鮫川村仮設焼却炉 放射性セシウムを大気中に25%放出

鮫川村仮設焼却炉 放射性セシウムを大気中に25%放出

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 東京電力福島第一原発事故で、東日本の広範な地域に放射性物質が拡散したことに伴い、国、県など自治体が放射能汚染廃棄物(汚染がれき)を少なくするため焼却処分を進めようとしている。その危険性を考える勉強会が6月29日、「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」の主催で郡山市において開かれた。

 岩手県の永田文夫さん(三陸の海を放射能から守る岩手の会世話人/本誌240号掲載)らが講演をした。永田さんは、焼却により放射性セシウムが大気中に拡散している点を指摘。「環境省の鮫川村仮設焼却炉試験結果報告書では、放射性セシウムの回収率は75%に止まり、25%は大気中に出たことがわかった。環境省が『99%以上回収できる』と住民に説明した内容とはかけ離れている」と話した。また、国会議員の質問趣意書を環境省に渡したが、具体的な回答が得られず、「大事な問題に真摯に取り組んでいない。環境基本法に基づいて国民や住民を守る姿勢を貫いてほしい」と訴えた。

 2011年に国は、除染の実施や放射能汚染がれきの処理を決定。廃棄物の「減容化」として焼却実施を決め、福島県鮫川村、相馬市などに建設された仮設焼却炉で処理が始まった。このほか、浜通りの浪江、双葉、大熊、富岡、楢葉、飯舘村、いわき・川内村、南会津などで約20ヵ所の仮設焼却炉が計画されている。しかし、「住民への十分な説明がない」「放射性物質は回収できるのか。燃やした煙を通じて放射性物質の拡散になるのでは」などと、地元の住民から反対や懸念の声が上がっている。

 永田さんは、「燃焼後の排ガスの微粒子の粒の大きさ」「煙の微粒子にどの程度付着するか」について環境省が回答できなかったことに触れた。さらに「微粒子になればなるほど表面積が広がるため付着する放射性セシウムの総量が増える危険性があるのに、放射性セシウムの環境基準や大気排出の総量規制を検討していないこと」「環境省や原子力規制庁は、国民の被曝をできる限り避ける『予防原則』に徹していない問題」なども指摘。今後も岩手県と福島県内で住民が連携して問題を考えていくことになった。

 (文と写真 藍原寛子)

(2014年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 245号より)

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