生活困窮者は、周囲に相談できず孤立を深めることが多い。かつては大規模な炊き出しや相談会を開催して生活困窮者と繋がることが多かった。しかし、コロナ禍においては、そうした活動も限定的にならざるをえない。いま、どのような人たちが困窮しているのか、また支援者はどのように困窮者とつながり、サポートしているのか。


8月15日に行われたオンラインイベント<BIG ISSUE LIVE「コロナ禍で変わるデジタル×困窮者支援」>に、佐々木大志郎さん(一般社団法人つくろい東京ファンド 新規事業部長/一般社団法人反貧困ネットワーク 業務執行理事)、ユキさん(認定NPO法人D×P 相談員)を迎え、デジタルを活用した困窮者支援について話を伺った。
 聞き手:NPO法人ビッグイシュー基金スタッフ 川上翔

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▼コロナ禍におけるつくろい東京ファンドのデジタル支援

「携帯電話はあるけれど、電話できない」困窮者の増加

コロナ禍を受け、反貧困ネットワーク/新型コロナ災害緊急アクションはこれまでの電話窓口に加えWebで相談できる「緊急支援フォーム」を開設*1。蓋を開けてみると電話を利用した相談は少なく、「緊急支援フォーム」から続々と400件以上の相談が来たと佐々木さんは話す。 かつての対面の相談者と比べると、「緊急支援フォーム」の利用者は若年化、30代からの相談も目立つ。さらに相談者の3~4割は「携帯電話は持っているけれど、料金不払いで“電話”の利用ができない」という人が増えているという。

*1 2020年6月よりつくろい東京ファンドが運営協力。

「受け電」が可能な電話の提供で、就労が可能に

“電話番号を使った通話が不可”となると、たとえ短期派遣などの仕事があっても、依頼を受けることができない。また、電話番号がないと賃貸契約も難しい。
そこで、2020年7月より無料で通話可能なスマートフォンを最大2年間貸与する「つながる電話」*2プロジェクトがスタート。
全国27の支援団体経由で、180台の提供を開始したところ、10代から60代までの利用申し込みがあったという。このサービスを利用したことでシェルターからアパートへ入居することができ、さらに住所があることで就労が可能になり、しばらくすると自分の電話を持って「つながる電話」を返却することができる人もいるという。ビッグイシュー販売者も20名以上が利用しているサービスだ。

*2 発信は事前に登録した2か所に、受信は無制限に可能。050の電話番号が付与される。

炊き出しでフリー充電とフリーWi-Fiを提供し、困窮者に来てもらう

持っていた携帯電話が料金滞納で通話できなくなってきても、Wi-Fi利用と充電さえ可能なら、インターネットに接続できる。逆に言えば、Wi-Fiと充電が困窮者たちの“命綱”。

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しかしこれまでは深夜営業のファーストフード店等でできていた無料充電も、コロナ禍の営業自粛によりできなくなってしまった。
そこで、フリー充電とWi-Fiサービスを提供する団体と連携し、2020年11月より炊き出し現場でのフリーWi-Fiの提供を開始。炊き出しや充電、Wi-Fiを目的に来た困窮者を相談につなげているという。

生活保護の申請書類が作成できるウェブシステム「フミダン」のリリース

せっかくつながることのできた相談者たちを、どうにか出口まで支援しようと次につくろい東京ファンドが提供を始めたのが「フミダン」。オンラインの質問フォームを埋めていくだけで、簡単に生活保護の申請書類が作成できるウェブシステムだ。PDF形式でダウンロードし、それを印刷するかFAXで福祉事務所へ提出することで、23区内であれば、スマホでも生活保護の申請がすぐにできる。


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フミダンの申請画面

申請した人には全件フォローをし、福祉機関に連携するなどのバックアップも。“ネット上で申請”はお手軽と思われがちだが、裏側にバックアップ体制があることが根幹のサービスだという。

「これまで“普通”の生活をしていた人にとって、『対面や電話で行うNPOや行政の生活相談』というと心理的ハードルが高い。でもWebでいつでも相談ができるサービス、というアプローチはハードルが低いのかもしれません」と佐々木さんは話す。

「ITに詳しい方は、気づいたことを気軽に連絡してほしいです。お力をお貸しいただければうれしい。やれることがたくさんある分野です。」と協力を呼び掛けた。

▼LINEで若者を支援するD×P

LINEを利用した「ユキサキチャット」で若者とつながる

認定NPO法人D×P(ディーピー)が提供するLINEを利用したオンラインサービス「ユキサキチャット」ではさまざまな事情がある13~19歳の若者の進路・就職・生活に関する相談を北は北海道から南は九州・沖縄まで、全国から受け付けている。

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まずは「ユキサキチャット」を知った若者にLINEで友だち登録してもらい、相談したい人がいればそこからやり取りが始まる。

最初はテキストでのやりとりだが、電話や画面越しに話をすることもある。ユキさんたちから伝える情報で改善して終了することもあれば、地域の相談機関・行政、他のNPOにつなぐということもある。すぐに改善につながらないということもあるが、コミュニケーションを重ねることで少しずつ本人の気持ちや課題が整理されて次の一歩につながることも。

対面だと知らない人に相談するハードルが高く感じる人も、顔が見えなければ、最初のとっかかりとしては入りやすいのではないかとD×Pでオンライン相談のソーシャルワーカーを務めるユキさんは言う。

ティーン世代は自分でできることが増える反面、セーフティネット制度のスキマから抜け落ちてしまうことも多いため、一人ひとりの若者に丁寧に寄り添い、自分の将来に希望を持てるようコミュニケーションしているという。「ユキサキチャット」の登録者は全国で5000人を超えた。

食糧提供や現金給付をきっかけに「つながってほしい」

アルバイトをしていた若者たちの多くは、コロナ禍でシフトが減らされたり、仕事をなくしたりしてしまった。それでも家族を頼れない若者も多いため、2020年からは25歳までの若者へ独自に食糧提供や現金給付も始めた。

食料や現金の給付の相談があれば、希望者にはオンラインで話を聞かせてもらう。
“ここに情報があるから取りに来てね”と待っているだけではなく、情報は届いてこそだという。

ユキさんは「困っている人のなかには、“こんなこと相談していいのかな”と迷う気持ちもあるかもしれません。でもひとりでがんばりすぎずに、その手を少しでも伸ばしてほしいと思っていますし、それをキャッチしたいと思っています」と優しく語り掛けた。

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各支援団体がYouTubeなどのSNSで困窮者の役に立つ情報発信をしても、なかなかアクセスを集めづらい一方で、困窮者を揶揄する発信は注目が集まりがちだ。支援者たちは、暴力的な発言で、困窮者が心無い視聴者に無用な攻撃を受けること、そして相談しようとする気力を奪われることを危惧している。
生活保護は税金を払っているかどうかにかかわらず、国民の権利。困っている人は遠慮なくSOSを出してほしい。

生活保護を申請したい方へ(厚生労働省)

BIG ISSUE LIVE #6 「コロナ禍で変わるデジタル×困窮者支援」

緊急支援フォーム
  https://kinkyusos.jp/

つくろい東京ファンド https://tsukuroi.tokyo/
→つながる電話 https://umbrellafund.tokyo/tsunagarudenwa

D×P https://www.dreampossibility.com/
→ユキサキチャット https://www.dreampossibility.com/yukisakichat/


**新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急企画第6弾**


2021年6月4日(金)~2021年8月31日(火)まで受付。
販売者からの購入が難しい方は、ぜひご検討ください。
https://www.bigissue.jp/2021/06/19544/








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