富士山の噴火に注目が集まっている。前回の宝永噴火(1707年)から300年ほどが経過し、次の噴火が迫っているようだ。すでに2004年に内閣府は富士山の噴火シミュレーションを公表している。宝永噴火は16日間続き、火山灰が静岡県の御殿場付近で1・2m、横浜付近で10㎝、東京の新宿付近では1・3㎝積もったという。





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原発と火山問題、いよいよ審議へ
降灰と停電で、冷却継続は無理

もし同規模の噴火が今起これば、その影響は深刻だ。新幹線を含めて鉄道や道路は通行不能、他のライフラインも寸断、家屋の倒壊など激甚災害が発生し、被害総額は2兆5000億円に達するといわれる。

報道によれば、交通では降灰量が10㎝に達すれば通行不能となる。降雨時には3㎝でも通行不能になる。電力についても、降雨時に送電線施設に3㎜も積もれば停電が発生する。降灰とはいえ、あなどれない。

では、静岡県にある浜岡原発は富士山の噴火でどうなるのだろうか? 同原発は1、2号機は廃炉作業中、3、4号機が適合性審査の最中で、15年6月の申請以来、地震と耐震問題が集中的に審査されているが、いまだ結論が出ていない。東海・東南海地震がいつ起きてもおかしくない状況なので当然のことでもある。

他方、申請書では火山灰降下量は10㎝として、安全設備になんら影響を与えないとしているが、それで大丈夫だろうか?

宝永の噴火では東の方角に噴煙が流れたが、仮に西の方向に流れれば、浜岡原発に30㎝ほど積もる可能性がある。10㎝でも停電は起き、非常用のディーゼル発電機で原発の冷却を続けなければならない。この継続には定期的に発電機に送る空気のフィルターを交換する必要がある。車も動けない状況で、大きなフィルターを人間が運んで交換することは可能だろうか? ましてや降雨時あるいは30㎝も積もれば難しいと考えざるをえない。火山問題は今後審査されることになるが、厳格な審査が欠かせない。

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川内原発は火砕流到達の恐れ
東海第二原発は降灰50㎝に!?

 火山噴火に対しては、過小評価と甘い審査が行われてきた。

 鹿児島県の川内原発では、付近の姶良カルデラが噴火した場合に火砕流が到達する可能性がある。そのことを九州電力は渋々と認めたが、火山の継続的な観測により、マグマによる山体の膨張が一定程度に達したら原発を止めてメルトダウンを避けると主張し、許可を得た。仮に原発を停止できたとしても、冷却不能状態になるのだから、炉心に燃料があればメルトダウンは避けられない。

 愛媛県の伊方原発については、四国電力は当初10㎝の火山灰降下量があるとしていた。加えて、広島高裁が17年12月に「原発から130㎞離れている阿蘇山の破局的噴火により火砕流が到達する恐れがあり、それへの備えができていない」とし、9ヵ月間の運転差し止めの仮処分を決定。しかし、この決定は、運転期間中に破局的噴火が起こる可能性は極めて小さいという理由で覆ってしまった。しかし、裁判所が火山問題を取り上げたことには意義があった。

 関西電力は福井県の大飯原発の再稼働に際して、鳥取県の大山火山の火山灰降下量を10㎝と評価して許可を得たが、その後、原子力規制委員会は、京都市の中心部から20㎞ほど北西の方向にある越畑で25㎝の降下量が観測されたとして関電に再評価を指示した。これに対して関電はシミュレーションによる計算結果として、高浜原発で21・9㎝、大飯原発で19・3㎝とする報告を行った。実測値に仮定を置いた計算で対抗したのだ。規制委は25㎝は極めて確実な降下量と判断していることから、審議の行方が注目される。

 さらに、降下量が大きいと評価されているのが茨城県の東海第二原発だ。日本原電は赤城山噴火時の降下量を当初20㎝で評価していたが、付近のJR東海駅で40㎝の降下量が観測されていることから、再評価で50㎝とした。人手によるフィルターの交換により、安全を確保できるとして規制委もこれを追認しているが、とても可能とは考えられない。

 火山の専門家が認めるように、噴火の予測は困難である。再稼働を進める事業者には自然災害への敬虔な姿勢が見られない。

(伴 英幸)



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(2019年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 358号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/








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