(2012年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 196号より)
「さようなら原発1000万人アクション」が呼びかけた10万人集会が7月16日、東京代々木公園で行われた。主催者の予想を超えて、17万人の人々が集まり、サッカー場、B地区などで人があふれかえった。また、公園の前の通りが1998年7月以来初の歩行者天国となったが、ここも人であふれていた。
この日、東京はピーカンの晴れ、気温33度を超える炎天下で集会は行われ、その後、3方面にわかれてパレードを行った。ステージは4つ、全国から集まった人々からさまざまな発言、そして音楽がこだました。メインステージでは、鎌田慧さん、内橋克人さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、瀬戸内寂聴さん、澤地久枝さん、坂本龍一さんらが次々と思いを語った。さらに、原発に反対している地元を中心に多くの人たちがそれぞれの経験を語った。制服向上委員会、リクルマイ、フライングダッチマン、KOTOBUKI、佐藤タイジらのライブにもみんなが酔った。
挨拶に立った鎌田さんは大飯原発再稼働を認めた野田政権を批判しつつ、脱原発を求める署名が780万人分集まっていることを報告、1000万を目標にさらに拡大することを訴えた。また、内橋さんは、現在の政府が求めている原発をめぐるパブリックコメントで原発ゼロを突きつけようと呼びかけた。
政府は、8月12日まで3つの選択肢のどれを選ぶかを国民的に問うている。ゼロシナリオは2030年までのできるだけ早い時期に原発を廃止するシナリオである。15シナリオは原発を15パーセント程度まで減らすが、その後は改めて判断しようという判断先送りシナリオで、原発の復活もあり得るシナリオだ。あと一つが20〜25シナリオで、これは原発を増設するシナリオである。ゼロシナリオ以外はトラブルで運転できないでいる六ヶ所再処理工場の運転を認め、また一度も本格稼働することなく16年以上も止まり続けている「もんじゅ」も復活するシナリオである。
今、はっきりと原発ゼロという方向性を決断することが重要だ。でないと、原発が止まらない上に、省エネルギーや再生可能エネルギーなども十分には進展していかない。
さらに内橋さんは、福島の悲劇を学ぼうとしない人を国会へ送ってはならないと、政治を大きく変えていくための問題提起を行い、高い志を掲げ続けようと締めくくった。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)