異常に高かった作業員の内部被曝 [原発ウォッチ!]

Genpatsu

(2013年8月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 221号より)

異常に高かった作業員の内部被曝

7月19日の報道によれば、福島第一原発事故で放射性ヨウ素を体内に取り込んだことによる甲状腺の内部被曝が100ミリシーベルトを超えた作業員が1973人(※東電は22日に訂正して1972人とした。)に達することが、東京電力の調査でわかった。

呼吸を通してヨウ素131を少なくとも25万ベクレル取り込んだことになる。爆発当時にマスクを着用していなかったか、あるいは、全面マスクのフィルターが期待通りに機能しなかったことも考えられる。マスクを外しての作業があったのかもしれない。

一方、7月12日の東電の発表によれば、指定緊急作業での甲状腺被曝と、2016年3月までの甲状腺の累積被曝線量の合計が100ミリシーベルトを超えるとしている(取り込んだヨウ素によって将来にわたって被曝することを計算に入れた値)。

内訳は東電社員が976人、下請け作業員が996人となっている。提出された作業員の被曝線量に関するデータにWHO(世界保健機関)が疑問を投げかけたことをきっかけに、調べ直した結果わかった。

再調査前の人数は、それぞれ東電社員が2人、下請け作業員が119人だった。数値は、ヨウ素131は半減期が8日なので、半減期の長いセシウムの取り込みから推定したもので、厚生労働省の指示によるとしている。作業員の甲状腺がん発症などの健康影響が心配される。

上記のデータは甲状腺だけの被曝線量で、これに0・05をかけると全身の被曝線量(実効線量という)に換算できる。逆に、発表されている全身の被曝線量をこの係数で案分しても正確な甲状腺の被曝線量は求められない。

作業員の被曝線量は、放射線にさらされて被曝する「外部被曝」と、呼吸から体内に放射性物質を取り込んで被曝する「内部被曝」とがある。両方を合わせた総被曝線量を東京電力は発表しているが、事故直後から2013年5月末までに福島第一原発で被曝作業に従事した人は2万8279人であり、平均被曝線量は12・28ミリシーベルト、最大は678・8ミリシーベルトに達している。事故前の09年度は平均1ミリシーベルト、最大が19・5ミリシーベルトだったことを考えると、作業員は異常に高い被曝を受けている。

第一原発は廃炉へ向けて作業が行われているが、作業員の被曝を最小化する観点から、作業の見直しをするべきだ。このままいけば作業員の確保は難しく、したがって一人あたりの被曝が増える恐れがある。

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)