「ビッグイシュー日本版」242号より、読みどころをピックアップいたします。


世界で進む水道の「民営化」と「再公営化」:水道インフラの未来はどうなる?

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今回の特集は「おいしい『水』—水道を考えた」。世界的に再評価が進む「生物浄化法」について、「古式水道」について、「水道の民営化と再公営化」についてのインタビューが掲載されています。

なかでも、特に興味深かったのが水道インフラの「民営化」と「再公営化」にまつわるインタビュー。世界の水道事情に詳しい佐久間智子さんのお話を伺っています。


水道管の耐用年数は40年と法的に定められており、戦後に作られた水道インフラが転換期を迎えています。水道インフラの更新・修繕のために、今後50年間で57兆円の予算が必要になる、という試算も出ています。

そこで議論になるのが、水道の「民営化」。日本でも議論が始まっており、先日大阪でも水道事業の民営化の方針が打ち出され、話題を呼んでいました。

大阪市が水道事業の民営化を決定、そのタイムテーブルを明らかにした。自治体全域の水道事業運営民営化は全国初のことで、「’15年度中にも民営化する」という。

現在の案では、大阪市が100%出資する民間企業へ2300億円以上で売却。民営化による事業効率化で、「現在1か月950円の基本料金から100円の値下げを実現する」としている。

大阪市が「水道事業民営化」を決定。本当にメリットがあるのか? | 日刊SPA!

こうした民営化はどのような未来を創るのでしょうか。佐久間智子さんは、民営化を進めた他の国々を事例に挙げ、興味深い指摘をしています。

89年から水道の民営化を始めた英国では、その後の10年間で水道料金が値上がりし、水質検査の合格率が85%に低下。漏水件数も増え、何百万もの人々が水道を止められた。しかもその間「株主配当」や「役員特別報酬」は十分に支払われたという。

また、二大水道メジャーと呼ばれる多国籍企業「スエズ社」「ヴェオリア社」の本拠地であるフランス・パリでは、85年から09年のあいだに水道料金が265%上昇した。

(中略)英国では、99年のブレア政権となって水道料金の引き下げが行われた。それによって経営が悪化した民間企業は、次々に外国資本に買収・合併され、水道事業が"金融ギャンブル"の投機対象となっていった。

「毎日24時間、水道事業は安全な水を出す必要があります。それがシナリオ通りにうまくいかなかった起業はぽんぽん撤退してしまう。そうした例がアフリカやアジアなど、海外でたくさん起きている。急に撤退された後の復旧は大変です」

単に民営化すればうまくいく、という話ではないわけですね。こうした流れを受けて、世界では、再び水道を公的事業にする「再公営化」が進んでいます。

フランス・パリでは、10年に水道を再び公営化。その際「Obsebatoire」という組織を設立し、市民が代表を担い、事業者のマネジャーや技術担当者が参加しながら、水道事業や水問題について議論する場をつくった。それまでは企業秘密によって不透明だった投資計画や財政報告も公開され、内部データベースにアクセスできる権限も与えられた。

その結果、45億円のコストを削減し、水道料金を8%下げることに性向。効率化を"再公営化"で実現させた。こうした動きは、過去15年間に86以上の地域で生まれているという。

その他にも、英国・ウェールズでは非営利事業団体が米国資本の水道会社を買収し、非営利というスタイルで運営しているなど、興味深い事例が紹介されています。


「水道民営化」は日本においても重要なトピックです。242号の特集を読むと、これからの水道のあり方についてたくさんのヒントをもらえるはずです。ぜひ路上にてお買い求めください!

一部オンラインでもご覧いただけます。
水道「民営化」から「再公営化」へ。パリ、市民参加で45億円のコスト削減、ウェールズ、非営利法人による運営


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THE BIG ISSUE JAPAN312号

ビッグイシューアイ「水道民営化はNG、世界の潮流はすでに"再公営化"へ」もおススメです!
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https://www.bigissue.jp/backnumber/312/








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