究極のワーキングプア、ワーキングホームレスは働けども安定した住まいを持てない人たち

「ホームレスとは?」 と人々に尋ねれば、大体は「公園のベンチやテントで寝てる人」「街角で小銭をめぐんでくれと言ってくる人」との答えが返ってくるだろう。ほとんどの人がそう考えているだろうし、この問題を研究する多くの学者も、「路上生活をしているかどうか」で区別するかもしれないが、多くの人の想像と大差はない。

そんなステレオタイプや狭義の定義に異論を唱えるのが、ブライアン・ゴールドストーンの最新刊『 There is No Place for Us: Working and Homeless in America(居場所がない私たち:米国で働き、家を失うこと)』だ。路上生活者という典型的なイメージとは大きく異なる物語が綴られている。ゴールドストーンは「ホームレス」という言葉を、「ホームと感じられる十分に安定した場所がない」ことと再定義する。問題は、この種のホームレスは従来イメージされているものよりもはるかに可視化されにくいことだ。

米国でホームレス問題といえば、こんな固定観念がある。

  • 沿岸部に多い(特に深刻なのはカリフォルニア州)。
  • たいてい独身。
  • 薬物依存や深刻な精神疾患の問題を抱えている。
  • 仕事が見つからないため住まいを見つけられない。
  • テント村や路上、よくてシェルター暮らしをしている。

テント村は都市中心部や交通量の多い地域にあることが多いため、こうした状況下にある人たちは非常に人目につきやすく、メディアやSNSでも取り上げられやすい。大規模イベントを招致したい街のリーダーや、有能な人材に来てもらいたい企業にとっての“目の前の“大きな問題となる。

実際のホームレスの人たちは、そんな固定観念よりもずっと幅広く、はるかに多様であったならどうだろう? 仕事を掛け持ちしていても家族で安定した住まいに落ち着くことができない人、路上生活もしていない、薬物依存の問題も抱えていないのに、子どもとともにいろんな場所を転々とし、その度に学校も変わり、いつまでたっても心休まる場を得られない人たちがいるのだ。

この新しいホームレス像ーーワーキング・ホームレスーーは子どものいる家族も多く、これまでイメージされてきたホームレスの人たちと比べて困難がマシということは決してない。可視化されにくいために、政策を打ち出すのがより難しくもある。ゴールドストーンの著書では、家族が他の家族や友人と相部屋で暮らす事例や、長期滞在型の安宿で不安定な暮らしをしている家族のストーリーが語られている。

Photo by Marcus Loke

サンフランシスコやロサンゼルスで働くテック企業の社員たちが、こういった人たちを目にすることはない。彼らの存在は、より低所得者層が暮らす大都市やその郊外エリアに隠されているのだ。商業エリアやハイウェイそばに建つ古びたアパートや長期滞在型の安宿に、身動きが取れなくなった家族が暮らしていて、追い出されたところで不安定で不潔な住まいしか見つからない暮らしをしているなど、ほとんどの人は知らないことなのだ。

ゴールドストーンはジャーナリストとしての語り口と、人類学の博士号取得者としての深い分析能力を組み合わせて、大都市アトランタで安定した住まいを見つけられず、親戚、友人、知人の家を転々とし、不安定な暮らしを強いられている5つの家族の物語を語っている。ときに、家族全員で一部屋で暮らすこともある。真の「ホーム」の感覚がないままに、月に何度も場所を変えながら。

よく調査された実話に胸を打たれると同時に、「ホームレス」が意味するところについて再考させられる作品だ。そしてホームレス問題というものが、政府がやりがちな不備だらけの定義よりもはるかに大きく深刻であることもよく理解できる。そして何よりも、全ての家族や個人が「ホーム」を持つことができるよう、手頃な値段で、まともな、安定した住まいを持つことを基本的人権としてみなされるよう求めていかなければならないと思わせられる。

『 There is No Place for Us: Working and Homeless in America』
https://www.briangoldstone.net/

By Dan Immergluck
Courtesy of Shelterforce / INSP.ngo

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