空き缶などの資源ごみは貴重な収入源となることもあり、日本の自治体では持ち去りを禁止するところも多い。しかし、リサイクルされるでもなく「誰かが捨て、処分されゆくもの」を拾ってきて有効活用することは、善なのか、悪なのか?
フードロス削減が叫ばれる今、「ダンプスター・ダイビング(ゴミ箱あさり)」の現状をドイツのストリートペーパー「bodo」が取材した。


スーパーから出る廃棄食料をいただく「ダンプスター・ダイビング」

土曜の夜10時。3人の女性(マヤ、フリーダ、キム)はドルトムント市内のとある場所で落ち合った。2時間後にまたここに戻ってくる。その頃には、近所のスーパーやオーガニックマーケットのゴミ箱から調達した食料がリュックいっぱいに詰まっているだろう。

3人は時々、週末の夜にスーパーのゴミ箱をまわっているという。お目当ては、まだ食べられるのに廃棄されている食品。「ダンプスター・ダイビングは、ゴミ箱が満杯になる土曜日がねらい目なんです」と、最初の目的地に自転車で向かいながらマヤが言う。

スーパーの棚に閉店間際まで新鮮な野菜がズラッと並んでいるのは、見慣れた光景だ。一週間で最も売上が上がる土曜日、売れ残った傷みやすい食品はあえなくゴミ箱行きとなる。ドイツ連邦食糧・農業省の委託調査によると、廃棄食糧は毎年1200万トンに上り、その半分近くが一般家庭に行き着く前に捨てられているという。

【編集部補足】:日本の廃棄食料は推定1755万トン。(参照:農林水産省:令和元年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率(推計値))

不要だから捨てられたはずの「ゴミ」は、誰のもの?

「ダンプスター・ダイビング」をめぐる法的状況は複雑で、訴訟に発展することもしばしば。廃棄物処理法では、私有地のゴミは回収されるまでは廃棄した者の所有物とみなされるため、悪質な窃盗罪にあたる可能性もある。さらに、不法侵入の問題が浮上するおそれもある。連邦裁判所を含め、関係機関はこの問題に頭を悩ませている。

大型のオーガニックスーパーに着いた。彼女たちだって法令違反の可能性に気づいていないわけはない。不法侵入を防ぐため、監視カメラの設置を知らせる看板があり、2つの巨大なゴミ箱は高い木の柵に囲まれていたからだ。


マヤとキムが柵を軽々と乗り越える間も、監視カメラのライトが明るく周囲を照らしている。フリーダが空の麻袋を手渡しながら、「幸い、まだ捕まったことはありません。たまに近くの住人が窓から何か叫んでいることはあるけど、それくらいですね」と言う。

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マヤとキムは大きなゴミ箱を開けると、懐中電灯で照らしながら中身を見渡す。「やった!ビーツとアスパラガスがある!」旬の食材を見つけて喜んでいる。青いゴミ袋の中にいろんな種類のパンが入っているのを見つけると、1個1個かびが生えていないかチェックしてから、麻袋に入れていく。

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「野菜は少しでも見栄えが悪くなるとゴミ箱行きです。賞味期限を過ぎた食べ物は、まず売り物になりませんし」とマヤ。「なので、野菜やパン、ヨーグルトはほぼいつでもあります。それに比べると冷凍食品は少ないです」。レモンの山を「使える」「使えない」に仕分けていく。その日に何が調達できるか次第で献立は変わる、それがダンプスターダイビングだとも。

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食品廃棄の問題解消に向けた取り組み

近年、食品廃棄の問題解消に向けた取り組みも急増し、オンラインプラットフォームも数多く立ち上がっている。廃棄食品の配達サービスを展開する「フードシェアリング*1」や、飲食店やスーパーで発生した廃棄食品を消費者に割安で提供する仕組みを実現したアプリ「Too Good To Go(捨てるには良すぎる)*2」も評判だ。

*1 https://foodsharing.de
*2 https://toogoodtogo.org/en


フードバンクが大手スーパーと提携するようになって久しく、ホームレス支援団体が食品小売店やパン屋などと協働する事例も増えている。しかしそれでもなお、“まだ食べられる廃棄食品”の山を減らす道のりは長い。

連邦政府は2019年、小売店や消費者を対象に一人あたりの食品廃棄量を2030年までに半減させることを目標とした国家戦略を閣議決定した*3。ただし、それが実現できるかどうかは、あらゆる部門を巻き込んだ徹底的な議論や、人々の自発的な行動にかかっている。

*3 National Strategy for Food Waste Reduction(Federal Ministry of Food and Agriculture)

フードロス問題に関係なく、ゴミ箱をあさるしかない人もいる

次の目的地でゴミ箱に近づくと、高齢の女性と出くわした。懐中電灯を手に、古びたショッピングカートを引くその女性は、調達した食料を仕分けしている。土曜の夜にこんなところにいるのだから、食べ物を探しているに違いない。お互いに少し様子をうかがってから、「パンはいりませんか?」マヤが話しかける。「オーガニックスーパーに行ったらたくさんあったんです」。女性はうれしそうにパンを受け取った。

自転車に乗り込み、駐輪場を出るときにマヤが言った。「ダンプスター・ダイビングをしていると、ときどき人と鉢合わせすることがあります。他に食べ物を得る手段がなくてゴミをあさってる人がいることに、いつもショックを受けます」

今夜の最後の目的地に向かいながら、キムが言う。「ありがたいことに、私たちはゴミ箱で集めた食料だけで生活しているわけではありませんから、相手に余裕がなさそうだなと思ったら、食糧は譲るようにしています」。切実な人たちの分までぶんどらないよう配慮しながら、どのスーパーに行くかを決めているという。「私たちは元気だし、フェンスだってよじ上れますからね。アクセスしやすいゴミ箱は、それが難しい人たちのために取っておくんです」

フードロスを減らす充実感

街の中心にある公園にやって来た。パンの山、ヨーグルト、スムージー、袋いっぱいの野菜が目の前に並べられた。「フードロスを減らす上では、こんなことをしても焼け石に水かもしれません。でも私たちは、少しでも食べ物を無駄にしないで、節約して手に入れるって感覚を大切にしてるんです」今夜の戦利品を分け合いながらフリーダが言う。

マヤも「決まったルートがあるわけではないですが、食べきれないぐらい調達したときは、友達や知り合いにおすそ分けしています」と続けた。最後に「何かいかがですか」と言ってくれたが、丁重に断った。でも後日、その日の戦利品で作ったという料理の写真が送られてきて、こんなに立派な食事ができるのかと驚いてしまった。

By Sebastian Sellhorst
Translated from German by Sarah Gallery
Courtesy of bodo / INSP.ngo
Sebastian Sellhorst

※この記事は不法侵入や窃盗を推奨するものではなく、「違法行為」をせずにフードロス削減を実現するために何が必要かを問いかけるものです。

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