ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、学校や団体などで講義をさせていただくことがあります。

今回の訪問先はなんと小学校!大阪市立八幡屋小学校の6年生のキャリア教育の時間に、ビッグイシュー日本のスタッフ、そして販売者の吉富さんがお邪魔しました。



写真提供:八幡屋小学校

八幡屋小学校は大阪市にある1学年1クラスの市立小学校。キャリア教育の一環で様々な外部講師を招いて授業をしており、そのひとつとしてビッグイシューを招くことを6年生の担任の先生が企画。校長先生に「子どもたちにとってよい経験になりそうですね」と快諾頂き実現しました。

キャリア教育ということで、「社会的企業」がなぜ生まれたのかという社会の背景、ビッグイシューの事業のしくみや、販売サポートスタッフとしての仕事紹介、また社会の背景の理解促進のために、ホームレス状態にある人ってどんな人?ということも感じてもらえるよう、ビッグイシュー販売者が日々感じることも伝えたいところです。

しかし小学校の授業は大学の講義時間の半分の45分!どこまでエッセンスを伝えられるか、そして小学生ならではの遠慮のない質問が飛んでくるのではということに少々緊張しながら教室に入ります。

ビッグイシューの事業の紹介「販売者は、街角の書店の店長さん」

まずはスタッフと販売者の自己紹介のあと、簡単にビッグイシューの事業の説明から。
350円の雑誌を1冊170円で仕入れてもらって販売します。さて、儲けはいくらでしょう?と質問すると、「180円!」と元気な声が返ってきました。「それでは、180円のもうけで雑誌を5冊売るといくらのもうけでしょう?」と聞くとすかさず「900円!」。さすが現役小学生、反応が元気で非常にやりやすいです。

10冊販売した後のお金を元手に、売れると思う号を1冊170円で仕入れて350円で販売する、という事業の仕組みを説明していきます。

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ホームレス状態になった人が、アルバイトにすら就きにくい事情とは

次に、「ホームレス状態になった人って、なぜコンビニとかでアルバイトすることもできないんだと思いますか?」と質問をすると、これも次々と手が挙がり「差別があるから?」「履歴書の紙がないから?」など、思ったより大人の事情を理解していそうな回答が返ってきました。

スタッフが「自分がコンビニの経営してるとするやん?ほんなら、自分より年下のピチピチの若者と、自分より年上のおっちゃん、どっち採用したい?」と聞くと、吉富さんに遠慮なく「ピチピチがええわ!」と口々に容赦のない回答が…。47歳の吉富さんは苦笑いです。

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この調子で小学6年生にもわかるように、アルバイトをするにも、「年齢制限に引っかかって採用されないことが多い」ということや、「連絡先の住所や電話番号がないと連絡できなくて採用されない」ということ、そして採用されたとしても、「お給料が入ってくるのが1ヶ月以上後だと、貯金のないホームレス状態の人には無給の期間をやり過ごす余裕がない」ことなどを説明したところ、みんな神妙な顔をして聞いてくれていました。

ホームレスになる人ってどんな人?

続いてスタッフが、「ホームレスになる人ってどんな人やと思う?」と質問。
「お金がない」「家族がいない」などの回答が返ってきましたが、人それぞれでいろんなケースがあることを説明していきます。

・会社が潰れた
・リストラに遭ってしまった
・病気になってしまった
・ギャンブルにハマってしまった
・震災などで住まいや家族を失ってしまった

など、さまざまな事情でホームレス状態になってしまうことがあるということ、それゆえに「ホームレス」というのは「状態を表す言葉」であって、「その人がどういう人か」までは表現できないということを説明しました。そして、それは「国籍」や「病気」や「男女」などの言葉も同じだと伝えます。

「ホームレス状態になるなんて、なるまでは思ってもいなかった」

続いてビッグイシュー販売を経て、現在はステップハウス(*)に入居している吉富さんの体験談。長崎県出身で、自衛隊やスーパーのバイヤー、建設現場での仕事を経て、「チック」の症状が原因でクビになり、ホームレスになってしまったというお話をしました。「その状況になるまでは、自分がまさかホームレスになるなんて思ってもみなかった」という感想に、教室の子どもたちは真剣に聞き入ってくれていたようです。

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「ホームレス状態の人は働かない」と思っていた生徒にとっては、以前は自分の知っているような職業の仕事をしていた人がホームレスになりうる、ということに驚いた様子でした。
*参考)
▼吉富さんが販売者になった経緯や販売スタイルなど
http://bigissue-online.jp/archives/2017calender_02.html

▼「ステップハウス」に入居したお話
http://bigissue-online.jp/archives/1065885375.html

最後に子どもたちからの質問タイム。吉富さんも「どんな質問が来るのだろう」とドキドキしていたのですが、とても鋭く素敵な質問ばかりでしたので、紹介したいと思います。

Q:今までに失敗して学んだことはありますか?

暗くなってしまうようなことがあっても、沈んだ表情になったらアカンてことかな。失敗したらそら気持ちも沈むけど、暗い顔してたら暗いことが続いてしまう。顔で笑って心で泣いて、や。知らんか。笑 
沈むときに明るい顔する方法はな、失敗しても心の中で「ズンドコド―!」って言うんや。そしたら”アホなこと思ってるなあ”ってふっと心が軽くなるやろ。それが心の中で言えるうちは最悪じゃないねんで。

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*現在、淀屋橋で販売する吉富さんはお客様からの評判もよいのですが、心の中で「ズンドコド―!」と唱えていたのですね…。

Q:「今後の夢はありますか?」

夢なぁ…前は「家族に会う」やってんけど、親、死んじゃったからな…。
あ、前な、ビッグイシューやってて誘われた「ホームレスワールドカップ(*)」っていうのがあって、イタリア行ったことあるねんけど、すごく楽しかったのね。いつかそれを運営したり、手伝ったりっていうサポートする側に回りたいかな。
※ホームレスワールドカップとは、世界各国のホームレス状態の人で編成されたサッカーチームのワールドカップ。日本のチームにはビッグイシュー基金も応援する野武士ジャパンがある。
https://homelessworldcup.org/

関連記事:選手たちの人生を変えるホームレス・ワールドカップ
http://bigissue-online.jp/archives/homeless_worldcup_01.html
ホームレスワールドカップ、という単語に教室の子どもたちは驚きの声をあげていました。

Q:ビッグイシューは、社会にどう役立っているのですか?

「自分の力で立て直したい、と思っている人が世の中にいるという存在をわかってもらう仕事」かなと思います。こんな人もいるのよ、あなたのそばにつらい人がいるのかもしれないよ、ということを、(路上に立つことと、誌面両方通じて)知ってもらうことなのかなと思います。

Q:子どもの頃にしていたことで、今、役に立ってることはありますか。

そうね、それは、「挨拶」です。知らない人と話すきっかけになる。何かが始まるきっかけになる。めっちゃ役に立ちますよ。僕「おはようございます」って言い続けてるだけやけど、「いつも元気に挨拶してるね」って声をかけて雑誌を買ってくれる人もいる。

めんどくさいと思うかもしれないけれど、「挨拶を毎日元気よくやる」っていうことで、もし元気が出なくて挨拶ができない時に、「あれ、あいつどうしたんやろ」って見つけてもらうこともできる。ぜひ、挨拶はやってみてください。

講義を受けた小学生たちからの反応

小学6年生に、45分という限られた時間でどのくらい伝わるだろうか…とドキドキしていたのですが、授業後の感想には視点や何かが変わったのではと感じられるようなものをたくさんいただきました。

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例)
「働くという事はとても大切ということがわかった」

「ホームレスの人がこんなにも悔しい思いをしているという事がわかりました」

「やれる!できる!と思わないと始まらない」

「人のつながりってめちゃ大切なんやということがわかった。(中略)やっぱり人は人との関係の中で生きている」

「すごく話が分かりやすかったです。(中略)もっと多くの人に聞いてほしい」

今回「キャリア教育」でビッグイシューを招くことを企画した川口先生のお話

授業後、喜び・興奮のあまりスキップで跳びはねるように近づいてきてくださった川口先生に少しだけ今回の講義の感想をお伺いしました。

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知人にビッグイシューのことを聞いて、3年くらい気になってたんですけど、今回ようやく実現できてうれしかったです!

さすがに45分にすべてを伝えきってもらって、いきなり質問するっていうのは難しいので、事前学習としてビッグイシューから送られてきた題材映像を見たうえで、質問を考えておこう、という時間は持っていました。「こんな話聞ける機会、まあないぞ!」って。

それでも45分があっという間に感じられました!スタッフの方のお話も、吉富さんのお話も、すごくおもしろかったです。いやー、もっと聞きたいな!時間が許すなら、何回かのシリーズにしたいくらいです。貴重なお話をいただき、ありがとうございました!


――

義務教育でホームレス問題に触れる意義

学校の現場では、読み書き計算以外に「キャリア教育」や「道徳」など、これからの世の中を生き抜いていくのに必要だけれど明確な回答のないテーマについて子どもたちに授業をしていくことが求められています。

しかし、現代の社会情勢を踏まえつつ、リアルな事例を通して子どもたちの心に届くメッセージを先生たちだけで編み出すのは至難の業です。

ビッグイシューでは、社会問題が噴出している現代では、「社会課題があるということをまず“知る”こと」、「生きづらさを抱えた人に寄り添う気持ちを持つこと」ということがとても大切だと考えています。

ビッグイシューの事業紹介を通して、社会課題があるという事実、働くということはどういうことなのか、他者への寄り添いがどうして必要なのか、ということなどをお伝えしていければと考えています。

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八幡屋小学校の校内にあった、人権の授業で使ったという四葉のクローバーの標語。

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ビッグイシューも大切にしていることばかりです!

小・中・高校での人権・道徳・キャリア教育の授業
大学での貧困、自己肯定感、社会的企業について出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。

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小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。

https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/

まずは学校でビッグイシューの「図書館購読」から始めませんか

より広くより多くの方に、『ビッグイシュー日本版』の記事内容を知っていただくために、図書館など多くの市民(学生含む)が閲覧する施設を対象として年間購読制度を設けています。学校図書館においても、全国多数の図書館でご利用いただいています。

図書館年間購読制度
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資料請求で編集部オススメの号を1冊進呈いたします。
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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。