ビッグイシュー日本が提供する研修プログラム「道端留学」は、学生や社会人の方に向けてホームレス問題の理解を深めるきっかけを提供しており、ビッグイシュー販売者との販売体験と、スタッフからの講義で成り立っている。
2018年10月、東京から修学旅行で大阪に来た和光高校の高校2年生9名が参加。社会学習の一環として実際に路上に立ってビッグイシューを販売し、販売者と交流した。


体験してわかる路上販売の大変さ:気づいてもらっても、近づいてさえもらえない…

小さなグループに分かれ、梅田の近郊での販売体験がスタート。
「(通行する方の)邪魔にならないように」「姿勢を正して」「雑誌は胸元で持つと近くの方に見えやすいです」など販売者から簡単なレクチャーを受ける。

雑誌を持って、帽子を被って、いざ販売。
高校生たちは、通行している人に気付いてもらえるように、「ビッグイシューいかがですかー!」「朝のさわやかな時間に、1冊いかがですかー?」と声をあげてみるものの、買ってもらうというところになかなか至らず。
「なかなか売れない…」「こっちは見てくれているのに、近づいてくれない」と苦戦している様子だった。

さらにこの日は10月中旬とはいえ快晴の日。影のない場所ではきつい日差しが刺すように痛い。直射日光の下で立ち続けることの大変さも、身に染みて感じていたようだった。

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また別の売り場では販売者が、販売の合間に高校生たちに自身の人生観について語る。
「自分も昔はホームレスの人ってなんで働かへんのやろって思ってた。でもホームレスには誰でもなりえるし、なって初めてわかることもあった。」とした上で、「社会はきびしいかもしれないけれど、それでも頑張ってほしい」とメッセージを送った。

さらにもう一か所の売り場では、実際にお客さんに購入していただく場に立ち会えた。
販売者がお客さんに丁寧にお礼を言い、雑誌を袋に入れて渡すという対応を実際に見るという体験もすることができた。

実際に交流してわかるリアルなホームレス事情

販売体験のあとは事務所に戻って、ビッグイシューについて説明を受ける。
なぜ人はホームレスになるのか。その理由について聴いた後、ビッグイシューの取り組みについての詳しいレクチャーを受ける高校生たち。

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スタッフからのレクチャーの後は、実際の販売者を囲んで話を聞く。
今回お話してくださったのは大阪駅とスカイビルの連絡通路で販売している入島さん。「こんなに大勢の人に注目されたら緊張するわ」とやや固くなっていたが、話していくうちに次第に打ち解けていった。

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販売していて嬉しかったこと、大変だったことをはじめ、入島さんの半生、販売における工夫や今後の目標などを話した。

「昔はどんな子どもだったんですか?」という問いに、「いたずらっ子だった」と笑う入島さん。 交流することでしか見られない、販売者の意外な側面も見られた。

特に高校生たちが驚いたのは販売者の隠れた取り組み。
「雑誌を手渡す手をきれいにして、顔もひげを剃って清潔感を出して近づきやすいように。」「販売場所で掲示している、雑誌のポスターのレイアウトも考えて変えている。」と話すと、細かい工夫に驚くと同時に納得していたようだった。

今回のプログラムを通して、高校生からはホームレスの人に対する印象が変わったという声が多く聞かれた。

「今まではホームレスの人は何もしていない人だと思っていた。しかし、お客さんへの心遣いや、販売する上での工夫などを知って、自分のできることを精一杯やっているということが分かってよかった。」など、教室の中で授業を受けるだけではわからないことも学べた様子。

「ホームレスは状態を表す言葉であって、その人そのものを表すものではない。様々な人がいて、色んな理由でホームレスになった」というスタッフからのメッセージは、実際に販売者と交流した高校生に響いたようだった。

先生にインタビュー

今回のプログラム実施にあたって、生徒のみなさんを引率してくださった横山先生。この取り組みを始めた理由や、先生自身が感じた生徒の変化について伺った。

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Q. なぜビッグイシューの「道端留学」をしようと決められたのですか

「長く社会問題を取り上げる授業を持っていますが、10年前に比べると、ホームレスに対する理解はある程度広まってきているのではないかと思います。
しかし実際に体験しないとわからないこともあると思い、今回のプログラムを実施することに決めました。」

Q.実際に参加してみて、良かったことを教えてください。

「事前にスタッフの方々と綿密に連絡を取ってプログラムを組んでいただけた点は、とても助かりました。生徒から直接、当事者の方に質問するというのは難易度も高いかと懸念していましたが、スタッフと販売者さんの対話形式を見学するという方法は生徒にとってもやりやすかったと思います。」

Q.ビッグイシューの販売者と交流する前と後で、生徒に変化はありましたか
「あったのではないかと思います。事前に路上で生活せざるを得ない人々に関するビデオ学習や、ホームレスのイメージについてのディスカッションも行っていました。しかし今回、実際に販売されている人と交流した際、特に販売者さんのお客さんに対する気づかいや、お金を払って買っていただいているという感謝の気持ちは、生徒の中にあったさまざまなイメージを見直すうえで影響が大きかったと思います。」

取材協力:佐合由衣

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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。