編集部より:元受刑者でブロガーのイノシシさんが、出所後のコミュニケーションについて書かれています。(提供:けもの道をいこうより、一部編集して掲載)
元受刑者は「怯えて」います。
コミュ障(ニコニコ大百科より引用)
コミュ障(こみゅしょう)とは、コミュニケーション障害の略である。日本の国民病の1つであり、他人との他愛もない雑談が非常に苦痛であったり、とても苦手な人のことである。
(※今回の記事にある「コミュ障」は「病気」とまでは診断されないまでも、「他人とのコミュニケーションに何らかの苦痛を感じる」との意味合いで使用しています。)
みなさんは「自分をコミュ障だ。」と思ったことってありますか?
「あぁ、全然会話を盛り上げれなかった…」
「なんであそこでもっと上手く切り返せなかったんだろう…」
「何か人と会話するのってしんどいな…」
とか何とか凹むこと。
自分でいうのもなんですが、僕は「コミュニケーション能力においては平均以上」と自負していました。
そう、「いました」です。
初対面の人だからといって緊張はしないですし、会話の中で特に言葉に詰まることも無い。
元々人と喋るのは好きな性格で、他人に対して自分からどんどんコミュニケーションをとっていくタイプ。
居酒屋とかでは酔うと周りノリのいい他のお客さんや店員さんにやたらとテンション高くに絡んだりする、「ちょっと(かなり?)鬱陶しいぐらいの」積極性を持っていました。
初対面の人だからといって緊張はしないですし、会話の中で特に言葉に詰まることも無い。
元々人と喋るのは好きな性格で、他人に対して自分からどんどんコミュニケーションをとっていくタイプ。
居酒屋とかでは酔うと周りノリのいい他のお客さんや店員さんにやたらとテンション高くに絡んだりする、「ちょっと(かなり?)鬱陶しいぐらいの」積極性を持っていました。
「チーース!飲んでます?」(=゚ω゚)人(゚ω゚=)ぃょぅ!
「お姉ちゃんかわいいね~~!こんなにキレイな人見れただけで、僕は今まで生きてきてよかったと思いました!ありがとうございます!!」(゚∀゚)アヒャヒャ
みたいな。
だいぶウザイですね(笑)
まあ、これには合う人合わない人がいますけど、その性格や能力のおかげでこれまでにも多くの人と出逢い可愛がってもらってきたな~、恵まれてきたな~、と思うことが多々あります。
「これは自他ともに認める得意分野やな!」と自覚もしてましたし、周りからも言われてきました。
その自信が、出所後どんどん無くなって来てるんです…。
いわゆる、(というか勝手に命名しました!)
「出所後コミュ障スパイラル」にはまっているな、と。
「日常生活のすべてがコミュ障か?」と言われるとそうではないんです。
以前からの友人や家族との会話。
その場その場での一瞬の会話。(買い物のときのレジのやりとりとか、電話での問い合わせとか)
これらに関しては何の問題もありません。
今まで通り。
言い換えると、「前から僕のことを知っている人達」ですね。
じゃあ、どんなときに「コミュ障」が発生するかというと…
ずばり、
「初対面のとき」
です。
昨日、20人ぐらいが集まったとあるイベントに参加してそのことを痛感しました。(7割ぐらいが初対面の人)
「元受刑者にとって、初対面とは”賭けの連続”である」
と。
「前から僕のことを知っている人達」と「初対面の人達」。
何が違うかというと、
「僕が元犯罪者という事実を知っているかどうか」
これに尽きます。
元からその事実について知ってるんだったら別に何も隠す必要が無い、だからノビノビと会話できるわけです。
友達とかなら逆にイジってきたりしますからね…(そういうときは逆に優しさを感じます)
だけどこれが「僕が元犯罪者ということを知らない」場合になると全く話は変わってきます。
こっちとしては、
「この事実を言ったら引かれるかな?」
「その場の雰囲気が悪くなったらどうしよう?」
「僕がその事実を打ち明けることによって、その場に紹介してくれた人の顔を潰すことにはならないか?」
なんて色っ々考えちゃうわけで…。
もう本当に
「賭けの連続」
なわけです。
昨日実際にあったケースを出してみると、
定期的なイベントには必ずといっていい程ある「初めての人はまずは自己紹介を~」のくだり。
これって、めっちゃくちゃ普通の流れじゃないですか?
「あっ、~です!どうも~!」
みたいな。
でも僕からしたらこれもちょっとした「賭け」なんです。
「どこまで言っていいものか…?」
「もし何気ない質問されたらどう返そうか…?」
等々。
まあ、結果的にその場な「なんとな~く」の当たり障りの無い自己紹介で切り抜けました。
ほっ、と一安心…(*´Д`*)
できないんですよ。
そのイベントは定期的に開催されているものらしく、自分以外は多分90%以上が互いに顔見知りのリピーターなわけです。
だから主催者側の人は初参加の自分に気を使って話かけて来てくれるわけで…、
来たよ、と。
もうマンツーマンのマンマークやぞ、と。
よくありがちな
「出身は?今はどこに住んでるんですか?」
はまだ全然いいですよ。
そっから、
「今お仕事は何されてるんですか?」
になると一気に雲行きが怪しくなってきますよね。
自分の今の仕事は「普通の仕事につけない人が行き着いた先」(こういうと今の職場に申し訳無く思いますが、正直これが大多数の世間一般認識かと思います…)
出所後コンプレックスの塊である自分は、まずそこで「ウゥ…」とダメージを負うわけで…。
(参考記事:「劣等感 ~出所後のコンプレックス~」)
さらにそこから
「あぁ~そうなんですか。もう結構長いんですか?」
とか聞かれたらガクブルですよ。
こっちは刑務所入ってますからね。去年仮出所したばっかりで、今の仕事のついて半年を少し過ぎたぐらいの状態。
「いや、そんなに…」
と答えて、ここから
「以前は何されてたんですか?」
なんて来たら、もう二択ですよ。
「言うか」or「言わないか」
の。
さらには「何かしらのウソをついてごまかす」ってのもありますけど、結局どっかでボロが出る。だからそんなことはしたくない。
僕は結局、昨日初めて会った人には誰一人として元犯罪者であるというこを言えませんでした。
「まぁ、色々とありまして…」と言えば、大体の相手は察してくれます。「あっ、ここは入られたくない領域なんだ…」って。
で、そういうときって「ちょっと微妙な空気」(自分が感じてるだけかも知れないですけど)になるんですよ。
僕はその「ちょっと微妙な空気」が超絶気まずいわけでして…。
それが続くと、もう「その場にいること自体が気まずく」なっちゃうという…。
「そんなにウジウジ悩むぐらいなら最初から行くな!」
とか
「傷つく前に、傷つくな!(by坂爪圭吾さん)」
とか言われそうですけど、やっぱりどうしても中々踏み出せなかったです。
「もし、この中に何かの犯罪の被害者の人がいたら?」
「もし、元犯罪者に対してすごい偏見を持っている人がいたら?」
「もし、僕がその事実を打ち明けることでその場の空気が凍りつき、イベントが悲惨なものになったら?」
……。
考えすぎちゃいます。
こんな経験が続くと、
「出所後コミュ障スパイラル」
が発生してきますよね。
※以下、「出所後コミュ障スパイラル」の流れ
①事件を起こしたことで人間関係が切れている場合が多く、普段引きこもりがち
↓
②「これではいかん!」と思い、何とかイベントや初対面の人のいる所にいってみる
↓
③「元犯罪者、元受刑者」ということがひっかかり、「コミュ障」発生。中々打ち解けれない
↓
④その場の空気、雰囲気が気まずい思い出として残る
↓
⑤結果、さらに引きこもりがちになる
という。
逮捕される以前は鬱陶しいぐらいの積極性を発揮していた自分でさえそんな状況。自分よりも奥手の元犯罪者・元受刑者はこのスパイラルがさらに加速していく気がしてなりません…。
さらにこれは、「自分の犯した事件ついて真面目に考えている元犯罪者・元受刑者の人」の方がよく当てはまると思うんです。
「自分の犯した事件がどういったものか」「犯罪を犯すとはどういうことか」を考えているから「こそ」中々一歩が踏み出せない…。
逆に言えば「開き直っている人」さらに「”箔がついた”と思っている人」何かはこんなことで悩みはしないんでしょう…。
色々な媒体で目にしますし、さらには自分自身も「元受刑者の社会復帰のため、再犯防止のため」には「仕事が重要」ということを発信してきました。
ただ、昨日の経験を通して「仕事」も大事だけど、「居場所」も大事なんじゃないかと思ったわけです。
「”いてもいい存在”と無条件で肯定してくれる場所」
その場所があるだけで、出所後の生活は全然変わってくると思います。
例えそれが家庭や友人関係以外の場所であっても。
というか、「仕事をして得られる喜び」も深く突きつめていけば「社会における自分の存在価値の証明」であり、「社会に居場所がある」ってことなのかな、と考えたり。
これが「被害者」以外にも「社会」が「加害者」を許すことの1つのカタチのような気もしたり。。
(参考記事)「【償い方の】加害者を許すのは、被害者じゃないのかもしれない。【選択肢】」
このブログを読んでくれている人の大多数が、懲役はおろか前科前歴も無い方達だと思います。
そんなみなさんに、イノシシからのお願いです。
もし、今みなさんの周りに前科前歴のある”元犯罪者・元受刑者”がいたとします。
その人が、その事実について打ち明けたときは、何も言わずにただただ聞いてもらえないでしょうか?
多分、みなさんが思っている以上に彼、彼女にとっては勇気を振り絞っての行動だと思います。
そして、みなさんが思っている以上に彼、彼女は拒否されることに「怯えて」います。
元犯罪者、元受刑者には「怖い人」や「頭のおかしい人」よりも、「怯えている人」がいっぱいいます。
「それも犯した罪の1つ」
そう言われると、そうかもしれません。
自分の過去と一生付き合っていかなくてはならないのは事実。
ただ、「過去を打ち明けた上で存在を認めてくれる場所」を彼、彼女は求めています。
ワガママな言い分かもしれませんが、これからの彼、彼女の生き方を見てもらえないでしょうか。
そのことをできるだけ多くの方に知って頂けたらと思い、この記事を書きました。
もちろん「全てに同意」する必要はありません。
ただ少し、ほんの少しだけでもいいので、「なるほどね。」「そういう見方もあるんだ。」と思ってもらえたら嬉しいです。
普段の記事からいうとだいぶ固苦しい文章になってしまいましたが、「そのときの自分、そのときの感情でしか書けない記事」を大事にした結果なので自分としてはスッキリしてます。
それでは、今日はこの辺で。イノシシでした!