(2014年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 240号より)
毒性強い廃棄物。処分地の選定前に「脱原発を」の声、7割
原発は放射能をつくりだす。一部が海や大気に日常的に放出されていることは問題だが、大部分を廃棄物として処理・処分しなければならない。
なかでも厄介なのが、原発の使用済み燃料だ。多くの国々はこれを高レベル放射性廃棄物(以下、高レベル廃棄物)とするのに対して、日本は処理してプルトニウムやウラン、その他の放射能に分ける。いまの日本では後者を高レベル廃棄物という。軽視されているが、回収したプルトニウムやウランがいっそう厄介な放射性廃棄物となることは必然だ。
高レベル廃棄物が厄介なのは、放射能の毒性が極めて長く続くからだ。いずれ環境に漏れ出ることは避けられないので、数万年の間は漏洩しない対策が考えられている。しかし、その確実性を含めて十分とは言えない。
ところで、高レベル廃棄物を処分できている国はない。日本では2000年に法律が作られて、300メートルより深い地層に処分すること、処分主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。機構は02年から処分地の公募を開始している。07年に高知県で応募があったが、住民の反対で取り下げになった。この事件を契機に国が自治体に申し入れる方式も導入されたが、未だ候補地が定まらない。
昨年、経産省審議会として発足した放射性廃棄物ワーキンググループはこのほど中間取りまとめを行った。内容は、原子力を使用した世代の責任として地層処分を進め、処分候補地の受け入れは地元住民の参画による合意のもとに決める、このためには提供される情報が客観的かつ公正であることを確認する仕組みや途中で引き返せる仕組みを整備して取りくむ。その上で、科学的に考えて有望な場所に国が処分候補地として申し入れる。一歩進んだ取りまとめになっている。
この報告案に寄せられたパブリックコメントでは約7割の人が、これ以上廃棄物をつくりださないこと(脱原発)を訴えた。政府はこの声を真摯に受け入れるべきで、このまま処分地選定を進めるべきでない。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)