90%以上が密猟で殺されている:象牙の密猟問題
ここ10年、15年でアフリカのあらゆる国で野生のゾウの絶滅が始まっています。今、アフリカゾウは何頭いるのかというと、2012年のレコードだと43万頭です。データによって47万頭だったり60万頭だったりして、なぜこんなに数字がまちまちなのかというと1970年以降にアフリカ大陸全土の母体数チェックをしたことがないんです。
でも、人間の土地が広がり、野生動物の住む土地が減っているので、ゾウたちが増えているということはほとんどゼロですね。アフリカゾウの数は47万頭以下なのか?というのを調べるプロジェクトが2014年の2月からスタートしていまして、46人のゾウの科学者が集まって、アフリカ全土でどれだけゾウが残っているのかを調べています。
ではアフリカゾウはどのくらい死んでいるのかというと、2013年で違法に殺されたゾウですと、42の生息地で2万2000頭。別の調査結果ですと4万頭。数えられていない生息地もあるので、もっと殺されているゾウがもっといるんじゃないかと思っています。
取引のトラフィックから見ると、象牙の取引のコントロールなどのモニタニングをしている団体が2013年に出した欧州象牙の合計が41.5トンです。これは2011年の時点の倍になっています。
アメリカの警察では、何かが押収された時、それは実際の違法取引の10%だということがよく言われていますが、これに単純に当てはめてみると400トンの象牙が世界中を回っていることになります。これは計算すると、5万頭のゾウが死んでいることになるんですね。
ゾウが減る原因として大きいのは、ゾウが住める土地が毎年どんどん小さくなっていることです。そして居場所をなくしたゾウが人間の土地に近付いていって、人間との衝突が始まり、ゾウが農村の畑を荒らし、違法に殺されることが頻繁に起きるんですね。
PIKEというデータがあります。これは違法に殺された、密猟されたゾウがその年に死んだゾウの何%かを示すものなんですが、西アフリカですと人がたくさんいるので、野生動物の生息地がなく80%となっています。中央アフリカだと90%です。90%が密猟で死んでいます。東アフリカで60%、南アフリカで50%。私が働いているマサイマラですと職業柄、死亡率を政府に提出する仕事も手伝っていますが、レコードを見ると93%が密猟で殺されています。
ゾウが畑に入ると、住民が畑や家畜を守るために殺します。ゾウは賢いので仲間のゾウが人間に殺されると覚えていて、復讐でまた別のゾウが人間の家畜を襲うということもあるんです。その衝突が多くなってしまうと、密猟者のグループが入って象牙目的の密猟を始めたとき、地元住民が密猟者をレンジャーに通報することが少なくなっていくのが問題なんです。
国立公園内ですと、すぐ追手がつくので、保護区の少し外(5km~10km)でゾウが頻繁に殺されています。ケニアの野生動物の生息地ですけど、全体の30%は国立公園の保護区に住んでいますが70%は保護区外の地元の人の土地の中に住んでいます。
何を使って殺すかというと一番簡単に殺せるのは銃ですね。5~6万の違法銃器がケニアで出回っています。保護区外で銃声が聞こえない場所では銃を使いますけど、保護区内ですと毒矢ですね。毒性植物をぐつぐつと煮て、毒草を入れて、作るんですね。
タンザニアで流行っているのはフットトラップというものですね。ゾウが踏みつけると、ゾウの血液に毒素が回って死んでしまう。毒入りカボチャやスイカ、最近ではキャベツもありますね。ジンバブエでは青酸カリを水場に巻かれて他の動物も含めて300頭死んだということがありました。
—-