世界中の紛争下にある国々では、学齢期の子どもたちのおよそ4人に1人が「権利」であるはずの教育を受けられていない。その数2,700万、女子は男子の2倍以上だ。紛争地において、なぜ学校や生徒達が標的とされるのか『The Conversations』の記事を紹介する。

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2018年2月、ナイジェリア東部ヨベ州ダプチの学校がイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」に襲撃され、100人以上の少女達が拉致された。3月21日、ようやく解放された彼女たちが家族の元に戻ってきた。しかし、コミュニティの人たちは脅されてもいる。ボコ・ハラムが再びやって来て少女らの復学を知ったら、再び誘拐し、今度は戻ってくることはないぞと。

シリアでは少なくとも4,072校が、軍事的な利用もしくは破壊によって「閉鎖」を余儀なくされた模様。ハマ県、ダラー県、ホムス県、イドリブ県では、学校を標的とした攻撃が少なくとも1,292件あった。

先週、ジュネーブで開催された公聴会にてNGO連合が「#SaveSyrianSchoolsプロジェクト(*)」の調査結果を発表している最中にも、シリアでは学校が爆撃され、少なくとも15人の子どもが犠牲となった。

このように、紛争地域では「教育」が標的とされている。

*Save Syrian Schools プロジェクト


なぜ学校が紛争に利用されるのか

国際法で保護されているはずの学校や生徒たちが、なぜ武力紛争や混乱時に標的とされるのか。これには多くの理由がある。

学校に集まった、または個別に通学する生徒たちは、武装勢力による拉致の主要ターゲットである。拉致された子どもたちは少年兵にされる、または人間の盾や自爆テロ要員として使われるのだ。学校はソフトターゲット(*)となり、子どもを標的にすることは「テロ活動」において非常に効力があり、地域社会を弱体化させる効果がある。

*警備や監視が手薄で攻撃されやすい標的


学校や大学は、軍事拠点や軍事施設としても理想的であり、戦争遂行の基盤となりうる。ゆえに、敵からすると主要な軍事目標となるのだ。

学校は武装勢力からすると「国家権力の象徴」とも見なされるため、政府に攻撃する戦闘行為においては格好のターゲットとなる。教育のあり方に異を唱える勢力の場合は特にだ。

イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が顕著な例である。2015年に「西アフリカのイスラム国」と改称したが、依然「ボコ・ハラム」の名で知られている。これは、現地ハウサ語で「西洋の教育は罪」を意味する言葉だ。(西洋の)教育は罪深いもの、との過激思想を持ち、特に女子の教育に反対している。彼らにとっては、学校を標的とすること、子どもを誘拐することが主要戦略なのだ。


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© Pixabay


2014年にはナイジェリアのボルノ州チボックの女子学校から276人の女子生徒を拉致。この事件は、ソーシャルメディア上で #BringBackOurGirls キャンペーンを引き起こした。

非営利の国際人権組織「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、ナイジェリアではボコ・ハラムによって910以上の学校が破壊され、600人の教師が殺害され、数千人が避難を余儀なくされた。

国際社会ができること

すべての子どもたちには「教育を受ける権利」が与えられている。しかしこれは、学校が勉強するのに安全な場所であってはじめて保証されること。米国の子どもたちが自分たちの学校を安全な場所にしようと立ち上がる動きに世界が注目かつ応援しているあいだにも、紛争地や不安定な地域では7,500万人もの子どもたちの教育環境が破壊されているのだ。

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© Pixabay

国連は、「学校に対する攻撃」は武力紛争が子どもに影響を与える6つの深刻な暴力形態の一つと位置づけたものの、紛争地における教育、特に女子教育を保護する上ですべきことはまだたくさんある。

危機的状況において、教育が優先課題と見なされないことも大きい。教育を受けられなくなったとて直ちに人々の生命が脅かされるわけではないため、他の課題より後回しにされるのだ。長期的な危機状況における優先事項のズレ、時に「人道支援と開発支援のギャップ」と言われるものだ。教育は社会において重要であるにもかかわらず、危機的状況においては真っ先に「供給停止」されやすい。

世界的な人道支援において、教育分野は2パーセントにも満たない。紛争国の多くは、教育よりも軍事費に多くの予算を割いている。

多くの活動や資金はあっても、政府機関とNGO間の協調を強化し、効率的に対応していく必要がある。援助予算を削減している国々では、これがますます難しいこととなっている。

また、直接的な影響を受けない国々には、この問題(紛争国の教育課題)に向き合う政治的意思が欠けている。

例えば、オーストラリア政府は武力紛争下における学校と教育を保護するための明確な指針と報告体制を定めた国際公約「学校保護宣言(Safe Schools Declaration)」に署名していない。この宣言には、学校や大学を軍事目的で使用しないこと、学校に対する攻撃について監視・報告する対策を支援することも含まれている。

教育を受けることは「権利」であって、平時における贅沢品などではない。紛争から抜け出し、真に安定した社会を築くには、教育は将来への必要な投資であり、国際社会はこれを守る共同責任を負っている。

By Shireen Daft
Courtesy of The Conversation / INSP.ngo

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