(2012年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第186号より)
「2・11さようなら原発1000万人アクション全国一斉行動in東京」が代々木公園で開催され、約1万2千人が参加して会を盛り上げた。
オープニングはthe JUMPSの力強いミュージック。呼びかけ人の大江健三郎さんは「原発を止めることは人間の倫理だ」と訴えた。「役所の人は福島の人の心をわからない」と澤地久枝さん。福島の永山信義さんは「福島を返せ、故郷を返せ、あのささやかな日常を返してほしい」と切実だ。「『本当のこと』が見えている私たちの底力を出そう」とみんなを勇気づけた俳優の山本太郎さん。その他何人も発言し、ドイツ連邦議員のドロテー・メンツナーさんも駆けつけてくれた。
昨年9月に続く2回目の集まり。集会後には、渋谷や新宿に向けてパレード。同アクションは1000万人署名を集めている。まだ道半ばでも、今年の7月まで、もうひとがんばりしたい。オンライン署名も行っている。また、この3月11日には福島県郡山市で大きな集まりを企画している。
1年が経過するのに、穏やかならぬ報道が続いている。福島や宮城で、暖をとる薪ストーブの灰から高い放射能汚染が検出された。宮城の最高値は灰1キロあたりに約6万ベクレルという。裏山から採ってきた薪だった。これによる被曝の量は不明だが、決して気分のよいものではない。こうした事例は今後も続くだろう。
2号機の原子炉の底の温度が上がっている。2月13日には400℃を超えて温度計は振り切れてしまった。数日前から徐々に温度が上がり始めていた。原子炉へ送る水の経路をいったん変え、元に戻したが、その後、温度が上がり始めたという。原因はわかっていない。けれども東京電力は「温度計の故障」と言い始めている。1本だけ異常、というのが理由だったが、14日には異常が拡大して、故障説に疑問が出てきた。
安心できるのはまだまだ先のことのようだ。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)