2025年1月25日、英国政府は保有する116.7tもの民生用プルトニウムをごみとして処分する方針を発表した。プルトニウムは核兵器の材料となる物質で、IAEAの「有意量8kg(核爆発装置1つに必要なプルトニウム量)」という換算に従えば、英国の民生用プルトニウム保有量は約1万4550発分に相当する。
(この記事は2025年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 498号からの転載です)
英国企業、MOX燃料の利用拒否
日本が委託した21tは塩漬けに
英国はかつて使用済燃料からプルトニウムを分離する再処理工場を持っていたが、22年を最後に廃止された。再処理工場が運転していた時代、英国は日本を含むいくつかの国々の原子力事業者からも使用済燃料の再処理を受託していた。今日でも日本の電力会社のプルトニウムが英国で21.7t保管されている。
1960年代の英国の計画では、分離した民生用プルトニウムは高速炉と呼ばれる原発で利用する予定だった。だが高速炉の開発は94年に経済性がないとして中止されたため、大量に存在するプルトニウムはMOX燃料と呼ばれる、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料に加工して原発で使用することとなった。
MOX燃料工場は建設されたものの、英国内で多くの原発を運転しているEDFエナジー(フランスの国営電力EDFの子会社)はMOX燃料の利用をコスト高から拒否。他の顧客による再処理の委託も終了していた。最大の顧客は日本の電力会社で、英国で分離したプルトニウムはMOX燃料に加工して日本に返還してもらう予定だったのだ。しかし建設されたMOX燃料工場はトラブル続きのうえ、稼働率が低かった。
ついに英国政府は11年、東京電力福島第一原発事故を受けて、今後のMOX燃料の受注が見通せないことから工場も廃止。単体でのプルトニウム輸送は核拡散上のリスクや周辺諸国の懸念から事実上困難なため、日本の21.7tのプルトニウムは英国で塩漬けにされている。
無期限の長期保存はリスク
有償で引き取ると日本に提案
11年から英国はプルトニウムの行方について、「MOX燃料での利用」を軸に、他の選択肢として「長期保管」「ごみとして地層処分」という3つの選択肢を検討していた。だが、英国内の事業者はMOX利用を拒否しており、実質的には長期保管かごみとして処分するしかない状況だった。
今年1月25日の英国政府の発表によれば、「無期限の長期貯蔵を続けることは、将来世代に安全保障上のリスクや核拡散上のぜい弱性という重荷を残すことになる」として、プルトニウムを単体で分離できない固定化処理を行ったうえで地層処分する方針を決定。今後、英原子力廃止措置機関(NDA)が10年以内に固定化施設を建設するという。
日本は海外保管分も含めて44.5t(23年末)ものプルトニウムを保有しており、国際的に懸念されている。そこで英国政府は12年、日本に対してプルトニウムを有償で引き取ると提案、18年から経産省と英国当局が協議を行っている。英国保管分21.7tを一緒に処分してもらえれば、日本の保有プルトニウムのうち半分を減らすことができる。英国への譲渡が最も合理的な選択肢だと言えよう。

https://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/fms/pu_202406?doing_wp_cron=1738720539.3432960510253906250000
ところで、英国の再処理工場は現在廃止措置中だが、昨年の見積もりでは廃止措置完了は2125年、費用は1360億ポンド(26兆円)を要するという。施設からは放射性物質を含む廃液が漏れ出ていることが確認されており、ヨーロッパで最も有毒な核施設とも称されている。一方、青森県で建設中の六ヶ所再処理工場は26年度に竣工予定だが、運転を開始すれば通常運転時も大量の放射性物質を海や大気に放出する。事故が起これば、なおのこと危険だ。
英国は長年悪あがきした結果、とうとうプルトニウムは資源ではなく、ごみだと認めるに至った。日本でも改めてプルトニウムの経済性を評価しなおすべきだ。(松久保 肇)
まつくぼ・はじめ
1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。
金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。共著に『検証 福島第一原発事故』(七つ森書館)、『原発災害・避難年表』(すいれん舎)など https://cnic.jp/