屋外での遊びは、ストレスを軽減し、コミュニケーション能力、社交性、注意力を向上させる。運動量が増えることでからだの発育も促され、子どもの成長には欠かせない。特にコロナ禍においては、子どもたちが社会的なつながりを持ち、ストレスを発散できる機会が極めて限られたため、屋外スペースに注目が集まった。ベイラー大学(テキサス州)公衆衛生学教授のレネー・アムスタッド・マイヤーらが『The Conversation』への寄稿記事で、公共の遊び場を低価格で増やす方法について4つの提案を行っている。

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子どもの運動量が減る時期は、特に外での遊びを促すことが重要。
Bastiaan Slabbers/NurPhoto via Getty Images

屋外スペースを市民に開放する「共同利用契約」

共同利用契約(Shared-use Agreements:共用契約、または、コミュニティ利用契約とも呼ばれる)とは、公的機関と民間団体や非営利団体が契約し、施設の市民利用を認めることをいう。学校が授業のない時間帯に、運動場やサッカーグラウンド、陸上トラックなどを地域住民に開放するなどの事例がある。

カリフォルニア州では、公立学校の施設の市民利用を州法で奨励している。しかし実際には、多くの学校がその対応を取っておらず、地域の人たちが校庭に入ることができていない。屋外スペースの市民利用を推進する非営利の環境保護団体「トラスト・フォー・パブリック・ランド」の報告書によると、米国の公立学校のうち、一般市民の利用を公式に認めている学校は10%ほどにとどまるとみている。

共同利用契約は、公園の数が少ない地域や、その安全性に問題がある低所得者の居住エリアでは特に有用であろう。契約パートナーとしては、学校、宗教団体、企業、図書館、病院などが考えられる。健康の公平性を掲げた非営利団体「チェンジ・ラボ・ソリューションズ」では、この取り組みに関心ある人向けのツールキット、事例、契約のひな形を提供している*1。

*1 Shared Use: Unlocking possibilities for more community space

ストーリーウォーク

ストーリーウォークとは、地域の図書館と公園が提携し、遊歩道沿いに児童書をパネル仕立てで並べたもの。子どもたちが公園内を散歩しながら物語を読み進められるようになっている。ときに、「ピーターラビットのように飛び跳ねよう」、「はらぺこあおむしのようにはってみよう」といったアクティビティが提案されることもある。

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北フィラデルフィアのハローゲイト公園に設けられたストーリーウォーク。
Friends of Harrowgate Park, CC BY-NC-ND


このように自治体の公園管理部門が図書館と協力すれば、あまり活用されてこなかった公園で、読書やアクティビティの機会を提供できる。レッツ・ムーブ・イン・ライブラリーズ*2やアメリカ図書館協会では、事例紹介や取り組みの始め方について情報を提供している。

*2 Let's Move in Librariesは、公共図書館を拠点に健康的な生活を推進しようと、ノースカロライナ大学准教授ノア・レンストラが2016年に立ち上げた取り組み。ミッシェル・オバマが美術館を拠点に同様の取り組みを推進したことからヒントを得たという。

プレイストリート

「プレイストリート」とは、住宅街の道路を通行止めにする、あるいは公共スペース(駐車場、グラウンド、公園など)内に、時間指定で子どもたちが安全に遊べる空間を設けることをいう。

地域の保健局、図書館、学校、消防署、警察署などにかけあえば、個人でも団体でも実施できる。協力団体は、ボランティアの派遣や遊び道具(バルーンハウス、フラフープ、縄跳び、スポーツ用品)の提供といったかたちでサポートする。関係機関の協力さえ取り付けられれば新たに予算がかかるわけではないこの取り組みによって、子どもたちは与えられた空間で、自由に、より主体的に遊ぶことができる。

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2021年6月、ルイジアナ州バストロップにあるプレイストリートで楽しむ子どもたち。
D. Jones Visuals, CC BY-NC-ND

ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のケシア・ポラック・ポーター教授と共同開発した「プレイストリート設置の手引き*3」では、プレイストリートの導入手順を解説している。

*3 Rural Play Streets Guide



トラックトレイル

トラックトレイルとは、広い公園などで標識やパンフレットなどの簡単なガイドを頼りに進んでいく冒険型の遊び。遊歩道に沿って「ウサギ跳びを20秒間しよう」、「バッタのような長いジャンプを繰り返そう」など、動物をまねるエクササイズが提案されることも。

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北カロライナにあるトラックトレイルには、いろんなアクティビティが提案されている。J. Aaron Hipp, CC BY

トラックトレイルの公式サイト*4 では、近隣でトラックトレイルができる場所が一覧で掲載されている。季節ごとのアクティビティや、達成成績を登録すると賞品があたるチャンスも。トレイルコースの整備やパンフレット作成の資金援助も行っている。

*4 Track trails https://www.kidsinparks.com

著者
Renee Umstattd Meyer
Professor of Public Health, Baylor University
J. Aaron Hipp
Associate Professor of Community Health and Sustainability, North Carolina State University



※本記事は『The Conversation』掲載記事(2021年9月9日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。

The Conversation

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