少し前、「不登校YouTuber」について賛否両論が巻き起こっていた。「いまの社会、大学を出たところでまともな仕事につけるとも限らないから、それもよいのでは」という意見もある一方で「(社会で自分が査定・選択されることに備えて)基礎学力や人間関係を学ぶために学校には行くべきだ」という意見もあった。どちらの意見も、持続可能なかたちで “儲けられる” 仕事につくことを前提としている。
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オーストリアでは今後、職業の有無にかかわらずすべての国民に対し、一人あたり毎月1,000〜1,200ユーロ(約12〜14万円)のベーシック・インカムを給付する方向で話が進んでいる。子どもには大人の半額が給付される。
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「ベーシック・インカム」の概念においては、人は仕事のストレスから解放され、もっと自由に職業を選べるようになるだろうということで、政治を語る際には欠かせないテーマとなっている。
オーストリアでのベーシック・インカム導入を目指している団体「ジェネレーション・ベーシック・インカム(Generation Grundeinkommen)」の代表を務めるヘルモ・パープは言う。「簡単に言うと、ベーシック・インカムとは誰もが定期的に生活費をもらえ、返済義務のない社会になるということです」。
目指すはベーシック・インカム導入の是非を問う住民投票の実施
彼は仲間たちとともに、ベーシック・インカム導入に関する住民投票を計画している。
「機械やロボットによって雇用が急速に減少しています。今ある仕事も、数年後、数十年後にはなくなるかもしれません。職場では、人は機械に太刀打ちできないでしょう。18世紀の産業革命と同じようなことが起こるでしょう」
生産性に優れ、賃金や休暇を必要としない機械だと運用コストも安くつく。今後、自動化が進めば、かつてないレベルで失業者が発生するだろう。そうなった時にどうやって食べていけばよいのか。家族を養っていけばよいのか。そうした不安を拭い去ってくれるのが「ベーシック・インカムの給付」とされている。
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だが、その財源はどこに求めればよいのか。近年のみならずここ何十年と、多くの経済学者がこの “人道主義的” アプローチの経済基盤について検討を重ねてきた。国民全員にベーシック・インカムを給付するとなると、毎月、何十億ユーロもの資金が必要となってくるのだから。
この点に関して著名な経済学者の一人で、大型ドラッグストア「dm」の創設者であるゲッツ・ヴェルナーは「税の再分配」で財源を生み出せるという。つまり、懐に入るときの所得税を廃止し、消費税や付加価値税(VAT)といった懐から出て行くときの税を財源とする。それで足りない分は生活保護や児童手当にあたる社会給付金も大幅にカットして充てると。
「自由と安心できる暮らしは相いれないもの、人々はそう思いがちです。でも幸せな子ども時代を過ごした人ならわかるでしょう。生活の心配をすることなく、のびのび生きることも可能なのだと」とパープは言う。
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ベーシック・インカム制度が実現すれば、誰もがそんな自由な生き方ができるようになるとされている。この理論からいくと、「(食べるために)稼がなければ」という呪縛から解放された人々は、これまでとは違う生き方を見出していくことも可能だろう。
「フルタイムで働く必要がなくなるわけですから、家族と過ごす時間や自分ひとりの時間も圧倒的に増えるでしょう」地域活動に参加する人も増えるだろうし、革新的アイデアを持ったスタートアップ事業もどんどん増えることが期待されている。
「生活に関する不安がなければ、人はリスクを恐れずいろんなことに挑戦でき、新しいものを生み出しやすくなります」
ただし、ベーシック・インカム制度を導入したところで突然裕福になるわけではない。この点はパープも認めるところだ。制度導入により、オーストリアに暮らすすべての人々の銀行口座に毎月1,000ユーロ(約12万円)が振り込まれるが、企業側はこれと同額を従業員への給与から差し引く権限が与えられる。
「月収1,500ユーロ(約18万円)を稼いでいた人は、制度導入後も収入は1,500ユーロのままです。ただ、このうちの1,000ユーロは働かなくてももらえるということです」
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不本意な仕事ならいっそ「辞めてしまう」という選択肢も浮上してくるわけだ。
フィンランドでの実証実験で判明したポジティブ効果
一足早くフィンランドでは、ベーシック・インカム制度の実証実験が2018年12月に終了している。国民2,000人(25〜58歳)を対象に、約560ユーロ(約6.7万円)のベーシック・インカムが2年間給付された。受給にあたっては面接や条件など一切なかった。
以前の実験では、ベーシック・インカムをもらっている失業者は、従来の失業給付金を受けている失業者より再就職しやすいかどうかをみたところ、特に差はないとされていた。だが今回の実験では、真逆の結果となった。ベーシック・インカム受給者たちは、そうでない被験者と比べて生活満足度も健康レベルも高かった。ストレスも少なく、集中力もあり、その他の健康問題も減っていた。おまけに将来のことや社会参加の機会についても、より大きな自信を感じていた。
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パープが率いる組織では、2019年後半〜2020年初頭には住民投票を実施し、ベーシック・インカムの実現につなげていきたい考えだ。
ジェネレーション・ベーシック・インカムの公式ウェブサイト(ドイツ語)
https://fuereinander.jetzt
By Christine Gnahn
Translated from German by Catherine Castling
Courtesy of Apropos / INSP.ngo
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