「関西電力を良くし隊」という匿名の情報提供のおかげで、関西電力が不正な金品の受領で国税局から監査を受けていたことが報道され、2018年の内部調査の報告書が19年9月にようやく公表された(本誌370号「原子力事業者に還流される“闇マネー”。関西電力の経営トップら20人、高浜町元助役から3億2千万円の金品を受領」・372号「原発立地をめぐる〝闇マネー〟さらに明らかに。関西電力は国会招聘を一切拒否裏金は経産省や国会議員にも?」で紹介)。
接待漬け421回、8950万円
関電、工事発注情報提供
事の重大さから経済産業省は関電により詳しい報告を求め、関電は第三者委員会(委員長:但木敬一、元検事総長)を設置して調査を実施してきた。第三者委員会は、関電とそのグループ会社の役職員(元職も含む)など214人にのべ248回のヒアリングを行い、また、書類調査、電子メール(復元可能なものは復元した)なども調べた。ヒアリングには関電と取引のあった吉田開発や柳田産業など7社の役職員も含まれている。
その結果報告が20年3月14日に経産省へ提出された。公表されたその報告書によれば、金品受領者数が18年調査の23人から大幅に増えて合計75人となった。また、累計金額も3億6千万円に増加。これ以外にも新たに公表されたことが多々ある。関電による、故・森山栄治氏(福井県高浜町元助役)の接待もその一つだ。09年〜17年の9年間に421回もの接待漬けで、その合計金額は8950万円と尋常でない。
18年報告では発注プロセスに不正はなかったとしていたが、今回の報告では、不正な発注の実態が明らかになった。森山氏の要求に応じて、関電の役職員らは工事などの発注情報を提供していた。また、森山氏は関係する取引先などへの発注を要求し、「関西電力の役職員等がこれに応じて、特定の工事の発注を約束したり、次年度の発注額を枠取りしたりしている事例が多数あった」としている。 さらに、人事にも影響を与えていた。社外の役職者の登用では、関電は森山氏の強い要求で、人事方針を変更し、すでに決まっていた人物をやめて森山氏の求める人物に変更した事例があったことも明かしている。
その結果報告が20年3月14日に経産省へ提出された。公表されたその報告書によれば、金品受領者数が18年調査の23人から大幅に増えて合計75人となった。また、累計金額も3億6千万円に増加。これ以外にも新たに公表されたことが多々ある。関電による、故・森山栄治氏(福井県高浜町元助役)の接待もその一つだ。09年〜17年の9年間に421回もの接待漬けで、その合計金額は8950万円と尋常でない。
18年報告では発注プロセスに不正はなかったとしていたが、今回の報告では、不正な発注の実態が明らかになった。森山氏の要求に応じて、関電の役職員らは工事などの発注情報を提供していた。また、森山氏は関係する取引先などへの発注を要求し、「関西電力の役職員等がこれに応じて、特定の工事の発注を約束したり、次年度の発注額を枠取りしたりしている事例が多数あった」としている。 さらに、人事にも影響を与えていた。社外の役職者の登用では、関電は森山氏の強い要求で、人事方針を変更し、すでに決まっていた人物をやめて森山氏の求める人物に変更した事例があったことも明かしている。
金品受領、福島事故後に増加
追徴課税なぜか関電が補填
こうした不正や金品の受領などは関電の他の部門にはなく、原子力部門特有の出来事だと報告書は述べている。関電役職員らが金品受領した事実は、1987年に森山氏が高浜町役場を退職後に始まった。美浜原発での蒸気管破断による11人死傷事故(2004年)を契機に、翌年に原子力事業本部が美浜に設置されてから増え始め、11年の福島原発事故後に特に増加している。
関電が経産省に提出した「業務改善計画」では、役職員の辞任や報酬の減額を行うとある。しかし、すでに退任・退職済みの元役職員に対しては「自主返納を要請」するにとどまっている。1億2千万円以上も受け取っていた豊松秀己元原子力事業本部長に対しては、単なる要請にとどまるようだ。もっとも報告書ではすべて返金したことになっているが、国税局はそのすべてを認めず追徴課税している。ところが、その課税分は関電が補填するという対応で許しがたい。
こうした資金は、たとえば、受注した吉田開発から森山氏に流れ、関電の豊松氏へ還流してきている。関電が発注した工事額にその分上乗せされていたとしか考えられない。ところが、報告書では発注工事額は妥当なものだったとしている。第三者委員会はここに切り込まなかった。市民からの告発あるいは株主訴訟を恐れたからだろう。
19年10月に発足した「関電の原発マネー不正還流を告発する会」は、関電役員12人を特別背任罪、背任罪、贈収賄罪、所得税法違反の疑いで告発している。起訴以外にないはずだ。
関電が経産省に提出した「業務改善計画」では、役職員の辞任や報酬の減額を行うとある。しかし、すでに退任・退職済みの元役職員に対しては「自主返納を要請」するにとどまっている。1億2千万円以上も受け取っていた豊松秀己元原子力事業本部長に対しては、単なる要請にとどまるようだ。もっとも報告書ではすべて返金したことになっているが、国税局はそのすべてを認めず追徴課税している。ところが、その課税分は関電が補填するという対応で許しがたい。
こうした資金は、たとえば、受注した吉田開発から森山氏に流れ、関電の豊松氏へ還流してきている。関電が発注した工事額にその分上乗せされていたとしか考えられない。ところが、報告書では発注工事額は妥当なものだったとしている。第三者委員会はここに切り込まなかった。市民からの告発あるいは株主訴訟を恐れたからだろう。
19年10月に発足した「関電の原発マネー不正還流を告発する会」は、関電役員12人を特別背任罪、背任罪、贈収賄罪、所得税法違反の疑いで告発している。起訴以外にないはずだ。
(伴 英幸)
(2020年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 382号より)
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/
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