ビッグイシュー通算500号発行記念!ビッグイシュー歴20年以上のベテラン販売者・濱田さんに聞く

「ビッグイシュー日本版」は、2003年の大阪での創刊以来、月2回の発行を続け、2025年4月1日号で通算500号となる。500号記念に、創刊号から20年以上販売を続けている大阪・梅田の販売者、濱田さん(74歳)に話を聞いた。

信金と図書館司書などを経て…

大学を出た後、新卒で2年ほど信用金庫の仕事をしていました。大学時代に図書館のアルバイトで大学の学費を払っていたこともあり、再び図書館で働きたいと思って通信教育で司書の資格を取り、信金を辞めて図書館で働いていました。
図書館司書の仕事というのは、本の貸出や返却をするだけと思われがちですが、本当は幅広い知識を持った専門職なんですよ。今でこそパソコンでピッと探せますが、それでも幅広い知識が必要な、本来は正規雇用すべき、経験の蓄積が必要なお仕事だと思っています。

レファレンスでお客さんが求める本を案内するのも、移動図書館でいろんな人と会うのも楽しかったです。十年以上働いたのですが、非正規で給料の問題もあったので、他の仕事をしようと思ってやめたんです。このことはちょっと後悔してますけど(笑)

そうしたら家族と折り合いが悪くなってしまって、家を出ました。半年くらい、昼は図書館で過ごし、夜は野宿していました。他の仕事をしたこともあります。しばらくして偶然聞いていたラジオで、ビッグイシューが始まると知ったんです。面白そうだし、働かなきゃいけないと思ってたし、お金もないし、ということで説明会に参加したんです。

はじめてビッグイシューを販売した日の失敗

他の販売者は「売れるかなあ」と不安がっていましたが、ぼくは売れると思っていました。当時は、ビッグイシューが始まるということでたくさんメディアに取り上げられたこともあって、かなり売れました。あまりにも売れてしまったので、お釣りが足りなくなってしまって。来てくれたお客さんに「お釣りある?」って聞かれて、なかったのが悔しくて。それを教訓に、それ以来ずっとお釣りはしっかり準備するようにしています。

それで、大阪の人は新しいものが好きですし、たくさん報道されたおかげで、最初の3か月は本当によく売れました。3か月経ったところで、報道も減って、ガクンと落ちましたけど(笑)
それでも、お客さんと話したり、販売を工夫したりが楽しくなってきたことと、すでに50を過ぎていたので他の仕事をしようとは思わなかったです。

創刊当時の濱田さん。
ビッグイシュー2号のインタビューに答えている。
https://www.bigissue.jp/vendor/2/

20年続けた原動力

それでもう、500号。早かったような、長かったような。でもこんなに、20年以上も続けるとは思いませんでしたね(笑)
支えていただいているお客さんのおかげで、長くやらせていただいております。セルフレジと違って、お客さんとのやりとりが本当にありがたいんです。お客さんに育てていただいているという実感があります。ちょっと間が空くと、お互いに「あの人どうしはったんかな」ってこちらも思いますし、自分が立ってないと心配もされます。

常連のお客さんがいらっしゃって、「あの人から買いたい」って言って僕から買ってくれる、期待してくれているっていう人がいるから、続けて来ることができました。

濱田さん自作のリーフレットが楽しみという常連さんも多い。

2007年からまち歩きツアーを年9回ほど開催。通算150回へ

もともと歩くのが好きで、図書館司書だったころから北海道から九州まで全国の「歩こう会」に参加してたんです。それで、もうちょっと交流したいなという気持ちもあったので、ビッグイシューの事務所で、「こんな活動をやってみたい」と伝えたところ、スタッフの協力もあって開催することになって。以来、7,8月と12月は休みますが、だいたい年に9回のペースで開催していて、毎回4~5キロのコースを考えて歩いています。コロナ禍のときは少しお休みしましたが、もうすぐ150回になります。大阪には、新しい建物がたくさん建てられていますが、古い建物もたくさんあります。お金をかけずとも、そういうのを見て歩くのも楽しいですよ。

ビッグイシューもそうですが、歩こう会でもいろんな出会いがあるのが楽しいです。
150回目は記念の会にしたいと企画していますので、ご都合がつくようでしたら参加していただけると嬉しいです。

「歩こう会」では毎回下見を行い、参加者が楽しめるようプランを練るという濱田さん。写真は2018年の摂津峡ツアーの時のもの。
https://bigissue-online.jp/archives/11380

お金を貯めて、アパートに入居。年金+ビッグイシュー販売暮らしに

ビッグイシュー販売者として数年経ったころに、格安で住まわせてくれるアパートに入居しては、お金が無くなって退去して野宿、ということを何度か繰り返していました。当時はビッグイシュー基金の「ステップハウス」の仕組みもなかったから、そのプログラムの前身ですね。結局、7~8年くらい前に、頑張ってお金を貯めてアパートに入居しました。

今は国民年金と厚生年金を受け取りつつ、それだけでは足りないのでビッグイシューの販売を続けています。できたら貯金もしたいのですが、いまはリモートワークも多くなって、人通りが減ってしまって厳しいですね。
以前は、そろそろ何時ごろだからあの人が通るかな、と予測がついたものですが、今は定期的に通る人が減ってしまって、予測を立てるのが難しくなってしまいました。

高校生などが参加する「道端留学」プログラムでは、OJTとして販売のコツを伝えることもある。
https://bigissue-online.jp/archives/12629

自分の「お気に入りの号」はない

500号を振り返っても、自分のお気に入りという意味でこの号がオススメ、というものはないんです。全部の号がオススメですからね。(笑)
バックナンバーも、在庫切れでない限り、できる限り仕入れて持っているようにしていますので、目次のファイルを作って、その人の関心に合ったものを提案させてもらっています。この間は、アフリカ帰りだという人に、滝田明日香さん(アフリカで活躍する獣医師)の記事が載っている号を紹介したら、それから定期的に買ってくださるようになりました。専門家ではありませんが、広くカバーしています。

20年の変化

昔はよく、道案内をしてくれと頼まれたものですが、今はスマホがあるから減ってしまって少し寂しいです。最近は外国の方から、スマホでここに行きたい、と言われることがあるので、スマホを指し示しながらの道案内は楽になりましたけどね。
今は雑誌も廃刊になるものが多くて、何事もペーパーレスになったこともあって、若い人は雑誌を読まなくなりました。ニセのニュースなんかも増えてきてしまっていて、もう少し骨のある、大事なことを伝えていかないといけないですよね。 “いい人間”をみんなで育てていかないといけないなと思っています。


図書館司書の仕事が長かっただけあって、自分の考えを押し出すのではなく、あくまで相手の興味関心に合わせてピッタリの号を紹介するという濱田さん。今は雨の日や体調の日は休んでいるものの、平日は8時~18時、土・日・祝は10時~17時で販売を続けている。梅田近辺に来ることがあれば、ぜひ梅田歩道橋上で、濱田さんに話しかけてみてほしい。

濱田さんの販売場所
http://bigissue.jp/location/umedahodokyo/