「さようなら原発北海道集会」泊原発、停止から丸5年、再稼働めざす北電に市民が反対の声

福島原発事故から6年が経過した2017年3月11日に「さようなら原発北海道集会」が札幌市で開催された。650人の会場は立ち見が出るほど盛況で、人々が脱原発への強い思いを持ち続けていることを知ることができた。

避難指示解除が住民を分断、自主避難者に支援打ち切り

筆者は「深刻さ増す福島原発事故」というテーマで報告させていただいた。3月31日を区切りとして避難指示が解除される(ただし、帰還困難区域を除く)が、帰還は進まないだろう。すでに解除されている地域での帰還割合は2割に満たない。働き盛りの世代の帰還はさらに少ない。そして、戻らない人たちは自主避難者と見なされ支援が打ち切られていく。

除染はされても、なお高い放射線環境下で子どもを育てることへの不安から戻れない。実際に甲状腺がんが事故前に比べて数十倍に増えている。他の疾病も統計的に把握されていないが、増えているという話題が絶えない。6年の推移をみていると、むしろ深刻さが増していると筆者は感じている。

NHKは3月10日、テレビ番組で飯舘村の事例を取り上げ、避難解除が住民を分断していくと分析した。また、田中俊一原子力規制委員長は3月11日の訓示の中で、「原発事故の被害は時間とともに解決するというよりもむしろ問題が複雑化し、課題が増えている面もある」と述べた。

東京電力は福島事故の根本原因分析の結果をホームページに公表している。利益を上げるため運転を優先させて事故への備えを怠った。また、安全であるとの思い込みが強く、事故リスクを過小評価していたという。事故隠しなどの隠蔽体質は直接には書かれていないが、説明を回避してきたとしている。

柏崎刈羽原発の重大事故対策施設の耐震不足隠しは今年2月に明らかになった。隠蔽体質は事故後も続いている。「他社から学ばない」体質を認めている点は興味深い。おそらくどの電力会社も同様に他社の経験から学ぶことがないのだろう。だから同様の事故や事故隠しが繰り返されてきているのだ。

泊原発の下に活断層、3年半の審査で北電の主張、崩れる

北海道電力も同様だろう。北電は3基ある原発の再稼働に向けた適合性審査を13年7月8日に原子力規制委員会に申請し、審査が続いている。その中で、原発の敷地は120万年前の古い地層であると、中の石ころの年代測定をもとに主張。原発の敷地前面の海域の地形は断層によるものではなく、地滑りでできた地形としている。活断層が存在することは日本活断層学会では自明のことだが、同社は頑なに否定し続けているのだ。

集会では、「泊原発、再稼働してはいけない8つの理由」と題して、「行動する市民科学者の会・北海道」の小野有五さん(北海道大学名誉教授)が講演。小野さんは地理が専門で、自ら泊原発周辺の地質環境をくまなく調査し、石ころの年代だけでは地層の年代は測れず、原発の敷地は新しい地層であることや、海域の地形は活断層が存在していないと説明できないものであることなど、北電の主張には根拠がないことを丁寧に指摘した。

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おりしも前日に、原子力規制委員会で泊原発の審査会合が開催され、規制委員会側から北電の主張に対する根本的な疑問点が提出され、敷地前面に活断層がある強い可能性が示された。13年7月8日に北電は適合性審査を申請しているが、3年半近い審査の果てに、北電の主張が崩れた形となった。小野さんは自らの調査結果をもとに規制庁と幾度か話し合ってきたが、その主張を規制委員会が支持したといえる。

二度と原発事故を起こさせてはならないとの思いから、北海道にある泊原発の再稼働計画に対し、道内100万人署名や運転差し止めを求める裁判など、市民はさまざまな取り組みで反対の声をあげてきている。泊原発が停止してから丸5年が経過しているが、一度も電力不足に陥ったことはない。原発がなくても私たちの生活に何ら影響を与えないが、原発が事故を起こせば甚大な被害が生じる。電力会社にとっても事故を起こせば経営破綻は必至であろう。このまま再稼働せずに廃止することを切に願う。

(2017年4月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 308号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)