ビッグイシュー基金・ビッグイシュー日本では、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、教育機関や各種団体などに出張して授業をしてきましたが、コロナ禍を受けて出張講義の依頼は激減。代わりに、オンラインでの講義依頼をいただくようになりました。今回は、神戸学院大学からのご依頼により「社会貢献実習Ⅰ」の授業として、ビッグイシュー基金の川上がWeb会議ツール「Zoom」を使って講義した様子をレポートします。

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ホームレスの人は「やる気がない」?

はじめに、スタッフの川上は学生たちに「ホームレスのイメージはどんなものですか?」と画面ごしに問いかけ、学生の皆さんにチャットに投稿してもらいました。投稿の中には「汚い」「借金をしている」「やる気がない」といったネガティブな意見が目立ちます。「ホームレス状態になったのは、当人の問題だ」と認識している学生がほとんどでした。

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「ホームレス状態になるのは個人の責任、と思われがちですが、中には災害に遭って家を失ってしまったり、両親の介護で仕事を辞めなくてはいけなかったり、本人の努力とは関係なくホームレスになってしまった人も少なくありません。また、ネットカフェや友人の家などかろうじて寝る場所はあるものの、いつ路上生活を余儀無くされるか分からない『ホームレスになるリスクの高い人』もたくさんいるのです。」と川上は画面でスライドを共有しながら話します。

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また、コロナ禍が学生の皆さんにどう影響したかについて問いかけると、「父親はテレワークをしており、家計には特に影響がない」「ニュースでは失業者が増えたとあったが、日々の生活で実感することはない」と、「特に影響がない」と回答する学生が目立ちます。

しかし現実には、世界中に猛威をふるっている新型コロナウイルスの影響で、アメリカでは国民の10人に1人にあたる3000万人以上が失業保険を申請する事態。日本国内でも非正規雇用者・日雇い労働者をはじめ、2万5千人以上が職を失ったと報道されています。会社に用意された寮に入って働いていた非正規雇用者の解雇は、ただちに住む場所を失うことを意味します。また、ネットカフェで生活していた人たちはもともと都内だけでも4000人いるとされてきましたが、政府の休業要請の影響でネットカフェが閉鎖され、多くの人が行き場を失いました。さらに、生活困窮者を対象にした炊き出しも、感染拡大防止のため実施が難しくなっています。

参考:ネットカフェ休業により路頭に迷う人々 - 稲葉剛|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

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現時点で大学に通い続けることができている仲間に囲まれていると気づきづらいのですが、改めてコロナ禍が与えた影響にクローズアップすると、学生の皆さんも驚いた様子でした。

何度でもやり直せる社会を作るために

世間には「ホームレスになったのは自己責任だから助ける必要がない」という意見も多数ありますが、自己責任といって切り捨てていると、格差が広がります。行き過ぎた格差社会では、街の治安の悪化、健康問題などの増大など、どのレイヤーの人にも悪影響を及ぼす恐れがあります。(リチャード・ウィルキンソン著『格差社会の衝撃―不健康な格差社会を健康にする法』より)

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そのうえで川上は、コロナ禍に苦しむ生活困窮者の方々のために活動するNPOの活動についてビデオを用いて説明。彼らは、夜に駅や路上などで寝ているホームレスの人々に声かけを行う「夜回り」という活動を行い、住居や仕事提供のサポートを行っています。

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「社会で一番苦しんでいる生活困窮者を救うことで、社会全体が良くなってほしい」そんな思いで活動される方々の存在を知り、授業後には「私たちにも何かできることはないか」と声を上げる学生の姿も見られました。

「ホームレス状態の人たちへの関わりは、募金や寄付、ボランティアだけではありません。ビッグイシューに関していうと、ビッグイシューを購入していただくことはもちろん、ビッグイシューの認知度を上げるためにSNSをフォローしたり、拡散したりといった行動も大きなサポートになります。」と川上は答えました。まずは、ホームレス状態の方々や国内にもたくさんいることや、そういった方々のサポートを行う団体の存在を知ることからすべては始まります。

授業後、講義を企画された諏訪清二先生にお話を伺いしました。

ーー今回、このような講義を企画された経緯をおうかがいできますか?

“今回の企画の最大の目的は、学生たちに『貧困は個人の責任ではなく、社会が生み出すものだ』という事実を知ってもらうことです。貧困に苦しむ方々がどのような生活を強いられているのかという「現場」を知ることで、当事者意識を持ち貧困問題を自分事として考えて欲しいと考えました。”

ーー講義を受けた後の感想をお伺いできればと思います。

“想像以上に、貧困やホームレス問題について知らない学生が多いことに驚きました。日本では、福祉、差別、人権などさまざまな教育はあるものの、貧困と向き合い、原因を考え、そこから抜け出す方法、支援の在り方などをきちんと取り上げている教育は少ないと感じます。社会の一員として生きていく中で、貧困問題を知ることは非常に大切なことだと思うので、もっとたくさんの学生たちに学ぶ機会を提供しなければいけない、と思いました。

また、私自身は今回の講義を通して、強者が経済を回す弱肉強食の社会ではなく、誰もが職につけ、誰もが働けば貧困に陥らない社会、それでも事情があって働けない人を丸ごと支援できる社会作りが必要だとも感じましたね。”

取材・文:佐原有紀

格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校やそのほかの団体に向け、格差・貧困・社会的排除に関する出張講義を行っています。また、コロナウイルス過を受けて現在はオンライン講義の依頼も増加中です。




オンラインで社会課題の講義をするメリットは?

対面の授業では一人ひとりの意見を吸い上げるということが難しいこともありますが、オンラインだと可視化しやすい面もあり、ビッグイシューの講義では意識してチャットでも意見を募るようにしています。学生の方々からは「オンラインの方が、移動の必要もなく、参加しやすい」「意見や質問がしやすい」という点も挙げられています。

この時期、家にこもっていると「コロナ禍の影響」や「貧困」についてリアリティを感じにくくなっています。困っている当事者に代わって支援や共感の必要性について話す機会として、ぜひご検討ください。

シリーズでの講義やワークショップ、テーマに合わせて講義内容のアレンジも可能ですので、ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/ 

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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。