*1 Global warming and heat extremes to enhance inflationary pressures
4人に1人が「一日中食べ物がない」。ガーナの農村地区での調査
これらは、国民所得の高低を問わず世界各国で見られる傾向であるが、最も深刻なのは、気候変動にさしたる影響を与えていなさそうな「グローバル・サウス(南半球の発展途上国)」、とりわけアフリカ諸国だろう。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、西アフリカを気候変動の「ホットスポット」と呼び、極端な気温上昇と降水量の減少を予測している。その西アフリカに位置するガーナ共和国は、人口の半数以上が農業で生計を立てているため、気候変動の影響を受けやすい国の一つだ。
ガーナ北部にある農村地区ミオンで約400人に聞き取り調査*2を実施したところ、全員が「過去一年に食料不安を経験」し、ほぼ全員が「気候変動がその原因の一端である」と述べた。「中程度から重度の食料不安」にある人が62%、「深刻な食料不安(一日中食べ物がない状態)」を経験したことのある人が26%で、ガーナ全体の平均(それぞれ39%と6%)よりもはるかに高く、西アフリカの最貧国(トーゴ、ブルキナファソ、ベナンなど)と肩を並べるレベルだった。さらに同じ調査を、隣国ブルキナファソからガーナ北東部にたどりついた難民たちを対象に実施したところ、食料不安の経験者は100%に達した。この地域は決して突然の飢饉や災害に襲われたわけではない。このような状況が、気候変動の影響下では「通常の現象」なのだ。
気候変動による食料価格の上昇には、二つの問題が絡み合っている。
1つ目は、気候変動がもたらす気温上昇によって、長年の間に確立された収穫シーズンが変化し、生産が難しくなっていることが挙げられる。害虫や疾病の発生によって家畜や食料の備蓄が減り、ガタガタの未舗装道路がさらに通りづらくなるなどの影響が実際に出ている。これらの要因が食料価格を押し上げ、各家庭の購買力を低下させ、食料を安定確保できない状況を悪化させているのだ。
2つ目は、インフレそのものの進行だ。年3%で食料価格が上昇すれば、必要なものの購入がますます難しくなり、購入する食料の品質を下げるだけでなく、地域特有の食文化を廃れさせ、健康問題を引き起こしやすくなる。栄養不良は、世界のどこにおいても免疫不全の主原因である。
Photo courtesy of Marcela Laskoski
ガーナでの調査からは、気候変動について意識が高い人ほど、食料を確保できている状況も見えてきた。ほとんどの人が学校教育を受けていない地域だが、そういう人たちは農業など、より直に気候変動の影響ーー気温の変化、予測しがたい気象状況ーーを受けやすい仕事に従事することが多いため、事態を認識し、積極的に緩和策を取っているようだ。気候変動についての教育促進により、より適応能力を身につけられるといえよう。
社会的に弱い立場にある人々を飢餓状態に追い詰める
気候変動は、社会的に弱い立場にある人々が飢餓状態に陥るリスクを増幅させる。COP28(2023年11月30日〜12月13日ドバイで開催された)でも、気候対策に食料供給システムの改善を組み込み、気候変動の影響下でも十分な食料確保を目指すとの宣言に、134カ国が署名した。気候変動がもたらす世界経済への影響を低減させるには、温室効果ガスの排出削減を一刻も早く進めなければならないし、農業が食料・収入の両面で主軸となっているコミュニティを守るには経済の多様化も必要だ。食料価格の上昇や食料不足によって貧困状態に陥りやすい人々を経済面・栄養面で守るため、政府の介入が必要なのは言うまでもない。
By Jessica Boxall and Michael Head
Courtesy of The Conversation / INSP.ngo
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