人糞の肥料化を目指す!コンポストトイレ普及を進める社会的企業ゴルデイマー

ターニャ・ウェンテはトイレについて、堂々と、熱く語る。それが彼女の仕事なのだ。ウェンテが所属するハンブルク拠点の非営利団体ゴルデイマー(Goldeimer)では、独自のコンポストトイレ(水を使わない乾式トイレ)を開発した。世界の貧困地域における極めて不衛生な環境、飲料水の不足、枯渇しつつあるリンの供給など、さまざまな問題を解決できる可能性を秘めている。

ゴルデイマーでは2014年より、安全かつ衛生的なトイレを利用できる環境を広める活動を進め、世界各地のプロジェクトへの支援および寄付も行っている。ウェンテがボランティアコーディネートを担当するようになって5年になる。15人編成のチームで、自分たちで開発したコンポストトイレを大規模イベント会場などで提供している。活動を支えるボランティアたちの力は実に大きい。

EUから資金提供を受け、コンポストトイレから回収した排泄物を、自社のリサイクル工場で肥料にリサイクルしている。既存のトイレと並行して、代替可能で持続可能なトイレインフラを構築するため、人間の排泄物を肥料として使用することの合法化を目指している。すでに個人向けに、農園用の乾式トイレなどが購入できる。ドイツ・ニュルンベルクのストリート誌『シュトラーセン・クロイツァー(Strassenkreuzer)』によるインタビュー記事を紹介しよう。
https://goldeimer.de/?srsltid=AfmBOoo4mkOoTpCKmZOO0RCFKBMwAd154VApGa1oBuJReB3at69-lWje

Q
乾式トイレとはどのようなものですか?
A

ターニャ・ウェンテ:ドイツの高齢者なら乾式トイレになじみがあり、昔、屋外に置かれていた臭いのきついトイレを思い出す人もいるかもしれません。コンポストトイレは決して新しい発明品ではありませんが、昔の屋外トイレとも違います。私たちは排泄物をリサイクルすることも含めて、乾式トイレをあらためて魅力的なものにしようとしています。昔は、排泄物を畑の肥料として使うことは当然のことでした。そんな慣例を再び復活させたいのです。

Q
乾式トイレと従来の屋外トイレの違いとは?
A

昔の屋外トイレは基本的に乾式でしたが、私たちのコンポストトイレでは、トイレとコンテナ式の排泄物処理とを分離させています。そうすることで、尿と大便を別々の容器に回収し、その容器を交換・回収できるのです。便座の下に汲み取り穴がなく、バケツやイベント用の仮設トイレで見かけるような大型の容器を置きます。大便はバケツに回収し、尿は別に取り分けます。水で流す代わりに、おがくず、干し草、砂などを振りかけることで、臭いを抑えることができます。コンテナが満杯になると回収し、新しいものと交換します。水は必要ありません。衛生インフラがないイベント会場などで大好評です。

Photos by Maria Bayer
Q
イベント会場では大量の排泄物が発生しますよね。
A

私たちは、コンテナの中身(排泄物、おがくず、トイレットペーパーなど)をハンブルク南部にある当社のリサイクル工場に搬送します。ドイツ国内では2番目にできた施設です。そこで2段階の堆肥化工程によって肥料にします。そうして出来上がるのは栄養をたっぷり含んだ濃い黒色の土で、元の排泄物の臭いや見た目はをまったく感じさせません。
尿は、イベント会場からポンプで直接排出して処分しています。尿は栄養密度が非常に高く、リサイクルの潜在可能性は大きいのですが、現時点ではそれを利用する方法がなく、開発を進めています。私たちのリサイクル活動は、欧州の研究・イノベーションプロジェクトの一環で行われています。

Q
残留医薬品の可能性についてはいかがですか?
A

よく受ける質問です。肥料を研究室で検査したところ、残留医薬品は堆肥化の過程で分解されることがわかっています。抗生物質と鎮痛剤の濃度は、法定基準値を大幅に下回っていました。抗生物質の濃度は、豚の糞尿に含まれる量の約1,000分の1で、病原体でさえ、その網をすり抜けることはできません。堆肥化の第1段階において、微生物が有機物質を分解して消化し、これにより温度は最大70度まで上昇します。この熱が数日間維持されることで、病原体は確実に死滅するのです。

Q
人糞から作った肥料は使用可能なのですか?
A

人糞から作った肥料は非常に効果的で質も高く、実用性に優れていることは、昨年のそば粉を用いた実証試験でも証明されています。課題は、人糞を肥料として使用することがドイツ国内では認められていないことです。豚の糞尿、下水汚泥、鉱物肥料など、農地での使用が許可されている物質を規定した肥料規則にはまだ記載されていないのです。なので、乾式トイレから回収した排泄物をリサイクルした肥料は現在、試験およびパイロットプロジェクトでのみ使うことができる状況です。堆肥は大量にあるので、最悪の場合、焼却処分しなければならないでしょう。乾式トイレから回収したリサイクル肥料を使用することで、化学肥料の使用を25%削減できる可能性もあるのに……。

Q
非常にもったいない話ですね?
A

フランスは一歩先を行っていて、人間の尿を肥料として利用する動きが始まり、話題となっています。私たちは、ドイツおよびEUレベルでの肥料規制の見直しを期待しています。すでに市民、農業、イベント業界からの関心や需要はありますし、将来的にはすべての街、地区、地域に、人間の排泄物のリサイクル施設を設置したいと考えています。そうすれば、すでにコンポストトイレの利用が進んでいる市民農園や建設現場にとっても有益でしょう。現在、乾式トイレでの回収物や紙おむつのごみは、リサイクル不可能なごみとして処分されるか、家庭の堆肥置き場でリサイクルするしかありません。

Q
でも、この国ではすでに下水道システムが十分に機能していますが?
A

気候変動やその他の将来的な課題を考慮すると、下水道は持続可能ではありません。例えば、無機肥料には植物に不可欠な栄養素の1つ、リンが含まれています。リンは採掘によって手に入れられる有限の資源で、50〜100年後には枯渇すると見られています。さらに、リンの埋蔵量のうち、民主主義国家にあるのはわずか9%なので、政治的影響を強く受ける可能性があります。このような状況から脱却する必要があります。

考慮すべきはリンだけではありません。水も希少化しています。1回のトイレの水洗で6〜10リットルの飲料水が消費されています。単に排泄物を下水処理施設に運ぶためだけに。おかしな話です。私たちはこの貴重な資源を守らなければなりません。下水処理場が運転停止になるなんて考えたくもありませんから。

それに、下水処理場での水の再処理には膨大なエネルギーを消費し、自治体が使用するエネルギーの平均15〜20%を占めています。それに、水中には非常に多くの栄養素が残っているのに、ろ過してそれら栄養素を取り除くのは極めて困難です。例えばバルト海では、下水処理場が水中ての窒素を完全に除去しきれないことが原因でデッドゾーン(生物死滅海域)が発生。その影響で藻類が発生し、魚が呼吸できなくなって死んでしまうのです。

Q
長期的な目標についてはいかがですか?
A

水不足の脅威はすでに世界各地に広がっています。水洗トイレに代わる地球に優しい選択肢として「コンポストトイレ」を普及させ、持続可能な衛生環境に貢献していきたいと考えています。水洗トイレを使えるということは非常に恵まれたことなのだと再認識すべきです。
衛生環境の評価には、「衛生のはしご(sanitary ladder)」という5つの段階からなる指標が用いられます。その最上位にあたるのが「安全に管理された衛生環境」です。これは、「プライバシーが確保され、排泄物を安全に処分またはリサイクルできる機能的なトイレが自国内(あるいは自宅内)にあり、かつ手洗い設備が備わっていること」を意味します。世界人口の約半数にのぼる34億人が、こうしたトイレを利用できていません。

最下位の段階は、屋外で用を足す「野外排泄(open defecation)」と呼ばれるものです。3億5400万人もの人々が、いかなる種類のトイレも利用できない環境にあります。サハラ以南のアフリカの低所得国や農村地域、および中央・南アジアでは野外排泄が主となっています。約2,000人に対して使えるトイレが4つしかない地域もあります。安全に管理された衛生設備がない多くの場所では、小さな袋の中に尿や便をして、それを屋外に投げ捨てる「フライング・トイレット(flying toilets)」も一般的なのです。

Q
衛生設備がないことの危険性とは?
A

適切な衛生管理が不足していることによって生じる最大の危険は、致命的な下痢性疾患と地下水の汚染です。糞便が地面の上に放置されると、雨が降ったときに最終的に土壌へと浸透するか、あるいは洗い流されてしまいます。これは、病原体がろ過されることなく水の中に紛れ込み、再び人々の元へと戻ってしまうことを意味します。

また、水中や水源で用を足すこともあります。これは衛生的な選択肢に思えるかもしれませんが、人々はその水を飲料水や料理、洗濯に利用するため、尿に含まれる病原体を取り込んでしまうことになります。これらの地域では、このようにしてコレラや下痢などの病気が広がるという認識や知識自体も不足しがちです。

Q
教育活動も実施しているのですか?
A

構想の一つではありますが、現在の体制では対応することができないため、現時点では、持続可能性を重視したプロジェクトへの寄付活動や、専門的なアドバイス提供を行っています。例えば、従来の開発協力では、衛生施設の整備というとラトリン(溝や穴を利用した簡易屋外トイレ)を設置することでした。一杯になると土に埋め、新しいものを作るのですが、それでは持続可能とはいえません。私たちは、栄養素がリサイクルされる乾式トイレか、できることなら尿水分離型トイレを導入した循環型の衛生システムを支援したいと考えています。
具体的には、グアテマラで「Mosan(モサン)」というプロジェクトをサポートしています。創設者の名前にちなんだプロジェクトで、マヤのサンタ・カタリーナ・パロポ村に乾式トイレの衛生設備を立ち上げました。また、一般家庭にトイレを貸し出し、排泄物の汲み取り、回収、リサイクルを行っています。そして、開発した熱分解プラントでそれらを使用してバイオ炭を生成しています。

コンポストトイレの正しい使い方も教育しています。グアテマラでは、人口の83%が安全に管理された衛生施設を利用できておらず、排泄物の大部分が処理されないまま、アティトラン湖などに流されています。中米で最も重要な飲用水源の一つが、常に安全でなくなる危険性にさらされているのです。私も2年前に訪れましたが、下水管が湖に直結していて、茶色く濁った水が流れ込んでしまっている地域もありました。

Q
自分たちの飲み水を汚染していることに気づいていないのですか?
A

それもありますが、問題は代替手段がほぼないことです。一日に何度もトイレに行きたいのにトイレがないとなると、それ以外に方法がないのです。

Q
ドイツでも、ホームレス状態にある人たちにはなじみのある問題では?
A

健康的で尊厳のある生活を送るためにトイレは不可欠なもの。ホームレス支援においては食べ物や寝る場所に焦点が当たり、トイレの利便性は二の次になりがちです。公衆トイレが有料の場合も多いですが、ライプツィヒでは市議会によって、無料で利用できる乾式の公衆トイレの設置が進められています。
排泄は人間の基本的欲求であり、トイレを利用できることは人権です。また、ジェンダー間の平等も関係してきます。男性用より女性用トイレの方が数が少なく、女性の方が長く待たされがちなことは周知の通りですから。

Q
ニュルンベルクでは先日、この問題を解決すべく女性用の小便器を導入する試みがありましたね?
A

女性がパパっと用を足せる素晴らしい方法ですが、どうしてもプライバシーの問題がつきまといます。人から見られないよう、しっかりとした防護策が必要です。私たちのコンポストトイレなら、清潔で、安心して座って、きちんと保護された空間で用を足せます。イベント会場で利用した女性たちがボランティアスタッフに感謝してる姿をよく目にします。

Photos by Maria Bayer

ハンブルク拠点の非営利団体ゴルデイマー https://goldeimer.de/

Interview by Severine Wahl
Translated from German via Translators Without Borders
Courtesy of Strassenkreuzer / INSP.ngo

Photos by Maria Bayer

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