スペイン・イベリア半島の停電、太陽光、風力、ガス火力、水力から復旧

2025年4月28日午後0時33分(スペイン現地時間)、スペインとポルトガルの大部分で大規模な停電が発生した。報道によればスペインではわずか5秒の間に約15GWの電力が失われた。当時の国内電力需要の60%に相当する。ポルトガルでは29日早朝までに、スペインでは午後11時頃までに停電から復旧。スペインでは1日近くかかったことになる。

※以下の記事は2025-06-01発売の『ビッグイシュー日本版』504号からの転載です。

スペイン、わずか5秒の間に電力需要の60%が失われた

多くの原因が取りざたされている。特に議論を招いているのは再エネ比率の高さだ。スペインの28日午後0時時点の発電電力量に占める各電源の割合は、太陽光が60%、風力9%、水力11%、原発11%、火力(バイオマス・廃棄物含む)9%だった。この再エネ比率の大きさが停電の原因になったというのだ。なお、スペイン政府やスペインの電力系統運用会社であるRed Eléctrica de Españaは、再エネの多さが停電の引き金になったことを否定している。現代の電力系統の運用はきわめて複雑で、原因究明はとても難しい。おそらく、今回の原因調査も長い時間を要することになるだろう。

一方で、私が興味深いと感じたのは、停電後からの電源の再開の順番だ。グラフに4月27日から5月1日までのスペインの電源種別発電電力量を示した。停電前、4基の原発が安定的に稼働していたが(黒)、停電に伴って停止したことが確認できる。外部からの電力供給を失ったため、運転を停止したのだ。その後、主に太陽光と風力が供給し、次いでガス火力と水力の出力が増加していき、29日午前0時頃に石炭火力、最後に午後10時頃に原発の運転が再開した。ただ、停電前3400MW弱あった原発の合計出力は1日23時時点でも1400MWまでしか回復していない。原発は外部電源を失えば停止し、停電後の回復の中ではあまり役に立たないということを示している。

泊原発3基の再稼働目指す北電
停止すれば大規模停電の可能性も

4月30日、原子力規制委員会は北海道電力の泊原発3号機が新規制基準に適合しているとした。北海道電力は早ければ27年に泊原発3号機を再稼働させる方針だ。さらに、「ほくでんグループ経営ビジョン2035」で35年までに泊原発の3基すべて再稼働させ電源に占める原発比率を6~7割にするという目標を掲げた。

一般に原発では大きな地震動を観測した場合、原子炉を自動停止する。北海道電力は泊原発の審査の中で、泊原発の近くを震源とする大きな地震が発生しうるとした。つまり、泊原発は停止しうるとしている。1地点に存在する電源で7割もの電力供給を依存するということは、その電源が失われた場合、大規模な停電が起こるということだ。

18年の北海道胆振東部地震では、送電網の切断と当時北海道の電力需要の5割を供給していた苫東厚真石炭火力の停止によって北海道全域停電が発生した。北海道電力は単一サイトに電力供給を依存することのリスクを重々理解しているはずだ。それなのに、今度は泊原発に依存するというのだ。

北海道電力が、泊原発周辺で地震は発生しない、または原発事故は発生しないと考えているか、北海道ブラックアウトが発生してもかまわないと考えているか以外に、このような方針の説明がつかない。安全神話の復活、電力安定供給の放棄、いずれでも大きな問題だ。北海道電力は北海道民に説明しなければならない。また市民の生活を保障する義務を負う国や北海道などの自治体は北海道電力に説明させる必要がある。
(松久保肇)

まつくぼ・はじめ
1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。
金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。共著に『検証 福島第一原発事故』(七つ森書館)、『原発災害・避難年表』(すいれん舎)など https://cnic.jp/