして、今、大阪市内で24、大阪府内で三つ、西宮で一つ、関西では合計28の図書館に置かせていただいてます。東京都内では46カ所に置かせていただいて、大阪で4000部、東京で7000部ぐらい配布できたという実績がございます。
鳥取県立図書館の小林さんという司書の方がおっしゃるには、図書館はストックだ。書店はフローで、協働、協栄していかなければいけないと思う、というふうなコメントを出されているんですが、『ビッグイシュー』もそこに加わらせていただけたらうれしいなと思っています。
ビッグイシュー基金:
http://www.bigissue.or.jp/
路上脱出ガイド
http://www.bigissue.or.jp/guide/index.html
<トークイベント3に続く>
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(ビッグイシュー304号の特集紹介記事)「図書館は「無料貸本屋」ではない!全国の「本気の図書館」を知ろう
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。