[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]
「病院に行きたいが、お金がない」「妊娠したが子どもを育てられず、中絶費用も払えない」。児童養護施設退所者をサポート
(友人宅に遊びにきたようなゆったりとした空間の「相談所」。椅子や棚など置くものも一つひとつ高橋さんがこだわって選んだ。)
虐待や親の精神疾患、貧困などにより家庭で生活できない子どもたちは児童養護施設や自立援助ホーム、養育家庭で暮らす。
そこを退所した人たちを支援する、東京・武蔵小金井の「アフターケア相談所ゆずりは」を訪ねた。
「ゆずりは」には、児童養護施設を退所した若者から、電話や紹介などで年間1万件を超える相談が寄せられる。
「住み込みの仕事を失い、ホームレスに」「病院に行きたいが、お金がない」「妊娠したが子どもを育てられず、中絶費用も払えない」など深刻な相談も多い。対応に当たるのは、自立援助ホームの元職員で「ゆずりは」所長の高橋亜美さんと広瀬朋美さんを含む5人のスタッフだ。
「厚労省は児童養護施設に18歳まで養育するよう通達を出していますが、実際は高校受験失敗や高校中退を機に退所せざるを得ないという施設も多い。また、10代で退所し社会に出る彼らは何かあっても頼れる場所がないため孤立しやすい。虐待などのトラウマを抱えていたりもします。やむなく暴力団や性産業で働いたり、罪を犯して少年院や刑務所に入ったり、自殺してしまう子も残念ながらいます」と高橋さんは言う。
こうした状況に退所後の「アフターケア」の重要性を感じ、「施設退所者が『助けて』と言える場所を1ヵ所でもつくり、ニーズの掘り起こしをしよう」と考えた高橋さんは2011年、勤めていた自立援助ホームの職員とともに運営母体の社会福祉法人に働きかけ、「ゆずりは」開所を実現した。
以来、生活・住居・生活技術などのスキルアップ・就労に関する個別相談を行い、週2回は当事者が不安や仕事の愚痴などを語り合える「サロン」を開いている。
(アフターケア相談所ゆずりは入口にてスタッフの廣瀬さんと所長の高橋さん)
『おつかれさま』という気持ちで迎える
(地元レストランの瓶詰商品。発送作業を「ゆずりは」で請け負い、販売価格の一部が「ゆずりは基金」へ寄付される)
最近、地元のレストランと協力し、販売価格の一部が「ゆずりは」へ寄付される瓶詰商品の販売も始め、若者の仕事づくりにも取り組んでいる。
本人の悩みや希望を聞き、生活保護などの公的な支援へつなぐことがサポートの基本だが、「出向くだけの気力がない場合や、電車賃がないことを言い出せない人もいる。30キロ近く離れた場所から何時間もかけて自転車で相談に来た女性もいた」という。そのため、できるだけ、相談者のもとへ出向く「アウトリーチ」を行うようにしている。
また、「彼らは大変な経験の中で自尊心や希望を奪われ、人間不信でここへたどり着きます。だから、まずは『おつかれさま』という気持ちで迎えるようにしている」と広瀬さんは話す。
人生をサポートする多様な支援
さらに、「学歴が低いために就労の選択肢が少ない」退所者のための「ゆずりは基金」を3年前に創設。
「一度しか使えない上限40万円の完全給付型の奨学金ですが、自動車免許の取得や、大学や専門学校へ通う学費の一部として役立てられています。」
また、現役大学生による高卒認定資格取得の学習会を開くほか、虐待の根源を断つために、子どもへの暴力がやめられない母親への「MYTREEペアレンツプログラム」にも取り組む。
活動の幅が広がる一方で、運営費は東京都からの補助金では足りず、助成金や講演の謝金などをあてている。今年度は、児童養護施設等退所者への相談支援事業に「中央ろうきん若者応援ファンド」の助成を受けた。
「公的には、住宅や無償の職業訓練、そこに通うための補助などの支援がほしいですね。そして、市民に児童養護施設を退所した若者たちが置かれている現状を知ってもらい、未来の社会を担う子どもたちを社会でともに育てる意識が広がっていってほしい」
「ゆずりは」では、基金をはじめ活動への寄付を募っている。
「中央ろうきん若者応援ファンド」について
■ 中央ろうきん社会貢献基金について
→http://chuo.rokin.com/about/csr/index.html
■「中央ろうきん」って?
→http://chuo.rokin.com/about/roukin/index.html
■「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度(2014年10月創設)。
→http://chuo.rokin.com/about/csr/youth_support/
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