小笠原村・南鳥島で核ごみ最終処分?近海は「プチスポット火山」の活動域

2026年3月3日、経済産業省は東京都小笠原村に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定プロセスの最初の段階にあたる「文献調査」を実施するための申し入れを行った。南鳥島はプレート境界から遠く離れた太平洋プレートの上にあり、地震や火山の影響を受けにくい地域とされている。そのため、複数の専門家が、地質学的な安全性の観点から、南鳥島を地層処分の最も有力な候補地として挙げてきた。小笠原村の渋谷正昭村長は4月13日、住民説明会で「国の責任で決めるべきだ」と述べ、文献調査を容認する考えを示した。ただ、この案の実現可能性は多くの点から疑問がある。

青森からは2200kmの航路
輸送距離の長さ自体もリスク


南鳥島ははるか昔の海底火山の噴火と、その上にできたサンゴ礁の堆積でできた総面積は1.5㎢の小島だ。東京から南東方向に約1900km離れた絶海の孤島で、村役場のある父島からも約1200km離れている。現在は自衛隊の飛行場と気象観測所があり、住民はすべて政府職員だ。周辺海底でレアアースが確認されているが、地層処分エリアからは離れている。人間の生活環境から遠く離れていることはメリットかもしれない。

ただし、離島ゆえのデメリットも大きい。すべての建設資材は本土からの輸送が必要だ。作業員もすべて本土からになる。それだけでも従来想定されていた建設費をはるかに上回る。また、通常の地点であれば地域への経済効果も考えうるが、これほど離れていると、それも難しい。処分される高レベル放射性廃棄物は製造地の青森県六ケ所再処理工場から2200km近くを船で運ぶことになる。この輸送距離の長さ自体もリスクだと言える。

また地形的な問題もある。現在考えられている最終処分場は地上施設約1~2km²、地下施設約6~10km²が必要だが、総面積1.5km²の南鳥島には標準的なレイアウトでは地上施設を設置できない。島が海底から急峻に立ち上がっているため、地下300~500mに作る地下施設の面積確保も困難だ。事業主体のNUMO(原子力発電環境整備機構)はレイアウトを小さくする案を示したが、これも処分費用に跳ね返る。

遮水性の低い石灰岩
放射性物質が漏れだす可能性

地下に放射性廃棄物を処分するのは人間の生活環境や自然界から隔離するためだ。ところが、南鳥島では遮水性の低い石灰岩が地表から数百m以上にわたって堆積していると考えられる。そのため地下水(この場合海水)によって環境中に放射性物質が漏れだすリスクが高い。石灰岩を避けるためには1000m以上深い位置に処分するという選択肢もあるが、従来の処分方法とは大きく異なることから、研究開発に時間を要する。

さらに、地質的な安定性にも疑問がある。南鳥島近海では海洋プレートの屈曲が原因で生じる、「プチスポット火山」の活動が確認されているからだ。300万年前以降に活動したこれらの火山の活動領域は、南鳥島から最短で約46 kmであるという。地層処分で考慮されるのは第四紀(約258万年前から現在)に活動した火山の中心から15km圏内だが、海底であるということもあり、確認は通常の地点よりもさらに困難だろう。

南鳥島の文献はほとんどなく、文献調査でわかることは少ない。結果、実際にボーリング調査などを行う「概要調査」、場合によっては「精密調査」まで進まなければ、適不適は判断できないことも十分に考えられる。実現可能性の低い南鳥島が長く選択肢として残り続けることで、時間とコストの浪費にもなりかねない。
これまで何度か行われた説明会での住民発言からは、合意形成にはほど遠いことが読み取れる。過去、処分場候補地として名前の挙がった自治体では、受け入れ是非をめぐって住民間の深刻な分断が引き起こされてきた。今からでも遅くはないので、文献調査の受け入れは多様な住民・専門家の意見を踏まえ、慎重に判断することを求めたい。(松久保肇)

まつくぼ・はじめ
1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。
金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。
https://cnic.jp/

2026年5月1日発売の『ビッグイシュー日本版』526号・「原発ウォッチ!」第228回より転載しました