ビッグイシュー販売者もメンバーとして活動するダンスチーム、新人Hソケリッサ!(以下、ソケリッサ)。ホームレス状態を経験したメンバーの身体から生まれるその独特なダンスが話題を呼び、活動開始から10年が経った今、様々なメディアで彼らを目にすることも増えてきました。




ソケリッサは現在、活動10周年を記念したダンスツアー、「東京近郊路上ツアー(2017年6月~2018年9月末)」を実施中で、2017年は約5か月で10公演を達成。今回は、2017年のラスト公演となった10月21日のレポートをお送りします。

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写真:河原剛

日々荒野ツアー第10弾、「ソケリッサwithテニスコーツ井の頭公園ライブ&パフォーマンス」。年内最後のツアー公演となる会場は、吉祥寺駅から徒歩15分の井の頭公園内。

6月から始まったツアーの中で、写真家やアーティストとのコラボ公演も行ってきたソケリッサ。今回のコラボ相手は、ギターの植野隆司さんとヴォーカルのさやさんによる弾き語りユニット、テニスコーツです。ソケリッサとテニスコーツが出会ったのは2年前。シンガーソングライター寺尾紗穂さんの呼びかけで開催されたビッグイシューサポートライブ「りんりんふぇす」で共演したのをきっかけに、今回のコラボ公演が実現したそうです。

さらに今回は、ヴォーカル・さやさんと、遠藤里美さんの2人を中心に結成された「ざやえんどう」のメンバー数人も加わりました。ざやえんどうのメンバーは、サックス、トロンボーン、ピアニカ、チューバ、そしてチンドン屋が使っているチンドン太鼓という楽器を持っての参加となり、ソケリッサ音楽の掛け合いが楽しみな大所帯となりました。

ところが当日は大型の台風が関東に接近しており、その影響で大雨の中での本番となってしまいました。メンバーの中には、「今日はお客さん、誰もこないかも」と苦笑いする人も。それでも、ソケリッサ歴7年のイトウさんは「雨が降ろうがなんだろうがやるよ。お客さんはあまりこないかもしれないけど」と話していました。最年長メンバーのコイソさんは、「テニスコーツさんとは、ほぼぶっつけ本番って感じですが、それも面白そう。あとは、いつもやっていることをやるしかないね」と明るい答えです。

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開演15分前。色とりどりの傘を差したお客さんがぽつり、ぽつりと集まり始めました。吉祥寺という土地柄のためでしょうか、若いお客さんが多く、特に女性同士のお客さんが目立ちます。本番が近づくに連れて、お客さんの数はますます増えていき、舞台となる場所を360度取り囲むようにして木と木の間にお客さんが輪をつくっていきます。最終的には100名弱のお客さんが来場したとのことで、いい意味で、メンバーの予想を裏切る大盛況となりました。

14時、ソケリッサとテニスコーツによるコラボレーションがいよいよ始まりました。まずは、それぞれのメンバーが一列になって向かい合い、お互いに礼。お客さんから拍手が沸き起こります。

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写真:河原剛

テニスコーツ・さやさんの小さなピアニカの音から始まり、ソケリッサのメンバーの1人が音楽に合わせて踊り出しました。徐々に演奏される楽器が増えていき、それに合わせるように、ダンサーもひとり、またひとりと加わっていきます。音楽に合わせてチンドン屋のようなコミカルな動きで円をつくりながら、楽しげな表情を浮かべて踊るソケリッサメンバーたち。お客さんの中には、軽快な音楽に合わせて体を揺らせている人もいて、とにかくみんなが楽しそうです。

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写真:河原剛

ダンサーたちが小さな円を何周か描くうちに、ソケリッサとテニスコーツの歯車がかみ合っていき、不思議な調和が生まれていきました。やがて、ソケリッサの輪の中に楽器を演奏しながらテニスコーツのメンバーも加わっていくと、さらに一体感が増していきます。

その間も雨はどんどん強まっていきましたが、途中で帰るお客さんはおらず、全員が輪の中心にいるパフォーマーを真剣な眼差しで見つめています。

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 写真:河原剛

地面に寝ころび、転がり、倒れ込むダンサーたちの身体は、全身泥だらけ。やがてヴォーカル・さやさんが歌い始め、続けて他のテニスコーツのメンバーも歌い出します。その場が最高潮に盛り上がった瞬間です。

突然、音楽が止まり、ギターとダンサーそれぞれがひとりずつになりました。コミカルな動きから一転、ダンサーの動きがシリアスに。苦悩、悲しみ、怒りにも似た表情をみせるダンサー達。さやさんが再び歌い始めると、他のダンサーも加わりダンスは続きます。気がつくと、テニスコーツのメンバーも傘を差さずにずぶ濡れになりながら演奏していました。

「日々荒野」恒例のラスト、メンバーが宇宙に帰っていくような場面では、ダンサーが取り囲む人の輪から抜けて広い松林の中に散っていきます。細い雨が静かに降る中、テニスコーツ&ざやえんどうが奏でる幻想的な音楽と、無重力の中を泳いでいるようなダンサーの動き。お客さんもメンバーを追って動き、さっきまで丸くなっていた人の輪がいびつに形を変えていきます。まさに、会場が一体となったパフォーマンス。公演はそのまま広い松林の中でフィニッシュを迎えました。

舞台が終わると、お客さんの中から「いいぞー」「感動したー」という声が。同時に、雨音をかき消すように拍手が何度も繰り返されたのでした。

(石井綾子)

・2018年の「東京近郊路上ダンスツアー」日程については、ソケリッサのWebサイトをご確認ください
・ホームレスの人達の楽しみや元気を出す場を提供する、ビッグイシュー基金の取組みについてはこちら

ビッグイシュー日本版の「ソケリッサ!」関連号

THE BIG ISSUE JAPAN324号

https://www.bigissue.jp/backnumber/324/
ビッグイシュー日本版324号P.25にも「ソケリッサ!」が登場しています。





 





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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。