2016年10月26日、栃木県矢板市のJR矢板駅前で生後間もない男の赤ちゃんの遺体が見つかった事件で、トイレで出産した赤ちゃんを置き去りにして殺害したとして16歳の女子高校生が逮捕されたことを受け、2015年2月19日の記事に相談先等を一部加筆して再掲します。
ビッグイシュー・オンライン編集部イケダです。
2015年1月15日に発売された書籍、「『赤ちゃん縁組』で虐待死をなくす 愛知方式がつないだ命」から、内容をピックアップしてご紹介いたします。なお、本書の一部の記述について女子高生サポートセンター「Colabo」の仁藤さんが重要な指摘を展開しておりますので、こちらもあわせてご一読ください。
児童虐待死が最も多いのは「0歳0ヶ月0日」
まず、本書の帯にも掲載されている衝撃的なデータから。
平成26年3月の厚生労働省の報告によりますと、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数は、児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べ、平成24年度には約6倍に増加しました。
この児童虐待について、衝撃的な事実があります。
それは、児童虐待により死に至るケースで一番多いのが、「0歳0ヶ月0日の赤ちゃんである」ということです。
国の社会保障審議会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会の報告によりますと、平成16年度から平成23年度までの8年間で、心中以外の子どもの虐待死事案総数は437人。このうち4割強は、0歳の赤ちゃんでした。
その月齢を見ると、約半数が生後0ヶ月の新生児です。さらに細かく見ると、0ヶ月の赤ちゃんの85%が、産まれたその日に殺されています。
しかも、加害者の9割は、その子を産み落としたお母さん。産まれてきてすぐに、産みの親によって命を奪われてしまう赤ちゃんが、こんなにもいるのです。
にわかには信じがたい話ですが、これは確かに統計的に捉えられた現実です。上で紹介されている厚労省発表のデータより、グラフを引用します。
0歳児を月齢別にみると、生後1か月に満たない0日・0か月児が11人(44.0%)と最多であった。心中以外の虐待死事例のうち、0歳児、特に0日・0か月児が多い傾向は変わっていない。
ともすると「産まれたその日に殺してしまうなんて、ひどい親だ!」という非難の声が上がってきそうですが、悲劇的なデータの背景には「親たちがそこまで追い詰められている」という事情があることを理解すべきです。
このような行為に至った母親を、「残酷で無責任だ」と断罪することは、ある意味で簡単です。しかし、どこにも相談することができず、ここまで追い詰められてしまった女性のことを想像してみてください。
(中略)
辛い目に遭った赤ちゃんと、そうせざるを得なかった母親のことを思うと、解決策を提示してあげられなかったことが本当に悔やまれます。予期せぬ妊娠をして困った女性が、絶望的にならずに済むように、妊娠中から向き合ってあげて、産まれてくる子どもたちの将来をどう支えていけばよいかを話し合うというサポートが急務です。
「赤ちゃんポスト」の存在意義
関連して、書中では少し前にニュースなどで話題になった、いわゆる「赤ちゃんポスト」についても紹介されています。熊本の慈恵病院が運営している「こうのとりのゆりかご」です。
出産に悩んでいる場合、「出産前」に相談できることが理想ですが、必ずしも事前に相談できるとは限りません。どうしても相談できない、そんなときに匿名で赤ちゃんを預けられる「こうのとりのゆりかご」が選択肢として浮上します。話題性ゆえに理解がされにくいところもありますが、限界状態にある親を救い、虐待死を防ぐ効果が期待できるわけです。
Wikipediaに主な賛成・反対意見がまとまっているのでこちらも合わせてぜひ。
賛成意見
- 新生児の殺害・虐待・育児放棄を防ぐ。
- 預かるのが目的である。
- 中絶では児は生存できないが、このシステムにより児が生存できるための選択肢が増える。
- 人工妊娠中絶は本来法的には母体適応(妊娠出産が母体に危険)や経済的理由の社会適応しかないが、実際には他の社会適応(親の社会的側面など)、胎児適応(障害を有するなど)においても非合法だが容認されている。このシステムにより母体保護法への抵触を形式上回避できる。
- 慈恵病院の場合、赤ちゃんが安易にポストに預けられることがないよう「SOS赤ちゃんとお母さんの電話相談室」を24時間体制で運用しており、相談もしている。赤ちゃんポストの運用開始である2007年5月以前である、2006年12月に電話相談室を運用開始している。