ビッグイシュー・オンライン編集部より:2月15日発売のビッグイシュー日本版257号より、読みどころをピックアップします。
「買い物難民」の増加でニーズ高まる「移動スーパー」
表紙はベネディクト・カンバーバッチさん。特集は「包容空間、路上のいま」です。
本記事では、特集より徳島県の移動スーパー「とくし丸」についてのご紹介いたします。
移動スーパー、耳馴染みのない言葉かもしれません。
いわゆる「買い物難民」問題、高齢になり車が運転できなくなり、スーパーに行けなくなってしまうといった問題を解決するために生まれた、新しいスーパーのあり方です。以下、公式サイトから引用します。
ここ最近、買い物難民対策が連日のようにニュースになっていますが、それぞれに弱点を抱えているようです。
そもそも「買い物」という行為は、生活の中の「お楽しみ」でもあります。現物を「見て・触って・感じて・選んで」初めて本来の「買い物」と言えるのではないでしょうか。そこで、これらの様々な問題を何とか解決できないか?と考えた結論が「移動スーパー・とくし丸」でした。
玄関先まで軽トラックで出向き、会話し、買い物をしていただく。買い物の楽しさを残しつつ、「買い物難民」と言われる方々を支援できればと考えています。
軽トラックといえども、冷蔵庫付きの専用車ですから、生鮮食品も積み込んだそのアイテム数、何と400品目以上になります。また、買い物だけに止まらず、我々「とくし丸」のスタッフが、「見守り隊」としての役目を果たすことも目指します。
とくし丸が生まれたのは2012年2月。創業のきっかけについて、代表の住友達也さんはこう語ります。
徒歩圏にスーパーがなく車も運転できないため、高齢者は買い物難民化していました。片道数千円のタクシー代をかけてスーパーまで行くという話も聞きました。
そして、創業に向けて調査を進める中で、過疎地だけでなく都市部にも買い物に困難を感じている高齢者が多いことが見えてきた。たとえ100メートル先にコンビニがあったとしても、足腰が悪くてそこまで歩けないという人が多いんです。
ニーズ調査のために、なんと3万軒の家庭をヒアリングしているというから驚きます。創業メンバーである村上稔さんは「おそらく日本で一番、この分野において調査をしているのが私たちだと思います」と胸を張ります。
ビジネスモデルは?
さて、気になるのはビジネスモデル。「とくし丸」は株式会社として運営されている、持続可能なビジネスを展開する企業です。特集記事ではビジネスの中身についても詳しく紹介されています。
とくし丸を支えるのは「販売パートナー」。彼らが地元のスーパーを訪れ、軽トラに商品を積み込み、地域を渡り歩きます。その際、利益はこのように分配されているとのこと。
商品は、買取ではなく委託というかたちで軽トラに積みこむ。粗利の10%がスーパー、17%が販売パートナー、3%がとくし丸本部という配分だ。
また、「1商品あたり10円」の料金が商品に上乗せされる仕組みとなっています。
創業にあたり、商品の買い取りリスクを回避するため、また、大手資本に対抗するため、地域のスーパーと提携することにした。また、1品につきスーパーで販売されている価格に10円を上乗せする「プラス10円ルール」を設定。本部と販売パートナーで5円ずつを分け合い、燃料費などに充てている。
「継続していくためには適正な利益を生み出す事業にしなければなりません。事業の社会的役割をお話しし、受益者負担という観点から利用者の方に負担をお願いしたところ、快く受け入れてくださいました」
地域を守るインフラとして
移動スーパーには、地域力を高める側面もあります。
具合の悪い人を地域包括センターにつないだり、亡くなられた方を発見したり、結果的に地域の見守りという機能を果たし、行政や警察から表彰されることも増えました。地域に顔の見える関係を取り戻すことは、コミュニティを復興させ、地域力を取り戻すことにつながります。グローバル経済に限界が見え始めている今、このようなスモール経済の果たす役割は大切なのではないでしょうか。(村上さん)
移動スーパーのネットワークは、徳島にはじまり、京都、高知、東京、広島、福島、和歌山、愛媛など、着実に広がっています。さらに詳しくは、ぜひ最新号でご覧ください。
257号のご紹介
257号では、他にもベネディクト・カンバーバッチさん、又吉直樹さん、『バベルの学校』ジュリー・ベルトゥテェリ監督のインタビュー、ホームレス人生相談、東田直樹さんの連載など、様々なコンテンツが掲載されています。詳しい内容紹介は以下のリンクからどうぞ。