こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。2014/6/6に実施した「アフリカケニアで野生動物と生きる~滝田明日香さんを囲む市民の集い」の内容を書き起こしましたので、読者のみなさまとご共有させていただきます。アフリカで動物を保護するために奮闘する滝田さん。貴重なトークとなっておりますので、ぜひお読みください。
滝田明日香さんが語る「マサイマラ国立保護区」での仕事
滝田明日香さん:こんにちは。まず、象牙の話をする前に私がどこで何をしているかというところから説明をしたいと思います。
私は今、マサイマラという国立保護区で働いています。この保護区ですが管理施設が2つありまして500平方km(屋久島とほぼ同じ面積)を管理している「Mara Conservancy」という管理施設で働いています。密猟対策チームの一員として働いています。
現在は、犬を使った野生動物保護の仕事もしています。
具体的に言うと、たとえば、疫病コントロールなどが挙げられます。セレンゲッティとマサイマラで、1994年に犬型ジステンパーの突然変異型のウィルスが蔓延して、当時、保護区のライオンの30%にあたる1,000頭のライオンがウィルスに感染して死んでしまったんです。そこから、犬にワクチンを投与して肉食獣の命を守るというプロジェクトが始まりました。
タンザニアのセレンゲッティの国立公園の延長線となるマサイマラで私のチームが年間2006年には3,200頭、2008年までに8,600頭、2009年から2014年現在までには6,000〜7,000頭の犬にワクチンを投与しています。
あとは狂犬病ですね。なぜジステンパーウィルスだけでなく狂犬病もやるかというと、地元の人もマサイの犬から感染するという被害がとても多いんです。
私たちがライオンとかヒョウの動物の名前を聞くと、サファリのすごく優雅な動物のイメージを浮かべますが、実は地元の人からすると必ずしも優雅ではなく、ときには害獣なんですね。
たとえば、ライオンが家畜の牛を殺したり、ヒョウがヤギやヒツジの小屋に入ると、食べるのは1頭でも20頭〜30頭近く殺してしまうことがあります。肉食獣に対するダメージをどうコントロールしていくか、どうやって野生動物と人間が共存していくかなどを考えています。
肉食獣の対策としてフェンスを使用することもあるのですが、私が提案したのが「牧羊犬」でした。アナトリアシェパードという牧羊犬なんですが、ナミビアでチーターに農場の羊やヤギが襲われないように使われているという話を聞いたときに、マサイマラでもライオンやヒョウに使えないかと試してみたんです。
ただこれは、犬自体は家畜を守ることができたんですが、犬の餌代が高すぎるということで上手くいかなかったんです。ですが、一回も野生動物から攻撃を受けていなくて、1頭も家畜が死んでいない、さらにゾウも家の近くに近寄らせないという、とても良い成功例となっているので、もう一度マサイの人とこれをできたらいいなと思っています。
次に犬を使って保護区の中で何か役に立つことができないかと考えたときに追跡犬ユニットというユニットを結成しました。
これは泥棒や密猟者が逃げた後に足跡の匂いを追跡することを教えた犬なんです。例えばアメリカのドラマの「プリズンブレイク」で刑務所から逃げた登場人物たちを犬を使って追跡するというシーンがありますが、それと同様に逃げた密猟者を捕まえることができます。
私の犬は12時間くらいのトラッキングができるので、その追跡能力を活かして、ワイヤー罠を使っている密猟者を捕まえられないか、というプロジェクトを立ち上げました。
7月から10月にヌーの大移動というのがあるんですね。この期間にヌーの肉とシマウマの肉を干肉として捕りにくる密猟者が大量に現れます。この時期は、1日300〜350個といった大量のワイヤー罠をレンジャーが回収しています。
ブッシュミートに関しては、最近は商業化していて、たとえばナイジェリア(西アフリカ)のブッシュミートの市場だとゾウの鼻、ゾウの耳、ハイエナの頭、チンパジーなどは家畜より高めに取引されているんです。
ブッシュミートを獲る人たちを捕まえるために追跡犬ユニットを始めたんですが、これを始めてから国立保護区の外にも頻繁に呼ばれるようになったんですね。特に、5年位前から象牙の密猟の現場によく呼ばれるようになりました。
私の職場から10km離れた森で起きたんですが、ゾウが頭から切られて持っていかれてしまいます。私の追跡犬ユニットは、こういう現場に誰よりも先に現場に入らないといけないんです。なぜなら追跡犬たちはレンジャーの足跡か密猟者の足跡か区別がつかないので、一番最初に現場に入らないと分からなくなってしまうんです。
象牙の密猟者の問題に対して犬も導入できないかということで、一昨年に象牙と銃器の探知犬ユニットを作りました。
この子たちはライフル、自動小銃・手榴弾、ピストル、そして象牙を探知するトレーニングしてます。どのように使うかというと、例えばケニアはテロリスト攻撃が多くて、今しょっちゅう爆破事件が起きているんですけど、その爆破事件を起こしているグループが国立保護区に入ってこないようにゲートに車のスクーリニングとして使っています。
それ以外だと、密猟の現場に呼ばれたときに、まず追跡犬をスタートさせて彼らが追跡始めて現場を去ったあとに、この探知犬ユニットが周囲を探知して証拠品を拾うために活躍しています。
通常、密猟された象牙をそのまま持っていくことはないんですね。密猟者たちはゾウを殺して、夜に穴に埋めたり、木を被せて、どこかに隠すんです。この子たちは、そういう怪しそうな場所を探知しています。
他にも、私はくくり罠にはまったゾウの治療のアシスタントであったり、罠にかかったゾウのワイヤーを外す仕事であったり、密猟孤児となったゾウの輸送などの仕事をしています。