ビッグイシュー日本版251号から、読みどころをピックアップしてお届けします。
「マルチだねって言われるけど、人間が職業の壁をつくり過ぎているだけじゃないのかな」
本日ご紹介するのは、巻頭「リレーインタビュー 私の分岐点」より、いとうせいこうさんのインタビュー。
いとうさんは出版社勤務に始まり、タレント、作家、DJ、作詞家、ラッパー、編集者などなど、さまざまなお仕事をこなしていらっしゃいます。そんないとうさんの次の発言が、個人的にたいへん印象的でした。
よく「いとうさんってマルチだよね」と言われるけれど、人間が職業の壁をつくり過ぎているだけじゃないのかな。たぶん税金を徴収するためには、一つの職業に限定しておくほうが便利だからそうなっているんだと思う。
だって昔の人はみんな、職業の枠に捕らわれず、いろんなことをしていたでしょう。たとえば、平賀源内。エレキテルを発明した科学者で医学、地質学、蘭学などさまざまな学問に通じる一方で、有名な浄瑠璃作家で戯作の祖と言われている。陶芸や油絵にも秀でていて、すぐれた作品をたくさん残していたりする。レオナルド・ダ・ヴィンチだってそうでしょう。
(中略)これからも決まった枠に自分を当てはめるのではなく、どこまでも自由に自分のやりたいことを追求していきたい。その根底にあるのは、人の心を動かしたい、ゾッとさせたいという思い。小説でもバラエティ番組でもライブでも、誰かをニヤッとさせたいという欲望が僕を突き動かしている。
自分の話になって恐縮ですが、わたくしイケダ自身も、いろいろな仕事をしています。本業はブログの運営ですが、こうしてビッグイシュー・オンラインのような外部のメディアに編集者として関わることもあれば、ワークショップ講師をやることもあれば、テレビでコメンテーターもやれば、ベンチャー企業、NPOの支援をしたりもします。
これからは、こういった「型にハマらない」仕事をしていく人は増えていくんだと思います。ぼく自身も、10年後には今よりも多様な仕事をしていることでしょう。
そのときに重要になるのは、いとうせいこうさんの言葉を借りると「欲望」だとも思います。彼は「ニヤッとさせたい」というキーワードをインタビューで語っています。今後も、いとうせいこうさんの多様な仕事は、この「ニヤッとさせたい」という欲望の周辺に生まれていくのでしょう。
言ってみれば「職業名」ではなく、「欲望名」で仕事を考えるということです。みなさんは、どんな欲望を持っていますか?
と、そんなことを考えさせられるすばらしいインタビューです。ぜひ路上にて手に取って、自分の仕事について考えるきっかけにしてみてください。
251号では他にも、ベン・アフレックさんのスペシャルインタビュー、特集「古本パワーと遊ぶ」、東田直樹さんの「自閉症の僕が生きていく風景」、ホームレス人生相談などなどのコンテンツが掲載されております。ぜひ路上にてお買い求めください!