電気料金が2024年6月使用分から値上がりした(請求は7月)。政府が物価高対策として昨年1月に導入した補助金が5月で終了したためだ。4月までは1kWhあたり3.5円、5月は1.8円の補助が付いていた。日本の世帯当たり平均電力使用量は329kWh/月のため、値上げ幅は4月比だと1,151円、5月比でも592円になる。







(この記事2024年7月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 482号からの転載です)

東京電力によると標準世帯(260kWh)の電気料金は2020年7月の7035円から24年7月は8930円へと、2000円近く値上がりした。背景には円安や資源価格の高騰がある。一方、原発再稼働が進んだ関西電力の電気料金は20年7月が7035円、24年7月が7664円と、値上げ幅は600円程度にとどまった。そのため、原発再稼働で電気料金が下がるかのような理解が広がっている。だが、実際は違う。

表に大手電力の20年7月と24年7月の標準世帯の電気料金と販売電力量に占める原発比率を示した。20年7月時点では、原発を再稼働させた関西電力・九州電力よりも電気料金が安かった電力会社が複数ある。一方、24年7月時点では、関西電力・九州電力は他電力よりも安いが、原発を再稼働した四国電力の電気料金は再稼働していない電力会社と大差がない。また、関西電力や九州電力の24年7月の電気料金は、原発を再稼働させていない北陸電力とあまり変わらない。

表01


23年、東京電力と東北電力、中国電力は、それぞれ原発の再稼働を前提とした電気料金の値上げを申請した。申請書を分析すると、原発再稼働による値下げ効果はわずか100~200円/月程度に過ぎなかった。すでにこの3社は原発再稼働による値下げを織り込んで値上げしたため、将来、原発が再稼働しても値下げは行われない。

一方、動かない原発の維持にも費用がかかる。筆者の推計では原発を再稼働していない電力会社の原発維持費は11年度から22年度累計で13.6兆円に上った。原発維持費は電気料金に織り込まれ、消費者が負担している。

原発再稼働で電気料金は下がらないどころか、動かない原発の維持のために値上がりしている。福島第一原発事故から13年、そろそろ原発が安いという神話から解放されてもいい頃だ。(松久保 肇)
松久保 肇(まつくぼ・はじめ)

1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。共著に『検証 福島第一原発事故』(七つ森書館)、『原発災害・避難年表』(すいれん舎)など
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