シントン・サンクチュアリはコロナ禍真っ只中の2020年に開設されたシニア女性向けシェルターだ。以前は印刷・看板屋として使われていた建物がボランティアズ・オブ・アメリカ(Volunteers of America: VOA)に寄贈されたのをきっかけに、ニーズが大きかった女性退役軍人向けの支援センターが設立され、そのスペースの一部をシェルターとして運用している。これまでに219名の女性を支援し、うち101人に長期的な住まいを提供してきた。

VOAプログラムの元副代表リンディ・シントン(施設名は彼女の名前に由来する)とプログラム最高責任者のアンヘル・ウルタドは、予約不要の緊急シェルターを訪れるシニア女性の多さを目の当たりにし、シニア女性向けシェルターの必要性を痛感していた。「若い女性たちと一緒に列に並んでいると、列から押し出されそうになったり、いやがらせを受けたり、大変そうでした 。歩行器や酸素ボンベが手放せない人たちもいて、施設のスタッフも対応に困っていました」とシントンが振り返る。
一般のシェルターではシニア女性たち特有のニーズにまで対応できていないため、シントン・サンクチュアリは60歳以上の女性支援に特化した施設とし、改修時にはトイレを標準より高く、ベッドの高さは標準より低くするなどの工夫が施された。
足を踏み入れると、静かで落ち着いた空間が広がっている。「穏やかで心地よく、良い空気が流れています」とシントンが言う。女性たちが慣れない環境でより心地よく過ごせるよう、意図的にこじんまりとした空間設計とした。
家賃高騰に耐えきれず、人生で初めて家を失った女性たちもいる。社会保障頼りの生活をしていたが、それだけでは家賃を賄いきれなくなったのだ。上昇し続ける家賃に対し、一向に増えない社会保障費。十分な支援体制がないと多くの女性が行き場を失ってしまう。
経済的苦境を深刻化させるのが「人間関係の貧しさ」だ、とウルタドは言う。身近に頼れる人がいない、親しい人がいても遠方に住んでいたり、住居や経済的にサポートしてもらえるとは限らない。
子どもに負担をかけたくない
シニアプロジェクト管理者のシェリー・ウェルチいわく、入居者の多くがシェルターに滞在していることを身内に伝えられておらず、家族が彼女たちの居場所を知らないケースがほとんどだ。家族が「セクション8」(米国住宅都市開発省が、低所得世帯、高齢者、障害者の民間賃貸住宅の家賃を補助する制度)の物件に住んでいるため、賃貸契約で同居人が認められていないケースもある。親を同居させると住宅支援が打ち切られる可能性があるのだ。
子どもに負担をかけたくない、と語る高齢者も少なくない。家族に助けを求めても1〜2泊安宿に泊めてもらうくらいの選択肢しか女性たちには残されていない。シントン・サンクチュアリは、そんな女性たちを支援するための施設だ。「似たような境遇にある同年代の人たちと過ごせることで、自然とコミュニティが出来上がっていく。人生経験も豊富な彼女たちにふさわしい場が必要なのです」
入居期限なし、腰を据えたサポート
入居者一人ひとりの事情を踏まえたアプローチを重視し、紛失した書類の再取得、社会保障・メディケイド・フードスタンプなど支援サービスの申請もサポートしている。その甲斐あって、住居確保において確実な成果を上げている。「ここでは退去期限を設けていません。入居者は住居確保に向けて取り組んでいる限り、恒久的な住居が見つかるまで、あるいは、より高度なケアを受けられるようになるまで、ここに滞在することができます」
介護付き住宅や老人ホームへの入居が必要となる場合、適切な施設を見つけることが大きな課題となる。「ここでできることには限りがあるので、より高度なケアを必要とする人には適した場所を見つけなくてはならないのですが、それは容易ではありません」
ボランティアや地域パートナーの存在
当施設の活動に不可欠なのが地域のボランティアやパートナーの存在だ。毎月、コロラド州ホームレス連合が運営する移動式の医療施設「サウスストリート・モバイルクリニック」がここを訪れる。車両管理局(DMV)の職員が3ヶ月ごとにやって来て、入居者の身分証明書や運転免許証の取得をサポートしている。カトリック系学校の生徒たちは、入居者にマニキュア施術をしに来てくれている。
デンバーに拠点を置くさまざまな機関(非営利団体、シェルター、警察署など)からの問い合わせがあると、原則としてスタッフが電話で審査を行っているが、厳寒期は暖を求めて訪れる人に広く門戸を開いている。
安心と秩序を大切にした共同生活
共同生活に慣れるにはだれでも時間がかかるものだが、長い間路上生活を送ってきた女性にとってはなおさらだ。「彼女たちはとにかく不安そうで、まわりに他の人がいると、持ち物を盗まれるのではないかとビクビクしています。なので、最初の数日間は彼女たちがリラックスできるよう努め、それから本格的なサポートを始めるようにしています」とウェルチは言う。
入居者には規則正しい生活習慣を促している。午前8時に照明が点灯し、9時からは作業の時間。清掃は入居者が週替わりで担当する。「きちんと起床し、ベッドを整え、着替えることが大切。一日中ベッドの中にいては気が滅入りますから。もちろん昼寝をするのは自由ですが、ただごろごろしていると精神的にも良くありません」とウェルチは言う。
「こじんまりとした環境でのサポートのほうが成果は出やすい」
元入居者がやって来て一緒に食事をしたり、新しい住居を見つけたと報告しに来ることもよくある。先日も、40年来の友人だった2人の入居者が、シニア向けの手頃な賃貸住宅コミュニティ「カサ・デ・ロサル」で2ベッドルームの部屋を手に入れた。こうした朗報が入るとスタッフのモチベーションが高まり、入居者たちも自分たちも同じような目標を達成できるとの自信につながり、波及効果があるという。
とはいえ、何ヶ月も共同生活を送った後に、補助金対象住宅に移ることは再びの一人暮らしを意味し、難しいこともある。「住居が変わる前には心の準備が必要です。新しい地域コミュニティとのつながりを築きやすくなるようサポートすることが欠かせません」。そこでスタッフは、VOAの低価格住宅への入居が決まった者たちに新しいサービスの紹介をするなどし、スムーズに移行できるようサポートしている。
「これまでの成果を非常に誇りに思っています。デンバーの中心地で最も成功しているシェルターの一つです」とウルタドは語る。ここと同じようなシニア向けの小さなシェルターをもっと設けていくべきだとも。「ここでの実績を踏まえ、デンバー各地にこうしたシニア専用の小規模シェルターを増やしていく必要があると考えます。小さくてくつろげる環境が提供されることで、人の人生を変えられるのです。実際に、大規模シェルターではここまでの実績が上がっていませんから」

シントン・サンクチュアリ
https://www.voacolorado.org/locations/sintons-sanctuary/
By Mariana Ortega Rivera
Courtesy of Denver VOICE / INSP.ngo
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