出産しても育児能力がないなどの理由で、医療機関に匿名で乳児を預けるシステム、「赤ちゃんポスト(Babyklappe)」の機能を疑問視する声が広がっている。
きっかけとなったのは、「ヴェルト」紙が報道したドイツ青少年研究所の調査で、過去に「赤ちゃんポスト」で保護された973人の乳児のうち5人に1人のその後の行方が明らかになっていないことが判明した。
「赤ちゃんポスト」は本来、乳児の命を守る緊急手段として設置されているが、このたびの調査で同制度が機能していない可能性が浮上した。医療倫理問題専門家のヴーペン氏は、「赤ちゃんポスト」そのものの廃止を訴えている。
シュレーダー連邦家庭相(CDU)は、制度の法的な見直しが必要としながらも、廃止は考えていないと表明。ドイツ・プロテスタント教会も「赤ちゃんポストは、不幸な状態に置かれた乳児だけでなく母親にとっても、最終救済手段の役割を果たしている」と主張している。
国内には現在、100の「赤ちゃんポスト」が設けられている。
(見市知/参照:Die Welt)
(2012年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第186号より)