ビッグイシュー日本では、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、教育機関だけでなく市民団体などに対しても講義をさせていただくことがあります。

今回は、1月に開催された税理士の任意団体「大阪税経新人会」のオンライン新年会にお招きいただき、ホームレス問題やビッグイシューの事業などについてスタッフの吉田と販売者のうえださんがお話しさせていただきました。



この記事では当日お話ししたことを元に、ビッグイシューの歴史や販売者について紹介します。

ビッグイシュー日本、起業の経緯といま

星野監督率いる阪神タイガースが優勝した2003年、厚生労働省の実施した『ホームレスの実態に関する全国調査』では25,000人以上の野宿者がカウントされるなど、野宿者の増加は社会問題となっていました。
大阪・中之島公園でもテント村ができるなど、何百人もの人たちが路上で暮らす状態だったのです。

iStock-673108308
写真はイメージです/iStockphoto.gyro

そんな街の様子を見た佐野章二は「ホームレスの人たちがすぐにできる仕事が必要なのでは」と考えていました。

なぜなら、ホームレスの人がたとえばコンビニなどでアルバイトしたくても、年齢制限にひっかかるか、履歴書に書ける電話番号や住所がない・保証人がいなくて断られやすい、月払いだと次の給料まで生活ができないなどの理由で採用のハードルがとても高いからです。


04

一度ホームレスになってしまうと仕事に就くのが難しい、仕事がないと再び安定した家に住むことが難しい――つまりこれは、本人のやる気や人となりとは関係のない、社会構造的な壁なのです。

そこで、佐野章二が英国で成功していた『ビッグイシュー』に倣って大阪で創刊したのが『ビッグイシュー日本版』でした。販売希望者には最初450円の雑誌を10冊無料でプレゼント、それらが売れると手に入る4500円を元手に、以降は1冊220円で自分が売れると思う号を自分のペースで仕入れてもらうスタイルを取りました。

ビッグイシュー日本としては1冊あたり220円の売り上げとなりますが、そこから印刷代、雑誌制作、サポート、家賃などを支払うとほとんど儲けはありません。

それでもなんとか事業を続け、18年の間に延べ1982人の販売者に計12億円を超える収入を提供、205人がビッグイシューの仕事でお金を貯めて、就職やアパート入居などで卒業していきました。

バリバリの企業戦士だったうえださん、ビッグイシュー販売をやってみて

大阪・茨木駅のビッグイシュー販売者のうえださんは、兵庫県南部出身。両親と姉の4人家族で大きな問題もなく、幸せに育ちました。

進学高校から国立大学の理学部数学科に入学した後は、数学に没頭する日々。卒業後は当時最先端だったコンピューター業界に就職し、シリコンバレーなど世界中に出張しながらやりがいのある仕事をバリバリこなしていました。しかし40歳を超えたある日、突然体が動かなくなってしまいます。

数年間、うつ病と思われる症状でうまく働けず、休職を繰り返した後、早期退職者募集に応じる形で退職。そのまま貯金がなくなるまで過ごし、家賃が払えなくなり路上へ・・というときに、NPO法人ビッグイシュー基金が発行している「路上脱出・生活SOSガイド」でビッグイシューを知り、事務所を尋ねました。

「(ビッグイシュー販売を)やってみてうれしかったことはありますか?」と問われると、「初めて買ってくれたお客さんのことは忘れられないですね。若いお兄ちゃんだった。1冊売れたことで“あ、おにぎり2個買える”とめっちゃ嬉しかった。“現金をいただく”のが、前の仕事とは違った楽しみ。雑誌も重いけど、“寒いのにご苦労さん”なんて言われると、とてもうれしい。生きていることが実感できる」と話します。

capture
吉田との掛け合いでいろいろなエピソードを語るうえださん。
ビッグイシューでコツコツお金を貯めて、いまはステップハウス(※)に入居中。


※オンライン編集部補足:ステップハウス:連携団体や、一般の家主の方から提供される空き物件を基金が借り受け、ビッグイシュー販売者をはじめとするホームレス状態の人に、低廉な利用料(月額15,000円~)で提供する、NPO法人ビッグイシュー基金の事業。

「お客さんが来ないとつらい。コロナ禍だと余計に。想像以上の孤独を感じます。」と言いつつも、「すべてを失って裸になって社会を見てみると、ある意味では寂しいのだけれど、ある意味では軽くなって、“生きてる”という実感もある。定期的に自分を見つめる時間が必要だと感じます」と話してくれました。

講義とうえださんのトークを終えた質疑応答タイムでは、「ビッグイシューのほかにも、ホームレスの人の仕事をつくるようなことはできないのか?」「たくさん資金を集めて、ホームレスの人たちが一定期間住める場所を用意できないのか?」といった、ホームレス問題の解決に心よりそう質問も寄せられ、あっという間の2時間でした。

※雑誌以外に始めた取り組み
東京では「夜のパン屋さん」という取り組みを開始。人気パン屋さんから閉店間際に残っているパンを回収させてもらい、書店などの軒先で夜間に販売しています。
https://www.bigissue.jp/2021/12/21696/

「衝撃的だったビッグイシュー」/大阪税経新人会 会長 竹内克謹さん

上記の新年会ののち、大阪税経新人会 会長 竹内克謹さんからメッセージをいただきまました。

 私たち大阪新人会は大阪、奈良、和歌山の税理士を中心として、憲法に保障されている民主的諸権利を擁護する立場から財政・税制・税務行政、会計などの理論と実務に関する研究を行っている団体です。日常的には実務研究会、判例研究会を定期的に開催していますが、新年会と定期総会には会計や税務だけでなく、大学の先生やジャーリストなど日頃接しない様々な分野から講師を招き講演会を企画しています。

 今回の講演会も、ビッグイシューを定期購読している役員からの紹介で、マスコミが報道しない側面からの切り口から格差社会といわれる日本の現状を知り、会員に問題意識を持ってもらえればと、ビッグイシュー日本の吉田耕一氏に講演を依頼した次第です。

 ホームレス問題を考える上で、自己責任論では問題は解決しないとわかっていても、それでは私たちに何ができるのかということが、講演中ずっと頭の中を駆け巡っていました。実際にビッグイシューの販売者の話を聞いて、働く意思があっても働けない状況でホームレスとなったが、ビッグイシューと出会って生きていることを実感しているという話には涙せずにはいられませんでした。

 現在、来年度予算が国会で審議されていますが、100兆円を超える予算規模となる模様です。税金は富の再分配と呼ばれ、本来、国民の暮らしを守るために所得の格差を埋める機能を持っているものです。しかしながら、我が国においてはその機能がすでに失われてしまっていると言っても過言ではないと、講演を聞いて感じました。私たち大阪税経新人会は研究団体ではありますがその研究の成果を発信することによって、少しでも安心して暮らすことができる世の中をつくる一助になればと思っています。

  **

オンライン開催ではありましたが、参加者の皆さまには雑誌『ビッグイシュー』とビッグイシュー基金の年次報告書を送付させていただきました。企画いただいた廣川さん、ありがとうございました!


格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。

 

小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/ 



参考:灘中学への出張講義「ホームレス問題の裏側にあること-自己責任論と格差社会/ビッグイシュー日本」



人の集まる場を運営されている場合はビッグイシューの「図書館購読」から始めませんか

より広くより多くの方に、『ビッグイシュー日本版』の記事内容を知っていただくために、図書館など多くの市民(学生含む)が閲覧する施設を対象として年間購読制度を設けています。学校図書館においても、全国多数の図書館でご利用いただいています。

図書館年間購読制度 

※資料請求で編集部オススメの号を1冊進呈いたします。
https://www.bigissue.jp/request/ 








過去記事を検索して読む


ビッグイシューについて

top_main

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。