静岡市のフェアトレードショップTeebomが目指すのは、つくる人も買う人もフェアでいられる関係と仕組みづくり

フェアトレードを理念に、開発途上国の生産者と信頼関係を築き、真摯にものづくりをする人たちがいる。静岡県にあるフェアトレードショップTeebom・代表のイマイ ナホコさんもその一人だ。
商品の半分以上は、オリジナルで開発したフェアトレード商品だというイマイさんに、お店の設立の背景や大切にしていることを伺った。


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売る人によって、適切な対価で買ってもらえないことがある⁉

「人のためになる仕事」「環境に負荷をかけない」を重視し、新卒で情報通信系の企業に就職したイマイさん。当時にしては珍しく、性別や年齢にかかわらず仕事を任せてくれる会社で、開発途上国の回線敷設プロジェクトにチャレンジする日々。そんななか、途上国で暮らす人々の生活に関心を高めていき、会社を休職、青年海外協力隊としてスリランカへと渡った。

「共に活動した村の人々は、ほとんどが土地を持たない農家カーストの小作人でした。彼らは、作った農作物の対価としてお米やココナッツなどを現物支給されることはあっても、現金を支給されることはほとんどない状況だったんです。
スリランカの教育費は無料ですが、彼らの子どもたちが通学するための制服や文房具を買うお金がない。村の家を一軒ずつ回ってお話を聞いても、やはり『現金が必要だ』と。そうした状況を目の当たりにして、現金収入を得られるような仕組みをつくる活動が始まりました。」

イマイさんは布の端切れを使ったパッチワークの商品を考案。村の女性たちが商品を製作できるよう、パッチワーク教室も行った。商品が出来上がると、街の人や商店へ一緒に売りに出かけていった。

青年海外協力隊の任期を終え元の会社に復職すると、偶然スリランカの駐在員として勤務が決まった。再びスリランカに滞在することになったイマイさんは、問題の根深さを知ることになる。

「かつては私も一緒に売りに出かけて、村の女性たちに取引の方法をお伝えしていました。でも、私がいなくなったあとは、村の女性たちが一生懸命つくった商品を売っていても、英語が話せないことや、着ているもので判断されて、まともなお金を払ってもらえず搾取されてしまう状況になっていたんです。」

かつて活動を共にした現地の女性への差別の現状を知り、自身で商品を買い取った。生産者が懸命につくった商品をなんとかして売りたい一心だったが、事態は改善しなかった。

「私としては、プロジェクトがうまくいかなかったことよりも、そうした差別がある状況に納得がいかなくて。彼らは『田舎者だし、英語話せないし、しょうがないよ』って諦めてしまっていたんですが、それに対して私は違和感があったんです。
同じ人間なのに、商品をちゃんと評価せず、売りにきた人が自分より弱い立場にあることを利用した取引が行われている。そういうのがすごく嫌で、”フェアじゃないな”と思っていましたね。」

性別や年齢で差別しない会社で勤めていただけに、ギャップを強く感じたのかもしれない。思えば、母親がかなりボーダーレスに自分を育ててくれたことも、違和感に敏感になった要因のひとつかも…という。
少女時代から活発だったイマイさんについて、当時の教師が「男の子だったらよかったのにね」と言うのを聞いた母は、「やろうと思ったことはできる時代なんだから、そんなこと言わなくてもいいのに」とイマイさんに寄り添ってくれるような母親だったそう。

もともとアンフェアを嫌い、「フェアに生きたい」と思っていたイマイさんは、その後ミャンマーやタイ、インドなどにも滞在する中でフェアトレードという考え方と出会い、次第に「もっと直接、関わらなくていいのか?」と感じるようになる。
そして勤めていた会社を退職し、オーストラリアの大学院へ留学。ソーシャルビジネスやフェアトレードの仕組みや考え方を頭に叩き込んだ。

「2年間学んで、想いのある生産者や生産国の人とつながって、自分に関わってくれる人と、商品を購入してくれる人たちの橋渡しができるといいなと思い、店舗を持つという選択をしました。」

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現地の人々のスキルを活かせる、買う人も長く使える商品をつくりたい

こうしてイマイさんがフェアトレードショップTeebomを開業したのは、2010年7月のこと。こだわって丁寧に作られた商品を取り扱う上で、大切にしていることを聞いてみた。

「1番大事にしているのは、現地の人たちのスキルを充分に活かしたものをつくること。例えば、お店では今、ペルーのアルパカの毛糸を使った商品を売り出しているんですが、アルパカと暮らす現地の人たちが1番素材の扱い方をわかっているので、その技術を使ったものができる。長く飽きずに使ってもらえるものを扱いたいですし、1度取り扱った商品は、長く取引をしたいので、生産者から商品を買うまではすごく慎重になります。
生産国のコーディネーターの方に、日本のものづくりの考え方や、私がどうしてこだわるのかを理解してもらえるように説明することもあります。一方的にこちらがオーダーした商品をつくってもらうだけではなくて、なぜこの商品が求められているのか、お互いに考えることが大切だと思います。」

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適切な対価と評価をもらえることを大事にしたい

Teebomでは、雑誌『ビッグイシュー日本版』も販売している。

「ビッグイシューは、東京で仕事をしていた時に販売者さんを見かけると購入していました
お店をはじめてから、静岡県内のフェアトレードショップが集まるイベントを毎年やっているんですが、そこに参加している「zakka+fairtrade 晴天」さんに、ビッグイシューをお店で取り扱っていると聞きました。ちょうど同じタイミングで、講師を担当している大学の教授からも『イマイさんのお店で、ビッグイシューを扱わないの?』と言われたことがあって、それをきっかけにビッグイシューのショップ販売を調べてみたんです」

「フェアトレードの考え方や商品を支持してくださる方と、ビッグイシューを購入する方って、近い感覚を持っていると思うんですね。お店のお客さんにビッグイシューのお話をすると、実は知ってる方が多かったり。毎号9冊仕入れていますが、ほぼ完売しています。内容によっては、追加で発注することもあります。」

フェアトレードや環境問題など、ビッグイシューの取り扱う内容が、お店のお客さんや、地域の皆さんの関心が高い部分と重なるのではと、イマイさんは語る。

「誰かを陥れるとか、誰かが中心というわけではなくて、そこにいる皆さんがフェアで、利益があれば適切に分配したいと思っています。たくさんのお金をもらう必要はなくて、適切な対価をいただいて、しっかりと内容を評価してほしい。そこに正直に仕事をしていることを、自分自身大事にしていますし、そこを評価してくれる方がお店に来てくれているのかなと思います。」

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最後に、ビッグイシューの委託販売を検討している人へ、一言。

「『売れ残ったらどうしよう』と、不安に感じている方もいると思いますが、まず自分の関心があることが基本だと思います。安売りがウリの店でビッグイシューは売れないでしょうが、“正しい場所”で扱うなら売れるのではないでしょうか。」

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フェアトレードショップTeebom

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住所 静岡県静岡市葵区駿府町1−50
電話番号 (054)−254−7117
営業時間 10〜19
定休日 火曜日
オンラインショップ
https://fairtrade-teebom.com/shop/


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