個人規模で居酒屋や飲食店を経営している方がよく悩みがちなのは「集客」と「人件費」、そして「料理コスト」ではなかろうか。
数あるお店のなかで、新規のお客さんに来訪してもらうためのプロモーション、一度来たお客さんにまた来訪してもらうため、また飽きられないための料理や企画の工夫、仕入れコスト、そしてそれらを満たすためにかかる人件費…。いろんな悩みがあるはずの経営者という立場ながら、ビッグイシュー日本版309号の「ワンダフルライフ」に登場する、大阪市北区の「週間マガリ」の管理人:小西さんは、多くの店とはまったく異なるアプローチでカフェバーを経営している。
開店から3年半でかかった人件費はほとんどないながら、なんと250人の日替わり店長と組んでお店を経営してきた、飲食店経営の常識をひっくり返す人物だ。
人件費がゼロどころではない。
日替わり店長が店の「レンタル料」を支払い、料理も用意!?
その仕組みは、なるほど!と言いたくなるものだ。「店を間借りしたい日替わり店長」が、管理人である小西さんに店の「レンタル料」を支払い、週刊誌の連載のように様々な企画をカフェバー「週間マガリ」内で繰り広げるのだ。
4月の企画ラインナップは「毒舌美容師」「シェアハウス★ナイト」「日本酒研究会」「サブカルくそ野郎BAR」「English Bar」などと、実に多彩だ。ジャンルはほぼなんでもありなので、日替わり店長希望者は引きも切らない。
▲4月の企画メニュー(2017/4/13時点)。サブカル大好きという小西さんの「週刊誌」的演出。
そしてその日に店で出す料理は、企画に応じて材料の仕入れ・メニューなど、ほとんどを日替わり店長に任せている。それゆえに「日替わり店長」は自分らしさを目いっぱい出すことができるのだ。
(「日替わり店長」は、その「自分らしさを目いっぱい発揮できる日」というレジャーとして、喜んでレンタル料を支払っているのかもしれない。)
そして「日替わり店長」は、自分が店長を勤める「ハレの日」(?)に、理解を示してくれそうな友人知人に張り切って誘いをかけるため、様々な新規のお客さんが日替わり店長目当てで来訪する。そして一度来訪すると、店に置かれた「今月の日替わり店長」のラインナップを見て、興味のある日にまた来訪する人も多い。さらにそのまま常連化する人、そして一日店長をしてみたいと言い出す人も多いという。
それゆえに、3年半で日替わり店長は250人、1000回の企画をやってきて、15人も入ればいっぱいという店に、毎日平均して10人〜20ぐらいの人で賑わっているという。
「その人しか出せない空気」を楽しみに、日替わり店長、お客が集まる空間
3年半、人件費をほとんどかけず、250人の日替わり店長にレンタル料金をもらったうえに材料持ち込みで料理を作ってもらって店を切り盛りしてきた…というとどんなブラックなカフェバーかと思うかもしれないが、ここはカフェバーというよりは、「自分らしい企画立案・実現でき、主役になれる場所」なのだ。だからお金を払ってでもやりたいという日替わり店長リピーターが続出しているというところがポイントである。▲小西さん(左)とこの日の日替わり店長(右)がそれぞれ接客。この日はハンガリー料理の日。
たとえば人件費や集客に悩む飲食店が「人件費をかけたくない」「集客をどうにかしたい」と思って真似できるモデルではないということだ。
小西さんの「広く浅い人脈」、「サブカル好き」、「ヘンな出会い好き」という個性的なキャラクターや、「この人の趣味をみんなで共有したい」、「このヘンな人にその日は主役になってもらいたい」とそれぞれの日替わり店長に寄り添う気持ちがあってこそ、多彩な日替わり店長が集まって来るのだ。そして、来てくれるお客さんに楽しんでもらうためには、持ち込まれる数々の企画に対しての選球眼(?)も求められる。
まさに小西さんだからこそのキャラクターを生かして、このモデルが絶妙のバランスで継続しているのだ。
▲小西さんのサブカル好きがひしひしと伝わってくる店内。
▲トイレには「週間マガリ」武家諸法度として「宗教・ネットワークビジネスの勧誘禁止」「ヘタクソなナンパ禁止」「禁煙」が掲げられている。
小西さんは自分を「意識低い系企業家」と笑って言うが、大学生のころからどのような場にすればいろいろな人が交流できるのかを悩み抜いてきたという。どのような想いで、「週間マガリ」を立ち上げて運営しているのか。詳しくはお店でご本人に聞いていただくか、ビッグイシュー日本版309号の「ワンダフルライフ」をご覧いただきたい。
4月26日、週間マガリにて「ビッグイシューファンの集い」を開催!
「週間マガリ」のビッグイシュー登場を記念して、2017年4月26日は週間マガリで「ビッグイシューファンの集い」を開催。ビッグイシューバックナンバー・関連書籍の展示、ビッグイシュー日本版「悩みに効く料理」でおなじみの料理研究家、枝元なほみさんのレシピでつくったおつまみの提供など、ビッグイシューファンにはちょっと嬉しい内容になる模様。
ビッグイシュー309号を持って来店されると、チャージ100円引きとのこと。
なお、利益分はビッグイシュー基金に寄付される予定。編集部などの「ビッグイシューの中の人」もいちファンとしてお邪魔するかもしれません。マガリに興味のある人も、ビッグイシューに興味のある人も、この機会に309号を持ってぜひご来店ください。
▲ある日の店内の様子。日替わり店長と小西さん(写真中央)でそれぞれ接客する。
週間マガリ
大阪市北区天神橋1-11-13 2F営業時間:19時~23時(22時半L.O)
http://shukan-magari.strikingly.com/
地図
▼近隣のビッグイシュー日本版販売場所
【天神橋筋】南森町駅3番出口/JR天満駅前商店街付近【天満橋周辺】 京阪天満橋駅東側交差点付近
その他のビッグイシューの販売場所はこちら
「週間マガリ」紹介動画
▼「週間マガリ」が登場のビッグイシュー309号
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307号特集:「どこにもない食堂」タダメシ提供なのに黒字の食堂、日替わりシェフの食堂など、「週間マガリ」に興味を持った方ならきっと楽しく読める特集です。
https://www.bigissue.jp/backnumber/bn307.html
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Jon Bon Jovi SoulFoundationというNPO法人が運営する、「値段のない」コミュニティレストランの話も。
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企業誘致並みの雇用創出効果!経営相談所「OKa-biz」に学ぶ、地方経済を活性化させる方法(イケダハヤト)
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