「東北でホームレスが増えている」—復興事業による二次・三次災害(仙台夜まわりグループ・今井誠二さんインタビュー)

仙台の路上でいま起きていること—仙台夜まわりグループ・今井理事長インタビュー

2000年から、仙台市内で路上生活者の自立支援を行っている、NPO法人仙台夜まわりグループ。昼・夜の路上生活者の安否確認のほか、炊出しや食事会・相談会などを定期的に実施している、仙台の路上生活者支援の草分け的存在です。震災以降は、多様化して増えるニーズにあわせて活動日を増やし、今もほぼ毎日、支援活動を続けています。

ビッグイシュー基金が2012年3月に発行した「被災地の路上から」では、今井誠二理事長に、「自分の地域を支えることが、被災地を支えることにもつながる」というメッセージをいただきました。震災後2年以上経過した今、仙台の路上について、再びお伺いしました。

(今井誠二さん)

仙台の路上で起きていること

いまも、新しく路上生活に陥ってしまった方々が月に10名くらいは炊き出しや夜回りなどにやって来ます。不安定居住者の不安定雇用が復興事業を支えていることに変わりはなく、期間限定の仕事が終わり、再び路上に戻ってくるケースも後を絶ちません。若い方もいます。

ホームレスになって日が浅い方とは、まず信頼関係を築くのに時間がかかります。そうした方は「自分はホームレスではない」という思いや支援団体への猜疑心を持っている場合も多いです。そうした思いが、必要な支援から彼らを遠ざけてしまうことを懸念していますが、ホームレスとなってしまった現状を自分で認めることには時間がかかります。できる範囲で支援が届くように、粛々と活動を行っています。

正直申し上げて、仙台の路上が日々刻々とドラスティックに変わっているので、私たちが把握できていないことも多いのではないかと思います。
恒久的な生活困窮者支援が後回しにいま心配しているのは、被災者や震災困難者のための支援に、様々な社会的資源が分散してしまい、恒久的に必要な生活困窮者支援が後回しになってしまっているのではないか、ということです。

ホームレス自立支援を専門的に引き受けていた仙台市健康福祉局保護課の支援係がなくなってしまい、復興局の設置などに人員がとられて、保護課の担当者も減らされてしまいました。復興事業がひとしきり終わって、県外からやってきた業者が引き上げた後に、震災が東北に残したのは、新しい道路、橋、公共施設、ホームレスだけだったというのではあまりにも悲しいです。復興支援業務がまだ始まったばかりであることも確かですが、視点を目の前の事だけではなく、恒久的な生活困窮者支援へと移していくべきだと考えています。

大規模な実態調査が必要

路上だけでは見えない、ホームレスの調査を仙台市内で復興事業開始後に各所に新たにできた飯場(※)に住む人を数えただけで 5〜600人はいるのではないかと見積もっています。その他、車上生活や、ネットカフェで生活しながら現場に出ている人たちもいます。路上にいる人たちをカウントしているだけでは、そうした不安定居住者たちの実態が掴みきれません。

※飯場=建築現場の作業労働者が宿泊し、食事と休息をとるための場所。

震災後、東北での仕事を求めて日本全国から仙台に労働者が集まりました。仕事の多くは解体・建築関連の仕事です。しかし、復興が進み、人手が大量に必要だった瓦礫撤去が済むと同時に解雇されてしまったり、劣悪な労働・居住環境に耐えられず飯場を出てきてしまい、野宿生活になるというケースが後を絶ちません。

それらは、復興事業による二次・三次災害と呼んで良いと思います。飯場生活をしていると、仕事を失ってしまった途端に生活の場もなくしてしまいます。蓄えが無ければ故郷にも帰れず、帰れたとしてもそう簡単に元の仕事には戻れません。

全国各地でどうにか包摂されていた人が、東北で路上生活になってしまうという新たな状況が震災後、次々に産み出されています。しかし新たな支援策は打ち出されないままです。

復興関連の仕事で一時的な現金収入を得たため、ネットカフェに入れたりして、今はなんとかしのぐことができている人たちが沢山います。彼らは、現在は路上にはいませんが、予備軍というか、仕事がなくなって蓄えが無くなった時点で直ちに路上生活になる可能性が高い、いわば、目に見えないグレーゾーンにいる人たちです。

彼らが路上に出てくる前に、何か手を打つことができないかと思っていますが、仙台市内外にある30を越えるネット喫茶や漫画喫茶に、一度に網をかけて実態調査することなど、私たちのような小さなNPOにはできませんし、そもそも仙台市内中心部にいるそうした予備軍の全容さえもつかめないでいます。

行政にはぜひ、ネットカフェなどに宿泊している、不安定居住状態に置かれている人たちへの大規模な実態調査をお願いしたいです。

実態がある程度把握できれば、復興事業終了後に産み出されることになる大量のホームレスに対する根本的な対応策について、今のうちに、官民協働して共に知恵を出し合うことができるはずなのです。

東北の外から、できること

物資の寄附は震災前の水準以下になりました。缶詰やレトルト食品など、すぐに食べられるものの寄付も減りましたね。

食糧支援はいつでも大歓迎です。ぜひお問い合わせください。カンパも震災前の水準を下まわっています。カンパをいただければ支援物資の重複やミスマッチも避けられますし、あればあるだけ役立てられるので、カンパのご協力もいただければ大変嬉しいです。

NPO法人 仙台夜まわりグループ

ビッグイシュー基金