水は誰のもの?水は”私有“できない——日本と世界の水事情
モンスーン・アジアに位置する日本は降雨量も多く、水資源は一見豊かに見える。
だが、季節や地域で雨量には偏りがあり渇水にも悩まされる。
加えて、食物という名の水(バーチャルウォーター)を世界から大量に輸入することで、水の帳尻を合わせている。今、私たちができることは?
38ヶ国、30リットル以下の水で耐久生活
命の水。水なくしては1日も生きていけない。しかし、水は無限でないだけでなく、希少な資源になりつつある。
地球上には14億キロ立方メートルもの水があるが、人類が使えるのはその0・07%程度。97・5%は海水で、残りの淡水のほとんどは北極や南極などの氷として存在しているからだ。
さて、そのわずかな淡水を使っている世界の人口は、1950年から2000年の50年の間に、25億から約2・4倍の61億人に増えた。さらに2050年には、その1・5倍の92億人に増えると予測される。この100年間で4倍近くになるという計算だ。(図1)
ところが、世界の水需要は人口増のペースを大きく上回り、1900年から2000年の100年の間で10倍に増えた(図2)。そして2025年には、現在の1・4倍の水が必要だともいわれている。
果して、そんな大量の水を調達することが可能なのだろうか?特に今後も急激な人口増加が予想されるアフリカやアジアでの水不足、そこでの不完全な水処理による水汚染の頻発などが心配されている。
一方、各国の1人当たり1日の水使用量(生活用水)を見てみると、予想にたがわず先進国の水使用量が多い。カナダが801リットルと最も多く、ニュージーランドの740リットル、アメリカ589リットル、オーストラリア504リットル、と500リットル以上の国々が続く。日本は韓国やイタリアと同じレベルである。(図3)
ちなみに、人間がなんとか暮らせるという最低限の生活用水は、1人1日あたり50リットルといわれる。だが、世界にはこの50リットル以下の水も使えない国が55ヶ国もある。さらに、30リットル以下の水で耐久生活を強いられる国が38ヶ国あり、うちアフリカが26ヶ国、アジア8ヶ国である。
現在も限られた水の確保をめぐって、特にドナウ川、ナイル川など国境をまたぐ世界各地の国際河川で紛争が続いている。また、著しい経済成長下にある隣国、中国では水不足の状況がすさまじい。水問題にかかわるカナダの活動家、モード・バーロウ氏は、21世紀は水紛争の世紀になると語っている。
飽食日本は世界有数の水浪費国
次に、日本の1年間の生活用水の使用量を見てみよう。1965年には42億㎥であったが、2003年には141億㎥となり、3・4倍になった。1人あたりの1日平均使用量に換算してみると、169リットル(65年)から313リットル(03年)へと約2倍となり、一見伸びが少ないようにも見える。(図4)
だがこれは、水道水から取水される生活用水だけ。これに加えて、世界中の水が牛肉や小麦などの食べ物に姿を変えて、日本に輸入されているのだ。その水はバーチャルウォーター(間接水)と呼ばれ、その輸入量はなんと640億㎥(2000年)とはじき出されている。
1人1日当たりに換算すると、1460リットル輸入していることとなり、前出の生活用水(水道水)313リットルと合わせると、一日1773リットルの水を使っていることになる。食糧輸入とは”水輸入“であるのだ。
これらの数値を見れば、飽食日本は世界有数の水浪費国といわれても仕方がない。
<後編「雨水活用、トイレ用水への再利用、肉食を減らす…水の浪費問題の解決策とは」へ続く>
(2007年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第73号より)