ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるために出張講義をさせていただくことがあります。
写真:京谷 寛
“ホームレス状態から脱出しやすい社会”は、ホームレスでない人も生きやすい社会になる
ビッグイシューが取り上げられた番組を視聴したうえで、スタッフが「人々がホームレスになってしまう理由や社会構造」などのお話をした後、社会の「ユニバーサル・デザイン」の考え方についてお話をさせていただきました。
「ユニバーサル・デザイン」は、視覚などの障害がある人に配慮したデザインですが、決して障害のある人だけでなく、障害のない人にも使いやすいという特徴があります。それと同じ考えで、ホームレスの人が路上から脱出しやすい社会というのは、ホームレスの人だけが恩恵を享受するのではなく、ホームレスでない人にとっても生きやすい社会なのではないでしょうか?という提言をさせていただきました。
千里中央の販売者Mさん、ビッグイシュー販売を経てアパート入居が目前に
そして、ビッグイシューの販売者で、現在は「ステップハウス」に入居中の販売者Mさんが、ビッグイシュー販売についてお話しました。
ビッグイシューの販売を始めたのは軽い気持ちから
「炊き出しに並んでいた時にビッグイシューのスタッフに販売をしませんか?と誘われたのがきっかけです。ビッグイシュー基金が主催するフットサルの練習などに顔を出したこともあったので、「そういえばビッグイシューのオフィスではパンをもらえたなあ」と思い出して(笑)。
でも売上にはそれほど期待していなくて、稼いだ自分のお金でコーヒーが飲めて、パンを食べられたらいいな、というくらいの軽い気持ちではじめたのがきっかけです。
いま2年ちょっとやっているのですが、軽い気持ちで始めたのに、皆さんのお陰でだんだん貯金までできるようになってきまして、ステップハウス(※)を経て、3月から自分でアパートを借りられることになりました。」
*ステップハウス:協力的な家主さんから固定資産税分のみで提供された空き物件を活用して、ホームレス状態の方が初期費用や保証人を立てることなく一時的な居所として利用できるようにしたビッグイシュー基金の事業。ステップハウス利用料の一部を積立金にできる仕組みとなっており、ここを足掛かりにアパート入居や就職活動などの生活再建を応援しています。
▼「ステップハウス」に入居している販売者の声
千里中央にはビッグイシューのファンが多い!?
「最初は別の場所で販売していましたが、3週間くらい経ったところで、千里中央の販売者が卒業することになり、「後任にはしっかりした人に来てほしい」と販売サポートスタッフに伝えたらしく、「いかがですか?」と聞かれてやってみました。
もといた場所も、人情があるので離れがたいなあ…と思っていたのですが、千里中央はすごく売れて「こんなに売れる場所もあるのか!」とビックリしたのを覚えています。」
販売をしていてうれしい・つらいこと、両方とも「人」がもたらす
「激励の言葉を頂けるのはすごくうれしいですね。会社に勤めていたころに言われていた「仕事がんばれ」と性質が違うように感じます。販売場所でいただける激励は、心に届く「がんばれ」な気がします。
辛いことは、真夏の暑さ、真冬の寒さ。北摂は大阪中心部に比べても寒いように感じます。寒い時はヒートテックを着てカイロ持つなどして自衛をしていますが、知ってるお客さんの顔見たらほっとして温かくなりますね。(笑)
ほかに辛かったことといえば、ホームレス、という偏見からか、道行く人と目が合うと睨まれたり、露骨に目をそらされたりするときは心が痛かったです。今はあまりないように思いますが。」
販売で気を付けていることは「身だしなみ」。売れるほどに清潔にできる
「販売中気を付けていることとしては、笑顔でいることです。気持ちいいと思うので。
近寄りがたい雰囲気にならないように気を付けています。
髭、爪とかも、気を付けています。そして、皆さんに買っていただくからこそお風呂に入ることができています。
それと駅に急いでいる人にはお釣りや本を渡すときにスピーディにお渡しできるよう、コインケースを用意して見なくてもお釣りをパパッと渡せるようには気を付けています。
1000円なら650円、とさっと渡せるようにしています。」
*編集部注 Mさんの「感じがいい」「こぎれい」ぶりをTweetしてくださる方もいます。
千里中央でビッグイシューを購入。感じのええおっちゃんやった。 pic.twitter.com/9DlQvht09q
— ロッキー (@shugohiroki) 2018年2月7日
モノレール千里中央駅前でビッグイシューの販売員さんに道を尋ねている人がいた。
その販売員さんが若めで小綺麗にしていたからだろうか。
以前なら、考えられないこと。 pic.twitter.com/sISphdZzUG— 肥塚 隆裕 (@takakoezuka) 2017年9月11日
アパートに入居が決定。これからのことは、慎重に考えて進めたい
「おかげさまで3月からアパートに入ることが決まりましたが、まだ気持ちの整理がついてないところもあります。心の整理がついたところで、就職活動して、ビッグイシューを卒業したいなと思っています。
その暁には、ビッグイシューもまとめ買いできるようになりたいなと思っています。(笑)」
6分間リーディングで感想をシェア!
「こんな濃い雑誌だとは知らなかった」
写真:京谷 寛
続いて、ビッグイシューの好きな号を選んでいただき、それぞれが6分間読んで感想を言い合う時間を持ちました。文字が小さいなあ…という感想もありながら、ほとんど肯定的な意見が続きます。
「濃い」ですね!こんな内容を350円で販売しているなんてビックリしました。大阪のカジノ構想に反対している身として、すごく興味深い内容です。(※309号特集「こわされる人間 ギャンブル障害」を読んで)
貝殻の縞模様で地球や月の過去が読み取れるという話に感心した。(※319号「池内了の市民科学メガネ」を読んで)
知らないことばかり書いていて、たいへん勉強になった。感想を言う時間が足りない。感想を言い合う場が欲しい。
他の週刊誌は著名人のプライベートをあげつらうものが多いなか、このような良質な情報ばかりを載せた雑誌もあるとわかって嬉しい。ぜひこれから購入したい。
など、肯定的なご意見が続きました。(ありがとうございます!)
学生さんからの質問とは異なったものが寄せられた「質疑応答」
そして最後に質疑応答がありました。
Q:日本版と海外版との関係は?
「ビッグイシュー」は英国発祥ですが、日本版は名前を使わせてもらっているものの、資本関係はまったく別です。記事は、世界中のストリートペーパーがネットワークを組んで、記事をお互いに融通しています。
英語圏のストリートペーパーはそのまま記事を使えますが、日本版には翻訳が必要なので、翻訳者の力を借りて掲載する記事もあります。
※ビッグイシュー日本版の翻訳者、西川由紀子さんも豊中市民。当日も会場に顔を出してくれました。参考記事:
「ビッグイシューを売るくらいならなんでバイトしないの」とよく言われるのですが、「ホームレス状態の人はなぜバイトできないのか」はあまり知られていません。下記の記事の中ほどで、コンビニバイトの例をあげて解説していますので、よかったらご覧ください。https://t.co/GnkDT2RpgS https://t.co/rcU9uO3jsn — The Big Issue Japan (@BIG_ISSUE_Japan) 2018年1月13日 SNS他の広報活動で認知が高まり、一定の割合でアンチが増えることもあるかと思いますが、認知が高まればそれだけ売り上げも上がる傾向がありますので、増えた売上で広報要員を確保できれば問題ないと考えています。(笑) また、皆さまにおかれましても本日の講座で見聞きしたことを、ご家族やご友人にお話いただけますと嬉しいです。 最後に、千里中央図書館がオススメする「貧困」「ホームレス問題」についてより深く学べる書籍の紹介がありました。 ビッグイシューでは、高校・大学その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。 日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。 高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。千里中央図書館がオススメする「貧困」「ホームレス問題」について学べる書籍
この「コラボ大学校」では毎回最後に、各講座に関連する書籍を紹介し、図書館を利用いただくことで知見をさらに深めているということで、自主的に学ぶ姿勢を市民同士でサポートするのは「地域の力」だと感じました。
写真:京谷 寛
図書館がオススメする「貧困」「ホームレス問題」オススメ書籍
— >
――
講座終了後、「千里の販売者さんから買うようにするね」「他の市民の集まりでも講演をしてもらえないか」「寄付を受け付けてくれるのか」など、次のアクションに繋がるご提案を複数いただきました。
市民が企画し、市民が運営している活動の底力を感じた出張講座となり、スタッフ・販売者も刺激をいただけた一日となりました!市民講座や小、中、高校・大学で出張講義をいたします