こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。最新号の230号より、読みどころをピックアップいたします!
吉野裕之さんと菅谷昭さんが語る「福島の子どもの健康被害」
最新号の読みどころは、7ページに及ぶ「福島の子どもたちの健康被害」にまつわる対談。福島に住み、主に子どもたちの支援に取り組む吉野裕之さんと、元医師で松本市長の菅谷昭さんがお話くださいました。
記事のなかでは、原発の影響で運動不足となり、子どもたちの健康状態が悪化していることが指摘されています。
吉野:子どもたちの日常的な運動の量や質が、脳の発達や体力、免疫力に影響してくるといわれています。学童保育の先生は、子どもたちが本当に転びやすくなった、ほとんどの子どもが、靴をはく時に片足で立って靴をはけないと話しています。
菅谷:下肢の筋力が落ちて片足で靴をはけないのは、老人に多いロコモティブシンドローム(運動器症候群)と同じですね。
吉野:保育園、幼稚園は親の送り迎えがありますが、新1年生になって徒歩通学になると、如実に出ると言っていました。転んで新品の服に穴を開けるとか、手が出ずにおでこから転ぶ子が確実に増えているそうです。
菅谷:肥満はありますか?
吉野:小中学生はほとんどの年齢が肥満です。走・跳・投などの運動能力検査でも、ほとんどの学年で全国平均よりも落ちてます。
菅谷:家にずっといると、発散する場所がないでしょう。メンタルな意味でも、大きな問題になってしまいますね。
吉野:体力・免疫力だけではなくて、外に向かっての興味・関心が下がってきていると感じています。好奇心は子ども時代の最大の宝物だと思うんですが…。
気になる甲状腺がんの検査に関しても、情報開示のあり方に問題があると、元医師で甲状腺がんに詳しい菅谷さんは指摘します。
吉野:ぜひ菅谷市長にお聞きしたいのが、子どもたちの甲状腺がんのことです。県のホームページ「福島県民健康管理調査」の結果によれば、”疑い”を含めて59例になっています。原発事故当時に18歳以下だった子どもの小児甲状腺がんが、前回8月発表時の43人からさらに増えました。事故時10歳以下が2人で、6歳、9歳。
菅谷:だけど吉野さん、それは甲状腺がんの”疑い”が入っているんですね?
吉野:”疑い”も入っています。
菅谷:でしょう。私たちサイエンスの人間から言えば、”疑い”を入れてはだめなんです。しかも、子どもは15歳未満という世界的な基準がある。15歳未満の甲状腺がんだったら、100万人に1人か2人と言えるんです。多くても、米国の3人から4人。なのに、なぜ18歳以下にまとめてしまっているのか、15歳未満の確定と”疑い”を分けてくれないのか。福島はデータをもっているはずなのに、ずるいですよ。だから、きちんとした数字が出ないかぎり、何とも言えないんですよ。
吉野:それは、すごく重要な指摘ですよね。
菅谷:だから「悪性ないし」って、どうして「ないし」を入れるんだということですね。「悪性何例」「悪性疑い何例」と両方出せばいいのに、一緒くたにしている。そこが曖昧で不安をあおってしまうものだから、福島のみなさんは疑心暗鬼になってしまいますよ。それを出さないとは、彼らは何かを考えていると言わざるをえない。
対談のテーマは「子ども」を軸にして多岐にわたり、菅谷さんがベラルーシで見た風景について、「移動教室」をはじめとする新しい交流と教育の可能性について、甲状腺がんの検査頻度について、といった話題が語られています。
感情論に偏りがちな子どもたちを取り巻く問題が、冷静に、かつポジティブに語られています。福島の現状が知りたい方、日本の未来について考えたい方は、ぜひ路上にて「ビッグイシュー」230号を手に取ってみてください。