昨年12月4日、大阪地方裁判所(森鍵一裁判長)は大飯原子力発電所3、4号機(福井県)に対する原子力規制委員会(以下、規制委)の再稼働許可が違法であると断じた。規制委の審査のあり方を問う画期的な判決で、再稼働に反対する各地の運動を勇気づけ、また、運転差し止めを求める裁判にも大きな影響を与えることになるだろう。


原子力規制委員会、
耐震性の評価が不十分

裁判では同原発の耐震性の評価などが大きな争点となっていた。違法とされたのは、規制委が定めた地震動の予測手法(「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」)に沿って十分な審査が行なわれず、審査に欠落している部分があったからだ。

基準地震動とは、その原発が受けると想定される最大の揺れのことで、活断層の長さ、破壊される地層の面積、原発までの距離など、さまざまな条件を想定して策定される。その中でも、断層の長さや破壊面積と地震の規模(マグニチュード)との関係を示す「経験式」が重要だ。経験式は、実際に起きた地震の規模と動いたと想定される断層の長さあるいは面積との関係から導くのだが、当然ながら個々の地震とその動いた断層の長さは全部が一致するわけではない。いわば平均値に基づいているのである。審査ガイドには、「経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」と明記されている。しかし、規制委は大飯原発の審査の中で、この「ばらつき」、つまり地震が平均値より大きくなる可能性を考慮しなかった。

規制委は、断層長や断層面などのそれぞれの項目での不確かさを安全サイドに考慮していると、妥当性を主張した。しかし、裁判長は「それぞれの不確かさの考慮と、経験式のばらつきを考慮することは別問題だ」と、規制委の主張に納得しなかった。

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揺れの可能性は1550ガル
評価基準は856ガル

 大飯原発は関西電力が福井県おおい町に設置している原発だ。2017年に1、2号機を廃止したが、3、4号機はともに電気出力118万kWで、関電がもつ原発の中で最大の出力である。20年7月から3号機が、同年11月からは4号機も定期検査で運転を停止していたが、関電は4号機を1月15日に再起動させた。他方、14日には原告の地元住民らが規制委の許可の効力を停止するよう大阪高裁へ申し立てを行った。

 実は大飯原発をめぐっては、地元福井県をはじめ、滋賀県、京都府、大阪府の各府県の住民から仮処分申立や本訴を含めて10件も提訴されている。14年5月には樋口英明・福井地裁裁判長(当時)が運転を差し止める判決を下した。その後、関電が控訴し、名古屋高裁金沢支部で18年7月に逆転敗訴となった。

 大飯原発の基準地震動評価は以前から過小評価であるとの指摘がなされている。その一つが、元原子力規制委員会委員の島崎邦彦氏(地震学)による問題提起で、彼の試算によれば、大飯原発には1550ガルの揺れが襲う可能性があるという。規制委の審査では現基準地震動を856ガルに見直した(建設時は405ガル)。その程度の見直しで原子炉が耐えられるのか疑問だが、1550ガルでは原子炉が確実に破壊される(1260ガルで破壊)。それでも規制委はこれを受け入れず、審査ガイドを見直すこともなかった。

 今回の判決を受けても、12月16日の会合では「ばらつき」の評価はしていないと開き直りの見解を公表している。そして翌17日に大阪高裁に控訴した。
 規制委の主張には無理があると思われる。住民の安全を優先して判決を受け入れるべきだ。
(伴 英幸)

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伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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