こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。今回は現代ビジネス「ソーシャライズ!」との共同インタビュー企画として、インターネットを使った自殺予防に取り組む「OVA」の伊藤次郎さんにお話を伺いました。

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インターネットで自殺を予防する




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[左] イケダハヤト、[右] 伊藤次郎さん(インターネット・ソーシャルワーカー/OVA代表)

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イケダ: 今日はネットを活用した自殺防止活動をしているインターネット・ソーシャルワーカーの伊藤次郎さんをお呼びしました。この間先日のWHOの会議でも活動が紹介されたと伺いましたが、まずはどんな活動をしているのか教えてください。

伊藤: 今年6月末に内閣府が発表した「自殺対策白書」を読んで、若者の自殺が増えているという問題を初めて知りました。そのような若者にどうやってリーチすればいいのかを考えているときに、スマートフォンを通じて、ネットを活用して何かできないかと思ったんです。

そこでリスティング広告を利用して、「死にたい」「自殺方法」など死ぬ方法を検索エンジンで調べるだろうという仮説から、7月14日から実際にネットを使った自殺予防活動を行いました。

イケダ: 伊藤さんは、これまではどんなお仕事をなさっていたんですか?

伊藤: 元々は働いている方のメンタルヘルスの支援をしているEAP(従業員支援)企業で勤務していました。その後、精神保健福祉士の資格を取り、ソーシャルワーカーとしてうつ病になって休職していた方の復職支援などをしていました。なので、現在はソーシャルワーカーとして活動しています。

イケダ: リスティング広告を活用した自殺予防をされたとのことですが、もう少し具体的に教えてください。

伊藤: 「死にたい」「自殺方法」など自殺関連用語を検索した人に対して、グーグルのリスティング広告を利用して特設サイトを表示させます。自殺願望のある方に対して「お手紙」のような長めの文章を載せたページを制作し、私のところにワンクリックでメールを送ることができるようにしました。

するとメールが来るわけですが、最初は「死にたい」「助けて」といったような一言二言程度なんですよね。これまでですと「いのちの電話」などでは、死にたい衝動を下げるということをやっていました。

一方で、私はソーシャルワーカーなので、彼らの持っている問題を明確化し、優先順位をつけてその解決に向けて、数十回やりとりしています。そして、医療や福祉などの社会資源につなぐという事をしています。

イケダ: リスティング広告を利用して、これから自殺を考えているハイリスクな人たちを見つけていくわけですね。これまでに何人くらいの人から連絡が来ましたか?

伊藤: これまでに約150人くらいから連絡が来ましたね。私一人でやっているので、対応しきれず広告をはずしたりして調整しています。そのうちの20人くらいは、医療や福祉の施設につなぐことに成功しました。基本的にメールのみ、必要があれば電話やスカイプを利用するという形なので、実際に対面したことはありませんね。

イケダ: 実際の相談ケースについて話せる範囲で教えてもらえますか?

伊藤: 例えば、大学卒業後に引きこもっていた男性が連絡をくれました。そこで何度もやりとりをしながら、精神医学的な問題があるということを説明して、医療につなぐことができ、最終的には働いてるというケースもあります。

他には、100回くらいメールのやり取りをして医療にもつないだ20代の方から、「いまから死にます」という連絡が来たことがありました。個人情報を引き出そうと思っても、なかなか出ず、警察にも連絡したんですが、そのレベルでは難しいと。

そこで、メールで時間をかせぎながら、断片的な情報を組み合わせつつ、少しずつ彼がいるだろう場所を特定していき、その場所に、電話をしてみました。すると、2件目で当たったんです。このように、ギリギリで保護できたという事例もあります。




後編につづく