(2012年6月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 193号より)
障害者を切り捨てないで!賠償請求の学習会、いわき市で開催
福島第一原発事故に伴う、障害者による被害の賠償請求について理解を深める学習会が5月29日、いわき市で開催された。日本障害フォーラム(JDF)、日弁連、福島県弁護士会の主催だ。
現在、東電に対して障害者が自力で賠償請求手続きを進め、適切な賠償を得ようとすると、多大な困難を伴う。
第一に、障害者が理解しやすい情報や資料が圧倒的に不足しているため、障害者が資料不足や手続きの困難さに直面せざるを得ない。その時点で、賠償請求をあきらめてしまう可能性がある。
この問題について、筆者は東電広報部に取材したが、その回答は「現時点で視覚障害者のための点字の賠償請求書類はなく、手話通訳などの対応も行っていない。フリーダイヤルでご連絡いただければ個別に対応する」だった。しかし、聴覚障害者向けのファクス番号はなく、障害者団体が資料の点訳などの対応をしているのが現状だ。
第二に、原発事故に伴い、障害のある人が障害者特有の被害を生じた場合でも、速やかに適切な賠償を受けられない恐れがある。日弁連によると、JDFとともに障害者の原発事故被害の実態を調べたところ、障害者の損害が健常者よりも格段に大きく複雑だったという。
健常者の賠償問題は取り上げられても、障害者の被害実態は十分に把握されず、適切に賠償されない可能性が高い。このため日弁連は4月、政府と東電に対して、原発事故で被害を受けた障害者に対して特別な配慮を行うよう会長声明を出した。
この日の学習会では、槙裕康、青木佳史両弁護士が最新情報を交えながら、具体的な手続きや賠償の内容などを説明。参加者にはふりがなをふった印刷資料が配布され、手話通訳や要約筆記なども行われた。
参加者からは「私たちのような聴覚障害者の中には、正確な情報が得られず、放射能のこともわからずに外出した人もいる。精神的な苦痛に対する賠償はされるのか?」「夫も私も障害者で、避難したくてもできない。そういう人への賠償はどうなるのか?」など切実な訴えと質問が続いた。
複雑な手続き、わかりにくい資料。最終的に賠償請求をあきらめてしまう状況へと障害者を追い詰める現状。障害者を切り捨てる賠償手続の問題は、早急に解決しなければならない。
(文と写真 藍原寛子)