北海道寿都(すっつ)町で文献調査/核のごみ処分地に!? 住民投票も実施予定

「高レベル放射性廃棄物問題から考える脱原発」と題するシンポジウムが、9月29日に北海道旭川市で開催され、筆者も参加した。日本弁護士連合会主催の第64回人権擁護大会での企画だ。

処分地選定に応募して2年経過
しかし、知事は反対

 第1部は「脱原発、2050年カーボンニュートラルに向けての課題」で、基調報告を行なった大野輝之さん(公益財団法人自然エネルギー財団常務理事)は、気候変動対策を進める上で脱原発が必要だと主張した。

 第2部は「高レベル放射性廃棄物処分はどうあるべきか」。まず小野有五先生(北海道大学名誉教授)と筆者が現在の処分政策に反対して長期貯蔵への政策転換を訴えた。その後、「処分のあり方についての合意形成はどうあるべきか」で、北海道寿都町の視察報告や三木信香さん(子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会)から、町の現状の報告。そして、テーマに沿って寺本剛さん(中央大学理工学部教授)と寿楽浩太さん(東京電機大学工学部人間科学系列教授)によるパネルディスカッションが開催された。

 第3部は「持続可能な地域社会に向けて」と題して、北海道・ニセコ町、興部町、鳥取県・智頭町、島根県のNPOなどから自立に向けた町の取り組みなどの紹介や意見交換が行われた。

 寿都町長が2020年10月9日に高レベル放射性廃棄物(以下、HLW)の処分地選定のプロセスに応募してから2年が経過している。この問題は本誌394号で取り上げた。同地では文献調査が進んでいる(図参照)。文献調査が終了し、当該自治体と知事の了解が得られれば、さらに概要調査へと進む。しかし、高レベル放射性廃棄物を受け入れ難いとする道条例が制定されており、知事は調査に反対の姿勢だ。
図

根強い批判で住民投票実施に
話し合える場つくった「町民の会」

 調査を進めているのは、原子力発電環境整備機構(NUMO)という認可法人だ。00年に設立された同機構の業務は、HLWの処分地の選定と処分場の建設と実施、必要な資金の徴収などである。02年から全国の自治体に対して処分地の候補地を公募、07年に高知県東洋町長が応募したが、独断だったためリコール運動が起き、出直し選挙で当選した新町長が応募を取り下げた。

 公募開始から18年目にしてようやく現れたのが寿都町だ。しかし、地元では反対運動が続いており、独断で応募した片岡春雄町長に対する批判は根強い。その結果、文献調査の次の段階に進む前に住民投票を実施する条例が作られた。しかし、住民が求めた住民投票は町長によって内容が変更され、投票率が50%に達しない場合には無効(開票も実施しない)という厳しいものとなった。実施時期などに問題は残っているが、住民の意思を示す機会ではある。

 NUMOは対話の場を設置して「住民の理解」を図った。本来は住民が主体的に運営するべき対話の場だが、町長がメンバー20人を独断で選び、運営をNUMOに事実上丸投げしたため、うち6人が参加を取りやめている。これまで11回開催された会議の内実は対話とはとても言えない内容で、毎回NUMOからの地層処分説明会に終始している。そこで「町民の会」はこれとは別に、なんでも自由に話し合える場をつくった。また、講演会などを主催して町長やNUMOに対抗している。

 三木さんは、「町長が仕掛ける分断を超えて、反対運動に取り組んでいる町民に関心を寄せて支えてほしい。また、国民のお金を使うことなので、核ごみの問題は全国民の問題であり、みなさんで考えてほしい」と訴えた。

(伴 英幸)

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(2022年11月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 442号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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